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開催!世界会議!!

神聖ミリシアル帝国の、日本国訪問から約1年後~

 第2文明圏 列強国 ムー 東の港湾都市マイカル


 空は晴れ、空気は暑すぎず、寒すぎず、海の匂は心地よく、海鳥は歌う。

老人は、設置されたイスに座り、遠い目で港を眺め隣の淑女に話始める。


「このマイカルもこの一年で随分と変わったなぁ。」


 港には、日の丸の描かれた大型タンカーや、車輌輸送船が停泊している。

半年ほど前に改良工事が完成し、整備された港は水深が深く、大型タンカーも十分に停泊可能であった。

陸地を眺めると、円柱状の大型石油備蓄タンクが大量に並べられている。

 港湾都市マイカルの南側を眺めると、今までのムーからは考えられなかった規模の石油化学工場が建設され、先月から稼働を開始している。


 ムーの大手企業もマイカルに進出、工場も現在ムーが知り得た最新式のものを、このマイカルに多く建設していた。

 ムーの設備投資額は過去最大にのぼり、未曾有の建設ラッシュが続いている。


「本当、日本国と付き合うようになって、随分と景色が変わりましたねぇ。再来月には空路も民間に開かれるらしいですよ。」


 日本国のジャンボジェット旅客機の発着にも耐えれるよう、元々あったムーの各地にある空港も、管制機能が強化され、元々かなり頑丈に作ってあった滑走路も改善し、延伸工事が急ピッチで進んでいた。

 

「そういえば、車も最近日本のものを随分と見るようになってきたな。」


「日本の車は性能が極めて高いですからね。」


 ムーは、産業保護政策をとらなかったため、日本の車は富裕層を中心として飛ぶように売れていた。

 日本では、発展してきたクワトイネ公国や、インフラが整備されつつあるロウリア王国、そして第3文明圏各国から受注される車に対し、工場は連日フル稼働となり、供給が間に合わない状態が続いている。

そして技術流出防止法があるため、工場は国内に作るしかなく、設備投資も多く行われていた。 


 映像技術に関しても各国は、日本の情報通信技術に目をつけ、国営テレビを設営、各地に電波塔が立つ。

また、電源そのものが無い国が多く、発電所の受注もあまりにも大量に受け、供給が間に合わず、悲鳴が上がっている。

第3文明圏各国は、国策として日本式携帯電話の普及政策をとり、都心部では携帯電話がつながり始めている国もあるが、やはり日本の工場はフル稼働であり、過労死する者が続出し社会問題となっていた。


