嗚呼、新しき日々よ。(9/28)PDFで表示縦書き表示RDF


嗚呼、新しき日々よ。
作:Gunter



第8話:再来


 静寂の間。
 時折聞こえる竹と石がぶつかる音と水が流れる音、そこに居る人間の呼吸する音以外は何も無い虚無の空間。
 最初に口を開いたのは銀髪隻眼の大男――ベリア、不機嫌を表情に浮かべながら目の前の飄々とした掴み所の無い男へと問う。
「何故、奴等はワタシ達…いや、ワタシを攻撃して来なかった?」
 それは元魔王ゆえの疑問であり言葉。
 既に魔王ではないとは言え勇者にとって魔王の血とは何よりも憎悪を掻き立てられる興奮剤なのだ。
 ましてや魔力の流れや質に最も敏感な勇者の血族である立花の人間が気づかないはずも、それに惑わされないはずもないのだ。
 なのに、だ。
 それに対して総一郎は軽薄な笑みを崩さずに返した。
「そりゃあ…お客様に突然斬りかかったりするほど腐っちゃいませんよ? ましてやサーちゃんのお父さんに――」
「いや、それは無いな」
 笑う総一郎に対して断言するベリア。
 一息つき、即座に言葉を続ける。
「貴様が良い例だ。あの時、最初にワタシに斬りかかったのは貴様だった」
「……それは拙者が未熟で」
「それも無い。貴様はあの戦いの時、既に剣聖(ソードマスター)と呼ばれる域へ達していた」
 そう、それが総一郎の二つ名にして勇者が圧倒的に少なく、国土も国力も弱弱しい東亜が独立国家として帝国を相手に不可侵と同盟を得られた理由。
「感受性が強いのは立花の強みでもあるが同時に弱さだ、それを耐えるには相当の訓練……それもワタシの魔力に耐えうるものだとするならば……一朝一夕で身につくものではない」
「ハハッ……バレちゃいましたかぁ……さすが義父上」
「茶化すな、ここにはワタシと貴様しか居ない。貴様もその仮面を外したらどうだ?」
「…………くっ……フフフ……ハハ!! 本当にあんたには勝てそうに無いなぁ……」
 顔面を掻き毟るように手で覆いながら(わら)う総一郎。
 嘲笑が部屋を支配し、突如舞い降りる静寂。
 そこに居たのは凶暴と粗暴と――あらゆる暴力を顔に浮かべた獣のような男。
「本題にはいりましょうかぁ? 魔王さんよぉ?」
「今は魔王ではない「いいや、あんたは隠してる」……」
「その隻眼…………今でも機能してるだろう?魔王が魔王たる証(・・・・・・・・)
「……さすがに立花相手に隠すのは不可能か」そう呟くとベリアは隻眼を一撫でする。
 一瞬魔力による弱い紫電が(はし)り、そして隠された力は輝きを帯びる。
「ハハ……」と歓喜にも似た笑みと息を漏らす総一郎、ベリアが腕を下ろした時、そこに居たのはあらゆる勇者の宿敵であり生命の仇敵であった。

