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名探偵・藤崎誠シリーズ

A県警の奥の手

作者: さきら天悟

名探偵藤崎誠登場なので推理にしました。

A県警、県警本部長の高柳は苛立っていた。


「今年もか・・・」


交通死亡事故がベス、いや全国ワースト1。

もう数、1位が続いている。


「しょうがないだろ・・・」


彼は吐き捨てた。

A県は世界1、2を争うT自動車のおひざ元、

それにN市以外は田舎だった。

だからどの地域も一人車一台が当たり前だった。

それに加えて道路が整備されている。

A県にはT自動車グループ、関連会社が数百、いや数千あるだろう。

行政は、それらの会社をつなぐ道路をせっせと整備するのだ。


「こっちもか・・・」


それは監査部の報告書だった。

上司の行き過ぎた指導、いわゆるパワハラだった。


彼は頭を抱えた。

その責任の一端は彼にもあったからだった。


「ワースト1からの脱却」


高柳は県警幹部ら集め、厳しく通達した。


「悲しい事故被害者遺族をこれ以上増やさないでください。

それだけではありません。

加害者も悲惨な人生を送る羽目になってしまいます。

交通事故を減らすよう、みなさん努力してください」


警察幹部らはこれを神妙に受け止めた。

人望がある本部長を男にしよう、と皆言い合った。

しかし、それがもとで行き過ぎた指導になってしまったのだった。

自分も幹部らも、いや県警すべても警察官が苛立っていた。


高柳は同僚だったある男を思い出した。

やり手の男で、今は政治家になっている。

彼はおもむろに電話を取った。





年がくれた。

やはりA県の交通事故ワースト1は不動の位置だった。

年が明けた。

A県が、何とか特区なったというニュースが流れた。

しかし、他県の人には興味がなく、詳しくは取り上げられなかった。





止められた車から男が降りて来る。

白バイ隊員は男に紙を差し出す。


「これを確認して、サインして」


男は覚悟したかのように頭を垂れ、サインした。


「お前は人間のクズだ」


「スマホで何を話した?」


「どうせブスな女だろう」


「人を轢いたらどうする?」


「この人殺しが」


白バイ隊員の罵詈雑言を含んだ説教が30分続いたのだった。





県警本部長室に交通安全課長が入って来た。


「本部長、成功です」


高柳はニヤリとする。


「上期の結果、ワースト25位です」


高柳は頷く。


「パワハラもなくなりました」


そう報告すると交通安全課長は部屋を出て行った。

高柳は考え深げに天井を見つめる。

そして、電話を取った。


「太田、お前が紹介してくれたあいつ凄いな」




「そう、探偵の藤崎」




「ああそうか、名探偵と言わないと怒るな」




「分かったよ。借りが一つな」




「ああ、協力するよ。お前なら総理大臣になれる」


高柳は電話を置いた。

与党政治家の太田の働きで、今年から愛知県は交通特区になったのだった。

それは運転中のケイタイ操作、シートベルト着装違反、10km未満のスピード違反に対して

罰金や減点の代りに、同意書にサインして30分説教を受けると言うものだった。

人格的に誹謗されても訴えない、という。

これを体験したドライバーは心底嫌がった。

そして真面目に運転するようになった。

またこの噂がSNSで拡散し、交通違反が激減したのだった。


そして、もう一つ効果があった。

名探偵藤崎誠はこれも計算に入れていたんだ、と高柳は感心した。

警察官のストレスが減り、パワハラがなくなったのだった。

それもそうだろう。

違反者にそれだけ説教すれば、ストレスもなくなるに違いなかった。

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