嗚呼、新しき日々よ。(1/28)PDFで表示縦書き表示RDF


この物語は【魔王が居なくなったわけ】、【故に今日も彼女は語る。】の続編です。
先にこの二つを読んでくださると内容もスムーズに理解できる・・はずです。
嗚呼、新しき日々よ。
作:Gunter



第1話:勇者と大男


 たとえば、因果なんてものが世界にはあったとします。
 原因と結果を指す言葉。
 因果。
 言い換えてしまえば宿命的な不幸や幸なんかを指す言葉なわけですが……。
 さて、私の世界には勇者と魔王がいます。
 いえ……、正確には"いた"と言うべきでしょうか?
 現在は"魔王"と呼ばれる者はこの世界の何処を探してもいません。
 ああ、勇者と魔王なんて突然言われても意味がわかりませんよね?
 勇者とは人や亜人と呼ばれる種族の中に生まれる魔を討つ神の代行者です。
 彼らは彼らの血族にのみ使える魔法を操り、悪を滅するとされています。
 それに対して魔王とは魔族と精霊族の中にごく稀に生まれる神をも討つ覇王を指します。
 魔王の出現周期などはまだ解明されていませんが、ある日突然肉体の一部が変異し、強大な力を宿すとされています。

 この世界では彼らほど宿命や運命という言葉を指すのに相応しい者はいません。
 勇者は魔王を嫌悪し、魔王は勇者を憎悪します。
 それはもはや一つの摂理(システム)です。

 さて、そろそろお気づきになられたでしょうか?
 そうです、この物語はとある世界の勇者と魔王の物語。
 それも…………宿命や運命、因果…あらゆる命運や摂理を指す言葉を根本から打ち砕いた勇者と宿命を憎み、運命に打ち砕かれそれでも抗った男の物語です。




 町の広場の雑踏の中、突然黒い皮の鎧を身に纏った剣士風の褪せた銀色の髪をした中年男性が現れる。
 男は歴戦の戦士独特の鍛え上げられた鉄のような雰囲気を滲ませながら歩みを進める。
 余りにも自然に現れたため、周囲はその違和感には気づかない。
 だがその男の斬られ抉られた片方の瞳に怯え、何人かが距離を置いた。
 それから暫く歩くと大男は不快を表情にあらわにし、瞳に狂気と怒気を浮かべ――
「サァーシャァァァアア!!」
 吼えた。
 男の咆哮に呼応するように周囲の空気がビリビリと震え、目に見えぬ魔力が爆発を起す。
 いつの間にか大男の片手には大人一人分ほどもある大きさの剣が握られていた。
 周囲の人々は突然の出来事に驚きながらも直感的に危機を覚り、大男から距離を取った。
 そしてその場に残ったのは大男とその標的。
 大男は鋭いその眼光で前を真っ直ぐと睨みつける。
 銀髪の大男の視線の先に居るのは動物の皮と鋼で作られたスカートと薄手の鎧を身にまとう男と同じく銀髪の美女と長身痩躯の貴族風の美男子。
 瞳には凛とした強い意志が宿っている、表情は形だけ驚いているが何処か諦めたような色が浮かんでいる。
 美男子の方は愕然とした表情で驚いている、何が起こっているのか理解できていない人間の顔だ。
「お父様…………やっぱり無理なの……?」
 銀髪の美女―サーシャは暗く沈んだ声で問うように呟いた。
 それに対して大男は獣の如く息も荒く身を深く沈めながら剣を構え、射殺さんがばかりにその隻眼でサーシャ達を睨み答えた。
「嗚呼、我が愛する子、サーシャよ……。すまない、本当にすまないと思っているんだ……だが仕方ないんだよ……仕方ないんだぁ……ワタシは…………ワタシハァァァッッ!!」
 轟、まさにその言葉が相応しい。
 大男の斬られ抉られた片方の瞳から一瞬光が漏れ、それと同時に大男はその場から消失し、サーシャ達の背後に出現する。
「我慢デキナインダァァァァァァアアア!!!!」
「くぅっ」
「ひぃぃっ」
 大男の必殺の一撃をサーシャは細身の剣で何とか受け止める。
 鉄と鉄が激しくぶつかり合う音と共に周囲に魔力の紫電が走る。
 サーシャの隣にいる男は今にも失神せんばかりの怯えようを見せながらへたり込んでいるが二人とも気にしないと言わんばかりの剣戟を見せる。
「さすがは我が愛娘……だがっ!!」
 大男は己の剣ごとサーシャの細身の剣を吹き飛ばし、右拳に全魔力を込めて振り上げる。
 そして、一瞬という言葉すらも愚鈍といわんばかりの速さで振り下ろした。
「どるアァッ!!」
「ギャァあああああああああああああああああぁぁぁ……っ!!!???」
 甲高い断末魔にも似た悲鳴と共にヘタレ男は明後日の方向へ吹き飛んだ。
 大男は鼻息荒くその隻眼を細めて一言。

「男女交際はまだまだ早イッッ!!」
「ハァ……」
 そういうと大男―元魔王は大股歩きで町の人ごみへと……消えるわけもない。
 町の人々は畏怖を表情に浮かべながら、引き潮のように別れ綺麗に整列して大男に道をあけた。
 そんな風景を見つめながらサーシャは深い深い溜め息を吐いて呟いた。
「もう嫌……」


 その日以来、女癖が悪いと評判だったその町の領主の息子であるレアハルト=ハインリヒ=クライスは女性に声をかけるのをやめたという。
 本人曰く、誰彼構わず手を出すと銀髪隻眼の悪魔がやってくる…………そうだ。


しつこいようですが、魔王が居なくなったわけ、故に今日も彼女は語る。の続編です。
意味がわからん!という人は一応そちらを読んでください。
内容的にはこちらにいきなり入っても大丈夫なはずですが・・。

で、作者がこの作品を作った経緯ですが。
リアルでの身内に色々指摘された結果、下手なFTやコメディよりこういった物の方が上手に書けている・・という事で暫くこの作品を通して自分流のスタイルを模索していきたいと思います。
打ち切りの前科持ちなので(ぁ)絶対に完結する物語でなくてはならない、ということで一話完結物でいこうと思います。
ですのでストーリーの途中で連載が終わり、わけがわからんなんて事は無いはずなのでどうぞご安心ください。






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