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嗚呼、新しき日々よ。
作:Gunter



第6話:ベリアの最も不幸な日


 ワタシは魔王だ。
 否、魔王であった。
 今はただの流離いの剣士、当ても無く町から町を旅している。
 最近、ワタシの愛するサーシャを狙う阿呆が増えたがまぁ大丈夫だろう、奴は根性なしだからな、何より寝込みを襲うだとか騙すだとかそういったことをする外道でもない。
 悪い男ではないのだ、ただ……っと!! だからと言って絶対にサーシャはやらん!! やらんぞ!!
 ……ごほん。
 まぁ……話が反れたな。
 何故ワタシがこんな事を語っているかというとだ、まぁ・・結論から言えばルガード公領に行くことになったんだ。
 ……行きたくない……。
 あそこには立花のクソガキがいる……ッ!!
 あのクソガキときたらサーシャを見るたびに鼻息荒く色気づく!!
 かと言ってもう決定したことは変えるわけにも行くまい……。

 嗚呼、何故こんなことになったのだ……。




「お父様、次は何処へ行くんですか?」
 山岳都市リンガードの南部に唯一存在する駅の前で塔から吊るされたこの街の繁栄の証である金時計を眺めながらサーシャは傍らの父へと問いかけた。
 駅前の広場は町の中心部ほどではないがかなりの賑わいをみせ、路上には店を開く者や自分の歌を聞かせようとする詩人達が溢れている。
 そんな光景を眺めながら大男―ベリアはウィルティニア帝国域の地図を片手に言う。
「そうだな……ここから少し南東にあるトニティナへ行こうかと思っているんだが」
 そう言うベリアに対してサーシャとベイルシアは額に皺を寄せて抗議の言葉を発する。
「トニティナって……盗賊ギルドが取り仕切ってるあの街でしょう?私は嫌です……」
「あまりいい思い出はありませんしね…………」
 二人ともその街で何らかのトラブルに巻き込まれた事があると言った表情を浮かべている。
 ベイルシアはどうでも良いとしても娘を海よりも深く空よりも高く愛しているベリアとしてはサーシャの抗議は聞きいれるほか無かった。
「むぅ…………ならば」
 そういうとベリアは地図を食い入るように見始めた、サーシャは父が一度物事に集中すると自分の言葉さえも聞き入れないことを知っていたので軽く溜め息を吐いてからベリアの後ろで直立不動のまま動かないセバスチャンに聞くことにした。
「セバスチャン、何処が良いと思う?」
「ふむ……。この付近に冒険者の酒場があるはずですので、そこでクエストを探してそのままその町へ行く、というのが最も効率的かと。適度に資金調達をしなければ遠からず底をついてしまいますし」
「んー……たしかにそうかもね。クローセルもそれで良いかな?」
「え、はい。僕はどちらでも構いませんよ」
「よし、じゃあそうしようか!」
「ここから西北にあるリヒテルなんてどうだ!?」
 ベリアの言葉は既に届かず、サーシャ達は酒場のある方向へと歩き出していた。
「…………くっ」
 それがベリアにとっての苦難の始まり。



