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伝説同士の衝突 上

神聖ミリシアル帝国 連合艦隊 第1魔導艦隊 旗艦 ロト


「以上、第2、第3艦隊の被害状況です」


 第1魔導艦隊の司令レッタル・カウランは、少し離れた海域にある第2第3艦隊の被害状況をまとめていた。

 どの艦も第1艦隊と同様にグラ・バルカス帝国の航空攻撃で相当の被害を受けていた。


「世界連合の被害状況については……」


 世界連合に随伴させていた艦隊も、壊滅的な被害を受けている。

 世界連合に至っては目も当てられないほどの「甚大」な数の艦が被害を受けているようだった。

 神聖ミリシアル帝国でさえこれほどの被害を受ける敵、この敵の攻撃を、我が国よりも文明レベルが低い他国が受ければどうなるのかという事が、理論ではなくて実証されてしまっていた。

 中には機銃掃射だけで撃沈された艦もあるという。

 文明圏の……世界の強国と言われる国家群でさえ、これほどのダメージを受ける相手……間違いなく強敵であった。


「参謀……どう見る?」


「はい……世界連合の被害状況、あまりにも甚大であり、士気が保てないほどの数が撃沈されています。一方我が国の艦隊は、まだ戦えます。

 勝利の行方と言う意味では、おそらく……」


「空中戦艦パル・キマイラの性能によって勝敗を左右する……か?」


「申し上げにくいのですが、そうです。世界連合を襲っていた敵艦42隻も、パル・キマイラたったの1隻がすべて撃沈しています。とんでもない兵器です。

 正直、私ではパル・キマイラの魔導出力も、残弾数、性能等全く解りません」


「古の超兵器……か……魔法帝国が復活したならば、我が国が先陣をきって戦う必要がある……しかしあれほどの性能とはな……復活しない事を祈るばかりだよ」


「全くですな」


 会話中、艦内に魔信の受信音が鳴り響いた。


「空中戦艦より映像付通信入電!緊急回線です!!!」


 通信士が大声で報告してくる。

 毎回、何らかの重要回線で連絡をよこすパル・キマイラ……。


 司令レッタル・カウランは、他官庁から指示を受けているような気分になる。

 組織が違うのだ……おれはお前の部下ではない……と、言いたくなった。


「繋げ!!」


 艦橋にある平面ディスプレイに、先ほど見た顔が写る。いや、奇妙な面であり、顔ではないが……。


「軍の諸君……」


 空中戦艦パル・キマイラ2号機の艦長、メテオスが話始める。


「世界連合を襲っていた敵艦隊はワールマン艦長の操る初号機が片づけたよ……」


 艦橋がざわつく。


「我々、パル・キマイラ2機はこれより敵本隊に突撃し、神聖ミリシアル帝国に逆らうとどうなるのか、教えてあげるつもりだ。

 我々だけが敵殲滅の誉を受けるのは申し訳ないからねぇ……。

 君たちも参加しないかね?と言おうと思ったのだが……」


 彼は一呼吸おき、続ける。


「良く考えると君たちの強さでは、敵と戦うと死者が出るだろう?何もしなければ勝てるのに、栄光欲しさにいたずらに兵を死地に追いやるのも心が痛む」


「何がおっしゃりたいので?」


「いや、タダの情報提供だよ。君たちの行動は、君たちで決めたまえ。……敵の位置は今少しズレていてねぇ……今から座標を送るよ。

 では失礼するよ」


 通信が終了する。

 一瞬静まり返る艦橋……。


「おのれ……軍人をなめおって!!!

