流星
もはや家々は朽ち、村は緩慢に自然へと帰ってゆくようだ。
それでもまだあちこちから当時の面影と、懐かしい子供時代の残り香を感じる。
あの日から、もうかなりの歳月が流れた。
夜風からは昼の熱気は感じない。
(おっ。)
高台は意外とマシだな。
ベンチとかがぼろくなっているけど、使えないわけではない。
「もう私たちの故郷はどこにも無いんだね。」
少しだけ暗い表情で、麻美は続けた。
「ここでも色々あったのに、思い出が消えていくみたい。」
「そうだな、寂しいな。
でも、増えていく思い出だってあるさ。
まだまだ二人の未来は、続くんだから。」
望遠鏡とカメラの準備をしながら、答えた。
学部こそ違う物の、同じ大学へと進学した二人。
「しかし、夏休みに流星群の観測かぁ。
陽一らしいといえばらしいけど、私たちまだ二年だよ?
そんなに頑張らなくても良いと思うけど。」
「研究室は決めてあるからね、成績は上げるに越した事無いよ。
それに、ここも見ておきたかったし。」
流れ星が現れた。
ペルセウス座流星群、どうやら始まるようだ。
カメラをセットすると、そっと肩に手を乗せられた。
「そうだな。」
照準を合わせオートに設定すると、麻美の隣に座った。
「あの日と同じだね?」
「違うよ。
確かに想いは変わらないけれど、今は通じ合っている。」
「そうだね。」
クスッと彼女は笑った。
流れ星の数が増えてゆく。
とても儚い光。
「・・・流れ星に願い事掛けると、かなうってよく言うよね?
二人でお願いしようか?」
「何を?」
「これからも幸せな時が続きますように。」
「こんなにたくさんあるのに、それだけ?」
「・・・陽一がキスしたい気分になりますように。」
「あははっ。」
「何よぅ、笑わないでよ。」
「その願いは、星に掛けるモノじゃないさ。
二人で叶えて行くんだから、第三者の出る幕じゃないよ。」
そっと頬に手を伸ばし、引き寄せて口付ける。
いつまでも二人でいられるように。
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