第19.5話:閑話 魔王陥落
「魔王が!魔王の首が堕ちたぞ!!取ったのは立花の勇者だ!!」
誰かが叫んだ。
帝国兵やクローセルの勇者達は顔に落胆と喜びを浮かべ、我先にと紅い竜の首を片手に進んでくる着物の男のもとへ向かう。
その時ばかりは全員が戦いをやめた。
前の魔王に比べて力が無いとはいえ、魔王は魔王、恐怖の対象なのだ。
彼の死を目に収めずして帝国の騎士は名乗れぬとばかりに人だかりが出来た。
総一郎は道の中心に立つ馬に乗り豪奢な鎧を着た男へと首を差し出した。
「魔王は堕ちた。閣下、我等東亜の勇者一同は攻撃の即時停止を進言する」
だが、その言葉に難色を示す兵士達。
総一郎の言葉は折角の昇格のチャンスを棒にふれと言っているようなものなのだから仕方ないといえば仕方ないのだが。
「理由を答えよ。目の前に魔族の城があるのに攻撃を止めよという理由を述べよ」
「これ以上の攻撃は無益。それに彼の城は前魔王を打ち倒した聖剣の生家にして領土、攻め込むは不義となります」
「だが……ここに殿下よりの書が――」
「立花の名において停戦を命ずる」
まさに一瞬だった。
帝国、いや皇帝よりも格下ではあるが、立花は暦とした東亜国の主なのだ。
ここで彼らの命令を断るのは反逆に等しいことでもあるのだ。
しぶしぶと言った様子で仕官に撤退の命を伝える将軍。
「どうした?あげは」
「いえ、ただここで立花の名を使うのは……」
「ハハハっ!問題無いさ。あの書状だってどうせ偽物だからな」
「え?」
「あの誇り高い皇族の方々がたかが一将軍相手に書状なんか書かないさ。それに書状を書くくらいなら自分から打って出るぜ?殿下は」
そういうと、総一郎は撤退していく軍を尻目に城へと歩みを進める。
「それと……」
「ん?」
「あのスケッギョルドと同じ話す剣を持った少年は?魔王の屍骸を担いでどこかに消えてしまいましたが……」
「さあな……、何だかやばい雰囲気だったから無視したが……」
「それにあの首からかけていた耳あてのようなもの、遺跡から発掘されたものに似ていたような」
他愛も無い会話をしながら、東亜の勇者は魔王の城へと凱旋した。
彼らの記憶から異界の少年の記憶が消えるのはそれから数分後である。
「……らーめんって何だろうな」
「……さぁ…………」
かくして新魔王は没し、帝国軍の魔王城侵攻は終わりを次げた。
後日、新魔王の事実はとある機構により隠蔽され、赤竜の騙りとして歴史のブラックボックスへと葬られる。 |