 建設関係では、港湾整備の受注が相次ぎ、供給が間に合っていない。

 また、造船分野でもタンカーの受注が殺到し、10年先まで予約でいっぱいとなっていた。


 衣類に関しても、布は輸出していたが、ファッション性や、縫製技術は日本製の人気が高く、かつてない忙しさとなっていた。


 技術流出防止法により、圧倒的な技術格差を生かし、経済は潤っていた。

 景気はV字回復し、株価は高騰、将来的には実経済が過去のバブルを超えるかもしれないとまで言われ始めていた。


◆◆◆


 日本国 首都 東京 防衛省


「しかし、この1年で、政府は随分と思い切った決断をしたな。」


「はい、転移前の日本国からは、考えられない事です。」


「やはり、覇権国家が多すぎたからかな。

 パーパルディアの問答無用の侵攻で、国民の多くは考え方が根本的に変わってしまった。

 また、グラ・バルカス帝国は、核兵器を所有している可能性があることも、国民に知れ渡ったからな。

 極端から極端に振れる国民性だからな。行き過ぎなければ良いが……。」


 パーパルディア戦後、日本国政府は、防衛政策について、大きな見直しを行った。

 防衛費は大幅に拡張され、各種施策が実施されるが、主な部分を要約すると、下記のとおりとなる。


○航空護衛艦4隻の整備

いわゆる空母である。

運用ノウハウについては、在日米軍から教養を受け、早期の人材育成を行い、7年後(パーパルディア皇国戦の7年後)に実用化を目指す。


○次期主力戦闘機F-3の開発

先進技術実証機をベースとして、新規戦闘機の開発を行う。

超音速巡行、推力偏向ノズルを持ち、高度なステルス性を有し、艦上で運用できる事とする。

なお、転移後初の戦闘機開発となる事から、開発者の間では、零式戦闘機と呼ばれており、雑誌などでも新型零式艦上戦闘機開発と記載され、一般的にも零戦と呼ばれる。

6年後の実用化を目指す。


○原子力潜水艦5隻の配備

星が広すぎる事を理由とし、通常動力潜水艦では対応不可能なミッションに対応するた

め、原子力潜水艦の実戦配備を7年後に目指す。


○日本版GPSの整備

経済効果も高く、必要なため、日本版GPSの整備を5年以内に行う。


○自衛隊員の増員


○戦車の増量


○護衛艦の増量


○潜水艦の増量


○GPS誘導爆弾に関する研究


○GPS誘導可能な長距離巡行ミサイルに関する研究


○対地、対艦攻撃可能な超音速ステルス巡行ミサイルに関する研究


○新惑星における、宇宙空間からのロケット再突入に関する研究


○新型輸送機に関する研究


等となっている。

また政府は極秘に核弾頭の研究を開始していた。


「まだまだ整備には、時間がかかることばかりだ……。これから、地獄の忙しさになっていくのだろうな。」


 防衛省の1室で、二人はため息交じりに話すのだった。


◆◆◆


 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 


 グラ・バルカス帝国では、国の今後を決定づける、重大な会議が行われようとしていた。


「これより、帝前会議を開催いたします。」


 司会進行が、会議の開始を宣言し、会議が始まる。

 すでに全員に根回しは終わっており、最終意思決定がこの会議で行われる。


「カイザル、ミレケネス、間もなく先進11ヵ国会議が開催されるが、準備は整っているな?」


 帝王グラルークスは、帝国海軍東方艦隊司令長官カイザルと、帝国監査軍司令長官ミレケネスに確認を行う。


「はい、皇帝陛下、準備はすべて整っております。」


 2人は、口をそろえて答える。


「陛下、今回の作戦で、現地人どもは……世界は震撼し、我らにひれ伏す事になるでしょう。」


 外務省長官モポールは、自信をもって発言する。


「よもや、神聖ミリシアル帝国に遅れをとる事はあるまいな?この世界では最強と言われているようだが。」


「現地人に遅れをとる事は考えられません。兵器の設計思想を見れば、かの国の間違った方向性が見えてきました。

 我が国を止められる者はこの世界にはおりません。」


「そうか、では本件は、許可することとする。皆頼んだぞ!!」



 帝前会議は終了した。


◆◆◆


 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス


 広大な港湾施設を持つ港町カルトアルパス、先進11ヵ国会議には、各国の軍が大使を護衛し、やってくるため、すべてが収容できるよう、開催地には、この港町カルトアルパスが選ばれた。


 港湾管理者の元には、続々と到着する各国の軍の情報が集約される。


「第1文明圏 トルキア王国軍、到着しました!戦列艦7、使節船1計8隻」


「了解、第1文明圏エリアへ誘導せよ。」


 港に着いた船を、適切に誘導していく。


「第1文明圏 アガルタ法国、到着、魔法船団6、民間船2」


「了解」


 港湾管理責任者、ブロンズは、この先進11ヵ国会議が好きだった。

 各国が、使者を護衛するという名目で、最新式の軍艦を艦隊ごと送り込んでくるため、軍事の大好きな彼にとって、このイベントは仕事であると同時に、お祭りのような気分となる。


「ここに、第零式魔導艦隊があれば、各国の軍も貧相に見えるのだろうがな。」


 日頃、港町カルトアルパスの近くに基地を有している第零式魔導艦隊は、軍艦がひしめく祭りの際には、様々な事情から西にある群島に訓練に行くのが、毎年恒例となっていた。

 

