雨空
薄曇の嫌な空だった。
(今日は無理かな。念のため、眞由美には中止を伝えておこう。)
雨の前の蒸し暑さが、こんな朝早くに目を覚まさせた。
そのため、かなり早い登校となってしまった。
ガラガラガラ・・・
教室の引き戸を開けると、驚いたことに誰かいる。
「おはよう。」
「麻美か、早いね。」
(麻美かぁ、苦手なんだよね。)
子供のころから一緒だったため、恥ずかしい過去を握られてしまっている。
テレビの影響で二階から飛び蹴りして、足の骨を骨折したのは絶対に秘密だ。
その日、一緒に遊んでいた麻美以外の人に真実は漏れていない。
他にも・・・。
(僕はなんて無茶なガキだったんだ。)
そのため、嫌いじゃないんだけど・・・。
なんと言うか、プライドを持つようになった今は・・・。
恥ずかしい過去をばらされたくなくて、・・・苦手意識を持ってしまっている。
「昨日・・・どうだったの?」
「何が?」
「転校生と。一緒に帰ったし、高台に行ったんでしょ?」
なんだか以外だった。
麻美はあまりプライベートな事を聞くほうじゃない。
とっさに答えられないでいると追撃を受けてしまった。
「陽一って、いつもは一人であそこに行ってるよね。
あの娘がそんなに気に入った?」
「なんでそんな受け取り方するかなあ。
方向が同じなら一緒に帰ることもあるだろうし、高台は僕の所有地じゃないよ。」
少しだけムッとして答えてしまった。
それが誤解を招くと思い、冷静に答えようとする。
「それに、昔に何回か麻美を誘って一緒に行った事あったよ。
でもすぐに飽きてしまって、こなくなったんじゃないか。」
「それは・・・、そうだけど。
なら今度一緒に行きたいって言ったら、どうする。」
「・・・?
いいに決まってるじゃん、何か問題でもあるのか?
あと、飽きても駄々こねるなよ。」
「なっ!
私がいつそんな事したのよ。」
「小三の夏。」
「・・・・・。」
「『怖いよ〜。ねえ、もう帰ろうよ〜。』とか騒いでたよな。
思い出してみると、あの頃は純真無垢で可愛かったな。
今じゃこんなに捻くれてしまって・・・。」
「・・・しばく。」
真っ赤になって、軽いパンチを打って来た。
中学に入ってから、どこか冷たさをかもし出していた幼馴染。
でも、思った程変わっていないのかもしれない。
しばらく好きにさせておいたけれど、クラスメイトが来そうな時間である。
僕の胸を叩いてきた手を取った。
「時間だよ、あんまり人に見られたくないでしょ?」
なぜか赤いまま俯いてしまった。
大人しくなった麻美は席に戻ろうとしながら、微かにつぶやいた。
「・・・さっき言ったの本気だかんね。」
星を見に行くということだろう。
とりあえず今日は無理か、日を改めて誘うとしよう。
少しだけ感慨に耽っていると、人が増えてきた。
そして・・・。
「・・・眠い。」
眞由美は夜更かしのためか、グロッキーだ。
「おはよ。」
「ああ、うん。今日は曇りだし行かないんでしょう?」
「そうだよ。」
ポツポツと雨が降り始めた。
視線を窓から教室に戻すと、机に突っ伏した眞由美の向こうの麻美と目が合った。
あわてて目をそらした麻美。
それが少しだけ、可笑しかった。
再び窓に視線を向ける。
(明日は晴れますように。) |