嗚呼、新しき日々よ。(5/28)PDFで表示縦書き表示RDF


嗚呼、新しき日々よ。
作:Gunter



第4話:平和にまどろみながら


 人が行き交う朝の市場。
 そこは活気に満ち溢れこの国で平和の象徴と呼ばれる白く尾の長い鳥が何羽も飛び交っている。
「オーアの白老鳥か」
 ベリアは一人平和な空気に酔いながら呟いた。
 オーアの白老鳥と呼ばれるそれは魔族やその眷属からは忌み嫌われる鳥でその血は魔族にとって何よりの毒とすらされていた。
「今は憎からず……ハっ……慣れれば全てが心地いいか」
 朝日も景気の良い人々の掛け声も飛び交う鳥も今は不快ではない、むしろその逆。
 人の心ほど変わり易いものも無いが魔族の心もまた変わるものなのだなと不快ではない嘆息を漏らす。
 そんな朝のまどろみに(うつつ)を抜かす魔王がいると誰が信じるだろうか?
 こうして彼の一日は意味も無く過ぎていく。
 彼にとって意味も無いということこそが愛すべき全てなのではあるが。
「ベリア様」
 ふと、ベリアの耳に長年聞き続けた声が届く。
 低く落ち着いた、達観者にも似た響き。
 いつの間にか地面へと落としていた顔を上げ、自分の従者へと言葉を返す。
「どうした? セバスチャン」
「指示通り(くだん)の話、情報屋より聞き出して参りました」
「ふむ……で?」
 信頼という言葉では余りにも満ち足りない関係にある従者へと問いかける主人。
 長い時間を共にし過ぎたというべきだろうか?
 少なくとも目の前にいる従者はベリアの自我が目覚めた時には既にこの姿で自分に仕えていた。
「ほぼ確定です、南の――ルガード公領の自治都市付近で赤色の巨竜が魔王を名乗り決起。対策として銀水のクローセル、東亜の立花を筆頭に勇者候補と現勇者が収集されているそうです。」
「ルガードか……」
 現在、彼らがいるのは大陸中心部に皇帝として御す賢帝の土地にして中原の王、ウィルティニア帝国。
 大陸に覇を唱える唯一の帝国にして幾つもの勇者の血族が根ざす大国。
 その国でも西部に位置する山岳都市リンガード、鉱石や硝石などが大量に採掘され、細工 や武具などが多く作られるためか比較的富裕層が多い街だ。
 それに対してルガード公領とはその最南端にある皇帝の従弟が収める逆三角形のような形をした土地を指す、別名勇者の密集地帯。
 銀水のクローセルやルガード領から東にある島国、東亜国の立花など有名どころの勇者系図が密集している為に一般市民や勇者をよく思わない人々から皮肉ってつけられた名前。
 海に面するほぼ全てが港になっており、他国からの渡来品や亜人などが多いのが特徴とされる。
 ちなみに魔王が城を構えていたのは帝国域より北東に位置する山岳地帯に囲まれた盆地で、人間達が忌み嫌う魔の土地。
 正確には帝国の隣国の一つであるリーヒッツ共和国の領地なのだが、魔物が多すぎるため不毛の土地として立ち寄るものは居なかった。
「まったく…………しばらく南の方には行くことは出来なそうだな」
「はい、間違いなく勘付かれるでしょう、サーシャ様の家系は魔王の探知や察知には不向きですが……立花は魔力の流れや性質に敏感だと有名ですし…………クローセル家は物量や土地柄、海に面しているので発見されれば圧倒的に不利かと」
「それだ、それなのだ……よりにもよって立花が……勝手に魔王などと名乗りおって……齢数百年の若造が」
「しかし…………ベリア様」
「何だ?」
 訝しげな表情でベリアへ質問を投げかけようとするセバスチャン。
 普段はポーカーフェイスに徹している彼もどうも納得のいかないらしく眉間に数本の皺が。
「少なくとも今のベリア様なら察知されたとしても誤魔化しきれるのでは? そもそもサーシャ様がいる以上、両家共に最低限手出しはされないと思うのですが?」
「馬鹿者!!!」
 ベリアはそう吼えると同時に目の前にあった鋼鉄で作られた町のシンボルを握り拳で綺麗に突き破る。
 そしてそのまま怒り心頭といった様子で言葉を続けた。
「立花のガキはあきらかにサーシャに惚れてるだろう!?」
「……………………」
「なんだその目は」
「いえ………………、その、何でも」
 時々、セバスチャンは彼の主従であることが果たして自分の為になるか疑わしくなる。
 千年の恋も―――否、千を超え万に入り始めた関係ではあるがその長い忠誠もそろそろ醒めそうなセバスチャンであった。
「だいたいあのクソガキは…………まだクローセルのヘタレ魔術士のほうが……っいや、だからといってサーシャはやらん!! 誰にもやらんぞぉぉおおおお!!!」
 決意固く、握り拳を天に掲げながら尚、強く吼えた。


 何時からだろうか、周囲の視線は依然として冷たい。


練りました。
相当練りました、試行錯誤で何とかギャグにしました、はい。
何だろう、世界観を固めれば固めるほど裏設定やらが重いせいでライトでコメディーな雰囲気がブレイクされて・・・。

まだ早い!シリアスパートはまだまだ早いんだよぉぉぉお!!
と、いうわけで今回はサーシャとヘタレの出番はなしです。
次回はサーシャ達メインになる予定でぃえーす。






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