 全軍に指令!!これより敵本隊に突撃し、これを殲滅する!!!」


「了解!!!」


 指示は迅速に伝わり、艦隊は速度を上げる。


「空では遅れをとったが……。

 艦隊決戦では、決してやられぬぞ!!!」


 神聖ミリシアル帝国、魔導連合艦隊司令、レッタル・カウランはまだ見えぬ敵の方向を、睨みつけるのだった。


 


 神聖ミリシアル帝国海軍の艦隊は隊列を組み、南下する。

 その姿は雄々しく、力強い。


「司令、間もなくパル・キマイラが敵本隊に接敵します」


「うむ……なんて進軍速度か……バケモノめ!!!」


 空中戦艦の圧倒的進軍速度に彼は驚愕と共に、正直な感想を漏らす。


 不意に、前方を航行していた小型艦に水柱が上がった。

 少し遅れて海上に轟音がこだまする。


「な……何だ!?何が起こった!!!」


 レッタル・カウランは理解に苦しむ。


「まさか……事故?ですかな??」


 水柱が上がった後、小型艦は急速に速度を落とす。


「いったい何が……」


「報告!!我が方に向かい、海中に白い線が伸びてきています!!」


「なにっ!!まさか!!!」


 レッタル・カウランの脳裏に先の海戦が浮かぶ。

 航空機から投下され、海中を走る爆弾……その威力はすさまじく、最大級の魔導戦艦でさえ、当たれば無事ではすまない。


「敵機はいないのか!!」


 魔力探知レーダーには何の反応も無く、澄み切った空には友軍以外の航空機は見つからなかった。

 旗艦ロトに向かって来た海中の線……船は持てる力のすべてを使って旋回し、攻撃を回避した。

 しかし……。


 ズ……ウゥゥゥゥゥン……。


「戦艦ヴァ―リル被弾!!!」


「中型艦テルミスト被弾!!!」


「小型艦ザイル、航行不能、ルイジ艦長、総員退艦を指示!!」


 次々と訪れる悲劇、もはや敵の攻撃であることは、疑う余地が無い。


「まさか……まさか……」


 レッタル・カウランは1つの可能性を思いつく。


「まさか……水中にいるのか!?」


 次々と伸びる脅威は友軍を刈り取っていく。

 一糸乱れぬ艦隊行動をとっていた神聖ミリシアル帝国艦隊は、見る影も無く、各々が真っ直ぐに伸びて来る魚雷の回避行動をとっていた。


「くそっ!!水中の敵だと!?どうしろというのだっ!!!」


 水中からの攻撃を想定していなかった神聖ミリシアル帝国は、グラ・バルカス帝国の攻撃に翻弄されるのだった。



◆◆◆


 数多くの雄々しい艦隊が海を裂いて進む。

 その姿はあまりにも圧倒的であり、仮に自分達へ向けられた力と仮定すると、文明国家はもちろん、列強国でさえも震えあがるだろう。


 グラ・バルカス帝国東方艦隊主力の姿がここにあった。



 旗艦グレードアトラスター


「第三潜水艦隊、神聖ミリシアル帝国海軍本隊に対し、攻撃を開始した模様」


 艦橋に報告が上がる。


「そうか……」


情報省からの報告によれば、異世界の国で潜水艦を運用している国は確認されていない。

 そんな世界で潜水艦を運用すればどうなるのか……。

 大きな戦果を挙げる事に間違いなく、東方艦隊司令長官カイザルは特に興味無く答えた。


「ラクスタル艦長……奴は……来るだろうな……」


「2つもの艦隊を滅した……弾切れを起こしていなければ、必ず来るでしょう」


 すでに2回にわたり、派遣された艦隊が、壊滅的な被害を受けている。

 航空攻撃はほとんど通用せず、対空機関砲は効果が無いらしい。

 すでに正攻法で敵を撃墜するのは難しい状態になっていた。


「!!!レーダーに巨大な機影……東方向と、北方向からこちらに向かっています!!!」


「……考える猶予は無いか……。

 敵艦に対し、第1次攻撃隊発進せよ!!