 港湾管理者ブロンズは、ワクワクしながら待つ。

 今回開催の国の中で、どんな軍隊を送り込んでくるのか楽しみな国が2つある。

 1つは、西の列強国、レイフォルをあっさりと落とした新興軍事国家グラ・バルカス帝国。

 そして、もう一つは、第3文明圏の列強国パーパルディア皇国を、74ヵ国に分裂させた、日本国、いったいどんな艦隊が来るのか、彼のドキドキは止まらない。

 その時だった。


 監視員が急にざわつき始める。


 あまりにも、大きく、城のような船が水平線に見える。


 その姿は、船が近づくにつれ、さらに大きくなり、やがて神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦を見慣れた彼でさえ、絶句し、その雄々しさに見とれてしまうほど美しく、力強い艦が近づいてくる。


「グラ・バルカス帝国到着、戦艦1隻のみ」


「おお!!」


 それを見た者すべてが感嘆する。

 グラ・バルカス帝国の誇る、全世界最大最強の戦艦。

 全長263.4m

 全幅38.9m

 満載排水量72800t

 出力 150000馬力

 港町カルトアルパスの住人は、その雄々しい姿に圧倒される。


「なんてでかい砲を積んでやがるんだ!!!」


 45口径46cm3連装砲を3基、世界最大の砲は、誇らしげに水平線を向く。

 グラ・バルカス帝国超弩級戦艦グレードアトラスターは、神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパスに入港した。


 グラ・バルカス帝国の戦艦は、あまりにも大きく、強烈であり、近くに見える第1文明圏、トルキア王国の戦列艦や、アガルタ法国の魔法船団がおもちゃに見える。


 港湾管理者ブロンズは、唖然としてその威容を見つめていた。


「……長!!ブロンズ所長!!!」


 第8帝国の戦艦に見とれていたブロンズは、部下からの問いかけで我に返る。


「ああ、何だ!?」


「日本国が到着しました!巡洋艦1、民間船1計2隻です!」


 ブロンズは、双眼鏡で海を見る。

 水平線に、軍艦にしてはやけに派手な、白く塗られた艦が見え、艦の後方には、大型客船が見える。


「日本国の軍艦は、変わった形をしているな。」


 港湾管理者ブロンズは、すぐに日本国の艦に興味を無くし、グラ・バルカス帝国の戦艦に魅入るのだった。




 日本国政府は、先進11ヵ国会議に関し、護衛艦を随伴させる事も検討されたが、国際会議、しかも世界最強を謳う第1文明圏の神聖ミリシアル帝国が、プライドをもって警備している場所への移動に、軍艦を使用するのは非常識であるとの判断があった。

 神聖ミリシアル帝国からは、外務大臣の帝国までの護衛と規模は任せるとの連絡を受けていたため、海賊対策として、客船単体で派遣するのは危険との判断から、海上保安庁最大の巡視艇、しきしま型を同行させることとなった。


 全長150m、満載排水量が9350トンにも達する日本国最大の巡視艇「しきしま」は、巡視艇としては、けた違いに大きく、その大きさは海上自衛隊のこんごう型イージス艦並みである。

 元々プルトニウム等運搬船を警護する名目で作られた船であるため、海上保安庁の巡視艇としては、攻撃力は高い。


「まさか、ほとんどの国が艦隊を連れてきているとは……各国すべてが砲艦外交のような事をしているのか。」


 港町カルトアルパスの光景を眺め、外務省の近藤はつぶやく。

 各国が、艦隊を同行して来ている状況を目撃した近藤は、日本国政府の各国を刺激しないよう配慮した意思決定が裏目に出ないか不安になる。


「パーパルディアの時のように、舐められなければよいが……。」


 近藤は、会議の行く末に、不安を抱くのだった。


◆◆◆


 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 帝国文化館


 繁栄を象徴したかのような、豪華絢爛であり、極めてデザイン性、そして威厳を考慮して作られた帝国文化館、日本国外務省の近藤と井上は、同帝国文化館内の国際会議場に足を運んでいた。