   血よりも紅く濃い、深淵よりも暗く深い、光が一切無い瞳。
   ――――魔眼。
   魔王(ベリア)が人を支配し、無為に殺戮できた理由。

 その魔眼に気圧されたのか、少々萎縮しながらも総一郎は笑みを浮かべながら答えた。
「魔王さん……とりあえず三つは安心していいぜ? 一つ目にここは拙者の結界で護られているから魔力は絶対に外へ漏れない。二つ目に拙者達はあんたと敵対するつもりは無い、サーシャのアレを受けて無傷――いや、傷を負ったふりすら出来たあんたに勝てるとは思えないからな」
「わかっている、もし襲われたとしても貴様等如き刹那の間に一掃できるわ」
 壮絶な、殺意と敵意を塗り固めたような笑みを浮かべて目の前の矮小な人間を睥睨(へいげい)する。
「三つ目に、これはあんたが最も恐れていることだ。拙者達、立花一族はあんたの周囲の者へ危害は加えない、むしろ陰から協力してやっても良い」
総一郎はそう言ってにこやかに笑みを浮かべた、だがベリアはその言葉に眉をひそめる。
「何故だ?確かにワタシの一番恐れていることではあったが、それを攻めないどころか護るというのは」
「ハハハ!その通りだよ。だが……だからこそだよ、あんたに恩を売りたいんだ……立花としてな(・・・・・)
「そういう事か……つまり協力関係になれということだな?」
「さすが魔王陛下だね? 察しが良くてこちらも話しを進め易い、何処かの愚図共とは違うなぁ」
「だが、今になって協力関係を求める意味が理解できんな」
そう言い放つベリアに対して総一郎は心底愉し気に笑いながら懐から一枚の紙を取り出した。
総一郎は目の前の畳にそれを広げてベリアへと見せ付ける。
「帝国域……いや、世界地図か」
「正解、これは立花が独自に手に入れた世界全体を書き記した地図だ。かなりの正確さを誇っていることは三年前からつい最近までかけて確認させてもらった」
 そういうと総一郎は地図のある一点を指す。
 指し示したのは地図の上部で、丁度ベリアの城があるあたりだった。
「全てはここから始まる」
「何?」
「魔王、アンタが嘘とはいえ倒されたことで世界がとある摂理(システム)を起動させた」
 総一郎は不適な笑みを浮かべたまま更に続ける。
「摂理の名は再装填(リロード)、悪意の弾丸を撃ち出す為の予備動作。世界が魔王の死を誤認し新たな魔王を生み出した」
「何だと!?」
「そしてアンタは今じゃ魔王であって魔王でないものになっている。力や存在こそ魔王だが、世界には魔王として認識されない異端者(ヘレティック)だ」
「馬鹿な…………ん?おい貴様、今……認識(・・)といったか?」
「ああ、言ったね。確かにそう言った」
「何故だ!?世界が既存でない摂理を作動させるには神の存在が必要不可欠なはずだ!!」
 ベリアが知る世界は一種の船であった、乗客と船を動かす船員――つまり神々が居てはじめて新しい行動に移れる巨大な船。
 遠い昔に倒したはずの神々がいなければ既存の摂理を貫き動き続けるはずの世界が何故新たな摂理を生み出しているのだろうか?
 そんな疑問がベリアの中で激しく渦巻いていく。
「簡単完結な事だ、神かそれに順するものが生まれた、もしくは神の忘れ形見だったか――後者の可能性が高いが……これはアンタの責任でもある」
「……ということは…………この土地で決起したという竜は本当に魔王なのか? ワタシの後続だと?」
「その通り、まぁアンタほど強くないよ…………うちの勇者候補と戦士が二百名近く戦死したがね」
「クローセルのとこはうちの倍近く死んでるがな」と続けながら自嘲気味に笑う総一郎。
ベリアは次第に自分の口元がつりあがって行くのを感じた。



 ――嗚呼、ワタシはまだ魔王のようだ。戦いが待ち遠しくてならないと喜び叫んでいる。



 その日、ベリアがサーシャ達のもとへ帰ることは無かった。




 世界は再度、魔王による恐怖へと叩き落されようとしている。


ギャァー!!
またシリアスムードがぷんぷんと・・・。
「どうなっちゃうのかな・・・」
サーシャ・・・・・わかんないな、お話の流れは決まってるけど内容は・・・執筆中に作者が聞いてる曲によって変わっちゃうから(ぉぃ
「・・・ちなみにどんな曲を聴いてたんですか?」
ん?カオティックメタル
「・・・・・・またマイナーな」
メロディックメタルとかも好きだぜ?


さて、展開が展開して新展開なわけですが。
このお話こそシリアスムードですが次回のノリはわかりません!
次回はベリア無しでお話が進行します!!






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