 艦爆を主体とし、なるべく高空から敵を爆撃、距離1000以内に近づく事を禁ず」


 カイザルの指示は正確に伝達される。


 風上に向かって走る空母群から、計80機もの航空機が射出される。

 

 グラ・バルカス帝国の第1次攻撃隊は各40機の2手に分かれ、透き通る青空に向かい、飛び出して行った。




『飛天航空隊全滅!!!敵対空砲の命中率絶大!!』


『また落とされたぞっ!!!』


『我、操作不能、我、操作不能』


 絶望的な無線が艦橋に流れる。


「北方に向かっていた第1次攻撃隊……レーダーからロストしました」


 レーダー監視員の報告に、幹部達は凍り付いた。


「ぐっ!!化け物め!!帝国の航空戦力が通用しないのか!!!」


「艦隊で迎え撃つか!?」


「しかし……艦が通用する保証も無い」


 幹部達は狼狽しながらも、最適解を導き出すために今まで蓄えて来た知識から、脳をフル回転させて議論を重ねる。

 議論の末に、第2次攻撃隊を出すも、これも全滅してしまった。


 やがて……かつて帝国が経験した事の無い敵が2機、目視範囲に現れた。


◆◆◆


 ゴ……ゴゴゴゴ……

 魔法による浮遊の副産物である特殊な音を発し、下部の海を小さく波打たせながら、帝国軍人が見た事の無い兵器……空中戦艦が姿を現した。


 大和型戦艦の全長を超える直径を有するその姿は、圧倒的な存在感と、猛烈な違和感を覚える。


 雄々しく、圧倒的な力強さを感じさせるグラ・バルカス帝国の大艦隊……。

 それと対峙するたったの2機……。


 平和だった海域に戦火は訪れる。




「対空戦闘用意!!!」


「外周駆逐艦隊、加速開始!!」


 兵が慌ただしく動き回る。

 グラ・バルカス帝国の誇る世界……いや、史上最大にして最強の戦艦……グレードアトラスターも対空戦闘の準備を開始していた。


「司令!!敵艦から入電!!!」


「つなげ!!」


 敵艦から入電!?

 東方艦隊司令長官カイザルは戦場であり得ない無線での語りかけに違和感を持ちつつ、無線をつなぐように指示した。

 何度か呼びかけがあり、無線がつながる。


「グラ・バルカス帝国の諸君……私は神聖ミリシアル帝国、古代兵器、空中戦艦パル・キマイラ2号機艦長、メテオスという」


 およそ戦場に似つかわしくない言葉使いで話しかけて来る敵、カイザルは方眉を吊り上げた。


「君たちに警告しよう……今すぐに尻尾を撒いて逃げ出し、レイフォルからもすべて退却したまえ……。

 戦力差は文明圏外の君たちの頭でも理解出来ただろう?

 私はね……相手がたとえ蛮族であったとしても、弱き者を一方的に虐殺するほど性格は曲がっていないのだよ」


 グラ・バルカス帝国を侮辱するかのような言葉、艦橋は静まりかえる。


「力の差は歴然……もう解っただろう?

 私からのせめてもの慈悲だよ、撤退したまえ」


 帝国は主力ともいえる艦隊を……国を背負って戦場に来ているのであり、メテオスの提案など、決して飲めるものでは無かった。


「栄えあるグラ・バルカス帝国は何者にも決して負けはせぬ……通信士!!」


「はっ!!」


「お前は馬鹿かと伝えてやれ!!」


「えっ!?」


「聞こえなかったのか?お前は馬鹿か!?だ」


「は、はい!!」


無線は命令通り、適正に伝達される。




 空中戦艦パル・キマイラ


『お前は馬鹿か!?』


 無線を聞いたメテオスは憤慨する。


「グラ・バルカス帝国め……1度ならず、2度までも、この帝国魔導大学校出身の私をバカにするとは……許さないよ、ゴミどもめ」


 交渉は決裂し、無線は途切れた。

 空中戦艦パル・キマイラ2機は、グラ・バルカス帝国艦隊に打撃を与えるため、侵攻を開始するのだった。


 次回は5月21日に、下を投稿します。

 なお、不完全版であれば、下と、+2話を現在ブログ「くみちゃんとみのろうの部屋」で先行配信中です。

 予定通りに行けば、間もなく(5月中)コミックがWEB配信される(はず)です。

(されるか、もしくは延期かどうか、私は知りませんが)

 コミック版の日本国召喚も、是非よろしくお願いします。

 

 これからも日本国召喚をよろしくお願いします。

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