 自分の着席位置を確認し、開催までの空いた時間に、ロビーで持参した水筒のお茶を飲む。

 今回の先進11ヵ国会議は、数日に及び、最初に外交担当の実務者級の会議が行われる。

 そこで話を詰めた後に、後半で外務大臣級の会議と意思決定をもって、会議は終了する。


 間もなく始まる、転移後初の国際会議実務者協議への出席、日本の歴史に刻まれる事は間違いなく、2人は緊張する。

 近藤は部下の井上に話しかける。


「間もなく始まるな……。どうなることやら。」


「そうですね。これほどまでに、事前の根回しの無い国際会議は初めてです。事前資料すらまともにないこの状況で、会議はうまくいくのでしょうか?」


「それだけ、ここに来る者たちは、国の権力を握っているのかもな。」


 話をしていると、3人ほどがこちらに歩いてくる。

 特殊な衣装をまとった彼らは、近藤の前に立ち、話しかけてくる。


「日本国の方……ですね?」


「はい、そうです。」


「私は、中央世界のアガルタ法国の、外交庁に勤めるマギと申します。以後、よろしくお願いいたします。」


 彼は、右手を差し出す。


「日本国外務省の近藤と申します。よろしくお願いします。」


 近藤は、差し出された手を握り、握手を交わす。

 マギは、にっこりと笑う。


「近藤殿、お会いできて光栄です。

日本国の戦闘法術は、中央世界でも噂になっていますぞ。

 この、魔法文明の世界において、科学文明のみで成り上がり、東の文明圏外国家でありながら、列強パーパルディア皇国に挑み、皇軍を完膚なきまでに叩き潰した勇敢な民族が住まう国だと。

 列強ムーでさえ、科学技術に重点を置いているとはいえ、魔法に頼っている部分もある。

 しかし、日本国は、ほぼすべて科学技術のみで成り立っている不思議な国だと聞いています。

 私たちの今までの常識では、魔法が使えなければ、ろくな文明を築く事が出来ず、聞こえは悪いが、蛮族というイメージが強い。

 しかし、日本国は魔法無しで、高度な文明を築いていると聞き、我がアガルタ法国は、日本国に対し、非常に興味を持っています。

 今度、是非日本国にも伺ってみたいものです。」


「ありがとうございます。是非、一度日本にいらして下さい。

 また、今回の国際会議は、日本国は初参加となります。どうか、よろしくお願いいたします。」


 近藤も、笑顔で答える。


「間もなく、先進11ヵ国会議が開催されます。

 関係者の方は、席へお戻り下さい。」


 放送が流れる。

 近藤は、先進11ヵ国会議の、日本国の席に着席した。


15分後~


「これより、先進11ヵ国会議を開催します。」


 帝国文化会館国際会議場で、会議の開始を始めるアナウンスが流れる。

 先進11ヵ国会議、世界の行く末を決める会議(この付近の国が認知している世界)として、ほとんどの国が注目する会議である。

 会議は1週間に及ぶ予定となっている。

同会議は参加しただけで、大変な誉であり、常時参加国は、1ヵ国を除き列強と呼ばれていた。

 日本国は、本会議に参加はしているが、毎年参加が決定している訳ではなく、本会議で日本国とグラ・バルカス帝国が常時参加国として承認される予定である。

パーパルディア皇国が国力を大きく落とし、レイフォルが国として消滅したため、常時参加国は現在のところ、


○魔法文明国 神聖ミリシアル帝国(中央世界)

○竜人の国  エモール王国(中央世界)

○科学文明国 ムー(第2文明圏)


の3ヵ国のみである。


 今回の先進11ヵ国参加国は、


○神聖ミリシアル帝国(中央世界)

○エモール王国   (中央世界)

○ムー       (第2文明圏)

○グラ・バルカス帝国(文明圏外、第2文明圏西側)

○日本国      (文明圏外、第3文明圏東側)

○トルキア王国   (中央世界)

○アガルタ法国   (中央世界)

○マギカライヒ共同体(第2文明圏)

○ニグラート連合  (第2文明圏)

○パンドーラ大魔法公国(第3文明圏)

