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夜空の星
作:灯夜



窓越しの空


「陽一の馬鹿。」

部屋に帰り着くと、着替えもせずに鞄を投げ出しベッドにダイブした。
いきなり転校生と親しげだった陽一。
あいつは人一倍色恋沙汰には疎かったのに。
思い出すと・・・。

「・・・ムカツク。」

そう、私こと浅木 麻美は陽一が好きなのだ。
幸か不幸かは判断しかねるが。
何時だってあいつは空を見上げていた。
目の前の私や他の女の子には目もくれずに。
だからあまり進展も無いが、あせる事は無かった。
それにあいつを好きな事は誰にも教えていない。
他人に邪魔されたくないのだ。
友達に相談すれば、友達の友達に伝わって最後には本人の耳に入る。
そうなると、素直じゃない陽一は私を避けるかもしれない。
それが怖い。

「何が面白いのかねえ。」

たまに星を見るのは良いけれど、陽一のように毎日は無理。
男ならもう少し積極的に恋愛の方面も気にして欲しい。
私だって、自分が綺麗じゃないなんて事にはとうの昔に気付いている。
でも、綺麗の偏差値を上げるために努力してきた。
意外とあいつは、髪を少し切った程度でも気付いてくれていた。
それが嬉しい。
でも、他に気付くべき所はあるだろう。
私だってちょっとはアピールしている、でもいつも空回り。
バレンタインの手作りチョコが、義理じゃないのに気付いて欲しかった。
確かにメッセージは添えてないけど、力作だったのに。
ホワイトデーのお返しは、お菓子じゃなくて気持ちが欲しかった。

「もう少し時間があるはずだったのにな。」

卒業までに振り向かせようと計画していた。
この村に駅なんて無い、大抵は隣町の高校に通うのだけど・・・。
下手すればあいつは高校から一人暮らしを始めかねない。
そんな無鉄砲な所を持っている。
だから、卒業までに気持ちを捕まえておきたかった。
夢に向かって突き進む。
その視線を少しだけ向けて欲しいと思うのは我侭なんだろうか。
分かっている、そんなひたむきな所も魅力である事。
そのくせ辛かったり寂しかったりするのは、敏感に感じ取って助けてくれる。
思い出すと小さな時は、いつも陽一に手を引かれていた気がする。
怪我した時、寒いとき、叱られた時。
今もはっきり覚えている、繋いだ手の温もりを。
当時は顔よりも背中を見る機会が圧倒的に多かったんじゃないかな。
その手を放したのは私、冷やかされたくなくて意地を張ってしまった。
その頃から好きだったのに、馬鹿だったよね。

「転校生かぁ。」

やけに親しげだった。
あいつも陽一の事好きなのかな?
休み時間に聞き耳を立てていた限りでは、少し前に会って話した事があるだけらしい。
あいつは嘘の才能は無い、おそらく事実だろう。
自分では聞きに行けない、あいつは自分の領域に無神経に入ってくる人を嫌う。
でも気が付いてるのかな、転校生と話している時に表情が和らいでいる事。
もう少し積極的に攻めてみるしかないか。

明日鎌を掛けてみよう。
そして、何とか活路を見出したい。

・・・我ながら計算高くて嫌な女だよね。
でも無様な真似だけはしたくない、私にもプライドがある。
振り向いてくれなかったらどうしよう。
他の人と陽一が付き合ったら・・・。
私は・・・。
きっと本心を隠したままで側に居る。
ずっと続く恋愛なんて無い、離婚率を考えれば明白だろう。
だからきっとチャンスを狙っている。

そこで自分の考えの矛盾に気付く。

だったら・・・私のこの好きもいつか薄れるのかな。
頭で考えてる内は本気じゃないって言われるけど・・・。
本気じゃなければこんなに追い続けることなんて出来ない。
今は多くを考えられない、思考の無限ループが始まりそうだ。

ともかく明日は、絶対に陽一を手玉に取ってやる。
少し位いじめても許容範囲だよね、私をこんなに悩ませるんだから。
そんな決心を陽一が見つめているであろうこの星空に誓った。














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