「いらっしゃい」
 扉を開き、中に入ると無愛想な給仕がサーシャ達を出迎えた。
 酒場はまだ真昼間だというのにも関わらず賑わいを見せ、喧騒に溢れている。
「クエストの申請をしたいのだが」
 憮然とした表情で腕を組みながら給仕へと用件を言うベリア、どうやら無視された事がよっぽど気に入らなかったらしい。
 そんな客に対して給仕は負けず劣らずのふてぶてしい態度で酒場の奥にある掲示板を指差し、手元の雑誌を掴むと奥のほうへと下がってしまった。
「す……すごい給仕さんですね」
「同じ仕える者としては……どうなの? セバスチャン」
「酒場の給仕と主に仕える者は根本的に違うかと、ですがまぁ……あれはあれでありなのでは?」
「「何が!?」」
 それこそ二人がセバスチャンの"趣味"を垣間見た最初の瞬間であった。
 そんな三人を無視して不機嫌なオーラを振り撒きながら、酒場のテーブルで潰れる鉱夫や冒険者達を蹴散しつつ歩みを進めるベリア。
「…………随分怒ってるね……」
「まぁ、ベリア様は少々子供っぽいですから…………すぐに機嫌も直すでしょう」
「何だか僕が八つ当たりに使われるような気がしてきましたよ」
 三人はそれぞれの三者三様の苦笑いを浮かべ、ベリアの後へと続いた。
「お父様、良さそうなのはありましたか?」
 サーシャがそうベリアへと問うと短く掲示板へと目を走らせると一枚のプレートをとって読み始める。
「ん……ああ、少し来た道を戻ることにはなるが、リーヒッツ共和国付近にある自治都市……ウ……ウ、ウラーニャか、字が汚くて読みにくいがこの依頼は好条件だな」
「ウラーニャってあの有名な温泉地ですか?」
「そうだな、仕事の内容は遺跡の発掘調査…………そんなこと出来るかぁ!!」
 改めて依頼内容を確認し、即座に床にプレートを叩きつけるベリア、見事なノリツッコミだ。
 だがそれも仕方ないと言えるかもしれない、仕事内容はプレートの隅の辺りに小さく記載されているだけな上に、遺跡の発掘調査というのは何も無い状態から必要な道具を一式揃えると家一軒建てるだけの資金が飛ぶのだ。
 つまりこのような依頼は金持ちの道楽か科学者が個人的な調査のついでに受けるものだったりする。
「あははは……あー、じゃあこれなんてどうですか?」
「ん? …………おおぅ!?」
 そう言ってサーシャがベリアへと突きつけたのは東亜国の王都である狗住(くずみ)という街での魔獣捕獲依頼だった。
「駄目!! 駄目ったら駄目なんだ駄目駄目駄目だぁぁぁ!!」
 必死にサーシャの案を却下しつつプレートを叩き落とすベリア。
 元々ベリアはルガード公領へ行くつもりだったのだが、東亜国の立花が来ると聞いてルガード行きをやめたのだ、狗住と言えば立花本家の本拠地だ、立花の勇者と遭遇してしまう確率は無いとは言えない。
 鬼気迫る表情で狗住行きを嫌がるベリアを見て、サーシャは仕方ないと言った表情を浮かべると「なら…………これなんてどうです?」とまたまた狗住行きのプレートを見せる。
 更にそれを拒否してベリアは掲示板へと目を凝らしてある事に気がついた。
「…………狗住行きしかないでは無いか……」
 それもそのはずだ、現在東亜最大にして唯一の勇者家系である立花がルガード公領へと勇士達を総出動させているはずなのだ、しかも東亜国内の人間は冒険者になることを原則として禁止している、元々誇りだとかそう言ったものを重んずる国なのだ彼らにとって冒険者とはその辺の荒くれ者と変わらないのだろう。
 だからこそそんな状態では他国の冒険者や勇者にしか頼ることが出来ないのも当たり前かもしれない。
 と、必死に目を凝らす中で唯一東亜の文字ではなく帝国の文字で書かれたプレートを見つけ、それを即座にもぎ取ると内容も確認せずに酒場のカウンターへと床を蹴り距離を詰める。
 余談だがその時のベリアは魔王の如く恐ろしい形相だったとバーテンダーは語る。
「これを!!」
「あ、はははははいぃいいい!!」
 そういうとバーテンダーは一度店の奥へと消え、契約書と酒場やギルドで依頼を受ける時に必ず使用される血判状持ってきた。
 ベリアはその契約書も内容を一切確認せずにサインし、親指の腹をその尖った牙のような歯で噛み千切った。
「ひぃ!!」
 まさかそんな事をされるとは思っていなかったらしく腰を抜かしてへたり込むバーテンダー。
 そんなバーテンダーの様子も気にせずに怨敵を見るかのようにその隻眼で血判状を睨むと、血塗れになった親指を何度も何度も押し付けた。
「……よし」
 その顔は何か偉業をやりとげた男の顔だったとバーテンダーは語る。
 バーテンダーは立ち上がり、埃を払うと契約書と血判状を確認し頷くと依頼内容をベリア達へと伝えた。
「依頼内容はルガード公領にて赤色の巨竜の討伐、および勇者一行の援護。尚、血判状の誓いによりこの依頼は失敗以外での破棄は認められず、破棄した場合は依頼の難易度に合わせた制裁を…………いっ……依頼のランクは最上級のと……SSSですね……その……頑張ってください。あ、依頼主の方は東亜国の立花総一郎さんですね」
「な…………」

 ベリアが人生で二度目の選択ミスをした瞬間であった。

「そんなバカなぁぁぁぁぁぁぁあああ!!??」


 そこは山岳都市リンガード。
 鉱石や硝石などが大量に採掘される中規模な都市。
 都市全体の広さだけならば帝国でも屈指のものである。
 そんな都市なのにも関わらずベリアの叫びは都市全体へと響き渡ったという。


墓穴。


やっちまいましたね、ベリアさん。
ふふふふ、ハァーッハッハッハァー!!(誰
という訳で次回から新キャラがまた増えるんです・・・ごめんなさい。

それはさておき、きましたよ!!これでやっとベリアの設定公開が出来るぜぇぇぇ!!

あー・・今更ながらなんだけども。
この小説にも恋愛要素いれた方が良いのかね?
ベリアの後妻でも作るか・・・いや、ウソです。


ベリアはエーリカさん一筋なんです!!






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