○アニュンリール皇国(文明圏外、南方世界)


となっていた。

 力のある国のみが集められ、開催される世界会議の開催に、会場の空気も張り詰める。

 

 近藤は、会議場を見渡す。

 人間以外の存在も、会議場には代表として来ており、異世界に来たのだとつくづく実感させられる。


 エモール王国の使者が手をあげ、議長が指名し、発言権を得る。

 同国は、竜人の治める国であり、国家の人口がたったの100万人であるにも関わらず、列強に名を連ねる強国である。


 エモール王国の使者は、立ち上がる。

 同人は身長が2mほどもあり、頭からは角が2本生え、目も髪も赤い。


「エモール王国のモーリアウルである。今回は、皆に伝える事がある。重要な事であるため、心して聞くがよい。」


 場が静まる。


「先日、空間の占いを実施した。」


 エモール王国の、国家の総力をかけて行う空間の占いは、その的中率が90%代後半にも及び、各国の代表はかれの発言に聞き入る。


「その結果だが……古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国が近いうちに復活するとの結果が出た。」


!!!!!!!

空気が凍り付く。


「な……なんてことだ!!」


「伝承が本当ならば、我らが抗する術はないぞ!!」


 会場がざわつく。

 モーリアウルは続ける。


「時期や、場所は、空間の位相に歪みが生じており、判然としないが、我らの計算だと、今から4年から17年までの間にこの世界の何処かに出現するだろう。

 奴らに、どれほど抗する事が出来るのか、伝承がどれほど本当なのかは不明だが、奴らの遺跡の高度さが、その文明レベルの規格外の高さを物語っている。

 各国は、いらぬ争いをする事なく、軍事力の強化を行い、世界で協力して古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国復活に、準備をするべきである。」


