天体観測
「そもそもの問題は・・・。」
眞由美が僕を指差して言い放つ。
「何で私が来るの知ってて、望遠鏡一つしか持ってこないのかな?」
勝手な理由である。
今日の放課後に一方的に参加を申し出たのに。
「僕は一つしか望遠鏡持ってないよ。いくらすると思ってんのさ。」
「甲斐性無し。」
眞由美はつまらなそうに、高台に備え付けのベンチに腰を下ろす。
「無理して付き合う事ないぞ、大抵のやつはすぐに飽きて帰るんだし。」
僕は気を使ってそう言ったつもりだったのだが、振り返ると眞由美はすっごく不機嫌になっていた。
「何だよ?」
「前は結構良い感じだったのに、今日は邪魔者なの?」
「誰もそんな事言ってないし。」
「言葉に愛が感じられない。」
(僕にどうしろと?)
「それに、言われた私の事考えて言ったの?あーゆー事言われると傷つくんだよ。
もう少し言い方ってのに気をつけなよ。」
「・・・ごめん。」
「いいよ、しょうがないやつ。」
気まずい空気が流れる。
こんな状態は苦手なんだよな。
どうやって話しかけようか思案していると。
「ねえ。」
眞由美から話し掛けてきてくれた。
「どうして星見てるの?」
「・・・?好きだから、他に何かあるのか?」
「・・・私が悪かった、訂正。星が好きな理由は?」
「う〜ん、わかんないな。最初はなんとなくで、気が付いた時は夢中になってた。」
「変なやつ〜。」
「いや、君には負けるし。」
カスッ
膝カックンを膝裏への蹴りで決められた。
「もうお前は〜、前か隣に来い背後を見せると襲われそうだ。」
「眞由美。」
「あぁ?」
「だから〜、あんた私を一度も名前で呼んでない。そして、そもそも私は変じゃない。」
「名前だと誤解を増長させるんじゃないか?」
「それじゃ、誤解を事実にしておこうか?」
「はぁ?」
「そんなに嬉しそうにするなよう、冗談じゃん。本気にした?」
「してないし。」
「それはそれでショックだぞ、お姉さん傷つくなあ。でも、その初心な反応は恋愛経験無いな。
彼女居ないでしょ。」
「そんな質問をするということは俺に気があるな。」
「自意識過剰はもてないよ。」
(こいつ・・・。)
「そういえば、何でこんな時期に転校してきたんだ?」
自慢にならないが本当に何も無い村である。
転勤なんかでくる会社の支部なんてものは近くには無い。
もしかして、病気の療養なんだろうか?空気がきれいなので喘息とかにはいいかもしれない。
眞由美はニヤリと笑って答えた。
「誤魔化したなあ。ま、いいやここに来たのは秘密だよ。」
「病気か何かか?」
「だったら大きな病院が無いここに来るのは、自殺行為だって。
なに、心配してるのかな?」
「・・・ちょっとな。」
「素直じゃないの、別に深刻な理由じゃないから気にしないでよ。
親の都合だって。深読みのし過ぎはよくないよ。」
まだ、何かありそうな顔をしていたけど・・・。
答えてはくれないだろう、踏み込んでいい領域かそうでないかぐらいはわかる。
・・・でも、なんでもないのに少しだけ揺れた瞳に気づいてしまっていた。
「お、目の前の明るい星は?」
「東の空だし鷲座のアルタイルだね、七夕の彦星として有名だよ。」
「へ〜、物知り。・・・てゆうか、そこまで詳しいと変人だね。」
(もう何にも教えてやるまい。)
「じゃ、あれは?」
「・・・梅干。」
「そんなのもあるんだぁ。」
「う・そ。」
「・・・この馬鹿!」
今日は、はかどらなかったけど・・・。ま、いいか。
こんな日もあるよ。
眞由美は眠そうだ、時計を見ると結構いい時間だった。
転校初日だし疲れたんだろう。
「今日はそろそろ終わりにしようか、眞由美。」
いきなりだった為か、眠気が少し飛んだようである。
ちょっと混乱している。
「そうやって困った顔はかわいいよ。」
コンボを決めると赤くなった。
ちょっとだけ新たな一面を見つけて嬉しくなる。
そっか、自分で言うのは平気だけど人に言われるのは慣れてないんだ。
「この・・・ばかー。」
眞由美の喜びの叫びを聞きながら、今日はいい夢見れそうな気がしていた。
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