 会場はざわつき、様々な国の大使がうなずく。

 そんな中、笑い始める20代後半の女性が一人。


「くっくっくっ……ハーっはっはっは!!!」


 会場参加者の多くが、避難的な目で彼女をみる。


「いやいや、失礼、私はグラ・バルカス帝国外務省、東部方面異界担当課長のシエリアという。

 魔帝だか何だか知らんが、過去の遺物を恐れるとは、その現地人のレベルに唖然としている所だ。

 そもそも、占いなぞ、そんなものを国際会議で発言する神経が私には理解が出来ないよ。

 しかも、この世界の列強と呼ばれる国が、この発言。

 我が国にあっさりと滅ぼされたレイフォルも、弱かったが、列強と言われていたらしい。

世界会議……か。レベルの低さがしれるな。」


「新参者が何をいうか!この礼を知らぬ愚か者め!!」


 エモール王国と同盟国、トルキア王国の使者がグラ・バルカス帝国のシエリアを罵る。

 モーリアウルは、ゆっくりと口を開く。


「新参のグラ・バルカス帝国か、魔法を知らぬ人族主体の国らしいな。

 魔力数値の低い人族ごときがほざくな。

 貴様らごときに期待はしていない。」


「科学を理解出来ぬ亜人風情が……我が帝国に、一人前の口をきくとはな。」


「亜人は、人間以下という意味だ。我が国は竜人族ぞ、下種が!」


 会議は紛糾し、議長が場を鎮める。



「なんだか、すごい会議だな。」


 近藤は、部下の井上に話かける。


「本当、前世界では、考えられない進行状況ですね。」


 日本国大使の2人は唖然とする。

 場が静まり、ムーが手をあげ、発言権を得る。


「我が国、ムーは、先進11ヵ国会議において、グラ・バルカス帝国に関する非難声明を発し、同国に対する懲罰のため、2年以上の交易制限を発議いたします。

 理由としましては、第2文明圏イルネティア王国、王都キルクルスに対する大規模侵攻です。

 国家間同士の戦争ではあるが、このところ、彼らは、やりすぎだ。

 このまま彼らを許すと、世界秩序を破壊する可能性があります。」


 神聖ミリシアル帝国も手を挙げる。


「確かに、グラ・バルカス帝国は、世界秩序を乱しすぎている。

 このまま第2文明圏国家を侵攻し続けていると、我が神聖ミリシアル帝国も介入せざるを得なくなる。

 我が国は、ムーの提案に賛成するとともに、グラ・バルカス帝国に関し、第2文明圏の大陸から即時撤退を求める。」


 誰もが認める世界最強の国の介入、それを聞いただけで、すべての国が震えあがり、剣を治める事がほとんどだった。

 全員の視線がグラ・バルカス帝国の美しき外交官シエリアに向けられる。

 彼女はゆっくりと発言する。


「一つ、最初に伝えておこう。

 我が国は、今回、会議に参加し、意見を言いに来たのではない。

 この地域の有力国が一同に会するこの機会に、通告しに来たのだ。

 グラ・バルカス帝国 帝王グラルークスの名において、貴様らに宣言する。

 我らに従え。

 我が国に忠誠を誓った者には、永遠の繁栄が約束されるだろう。

 ただし、従わぬ者には、我らは容赦せぬ。

 沈黙は反抗とみなす。

 まずは尋ねよう。今、この場で我が国に忠誠を誓う国はあるか?」


 一瞬の沈黙。


「バカか?あの女は。」


「下種が!」


「蛮族が、何をのたまっているのだ?」


 あまりにも突然の、あまりにも非常識な発言に、会場は非難の嵐が吹き荒れる。

 場は騒然とし、怒号が飛び交う。


「やはり、今従属を誓う国は現れぬか。まあ、当然だろうな。

 帝王様は寛大だ。我が国の力を知った後でも構わない。

 その時は、レイフォルの出張所まで来るがよい。

 まあ、かなり自国が被害を受けた後になりそうだがな。

 では、現地人ども、確かに伝えたぞ!!」


 グラ・バルカス帝国の使者は、先進11ヵ国会議途中で退室した。


 使者は港からも去り、その日の先進11ヵ国会議は終了した。


 開催日数、残り6日。


◆◆◆


 神聖ミリシアル帝国 西の群島


 神聖ミリシアル帝国、第零式魔導艦隊は、群島で訓練を行っていた。

 島が所々にあり、視界は悪い。

 魔導戦艦3、重巡洋装甲艦2、魔砲船3、随伴艦8、計16隻のこの世界に敵なしと言われた大艦隊は実戦さながらの訓練を繰り返し、練度の維持に努める。


「ん?」


 魔信探知機を見ていたレーダー監視員は、多人数が集まったような点が海上を高速で近づいてくる反応を見つける。


「こ……これは!!!」


 仮想敵国、ムーの機械動力艦が、魔信探知しないため、集まった人間が海上を高速で移動していた状況を見て、船による攻撃の可能性があると、確信する。

 彼はすぐに上司に報告する。


「レーダーに感あり!!北方向より、機械動力艦と思われる反応が接近中!!

 速度27ノット、距離60km、反応から想定するに、戦艦2、重巡洋艦3、巡洋艦2、小型艦5、計12隻が我が艦隊に接近しています!!

 あ、速度が29ノットに上がりました!!」


「何だと!?29ノットだと!?ムーでは、そんな速度は出せないはず……となると……グラ・バルカス帝国か?

 総員、戦闘配備!!総員戦闘配備!!!不明艦隊がこちらに接近中!!これは訓練ではない!!!

 繰り返す!!これは訓練ではない!!!」


 世界最強と謳われた、神聖ミリシアル帝国第零式魔導艦隊は、急きょ現れた謎の集団に対し、戦闘態勢に移行した。



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― 新着の感想 ―
そうか。日本丸ごと転移だと自衛隊だけじゃなくて在日米軍もいるのか 下手したら米軍の空母も転移してるかもしれんなこれ
何でこうも他国の話しをきちんと聞かない国ばかり何だ?
在日米軍は本国と連絡が取れなくて指揮系統はどうなるんだろうか?だけでなく各国の外交官とか留学生・出稼ぎ・観光客など本国がなくなってしまった人たちはどうなる?
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