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外伝 竜の伝説3


「号外~号外!!」


 叫ぶ情報屋、王都アルクール全体が早朝にも関わらず、ざわついている。

 北村は眠い頭を左右にふりながら、起床する。


 聞き耳を立てなくても聞こえてくる情報屋の声。


「なんとなんと!!!あの王国3大諸侯マウリ・ハンマン公爵が謀反を起こしたよ!!!

 マウリ・ハンマンは優秀な魔導師を集めていたが、どうやったか知らないが、恐ろしい伝説級の魔獣をうじゃうじゃ引き連れて、イワン公爵領の街、ワイザーに攻め入り、なんと街の民を皆殺しにしてしまったよ!!!」


 とんでもない情報が耳に飛び込んでくる。

 北村は聞き耳をたてる。


「国王ブランデ様は、各騎士団に王都防衛を下命!!!

 マウリ・ハンマンが攻めてくるぞ!!!戦争だ戦争だぁー!!

 詳しくは、今日の新聞、モルーツ新聞を買ってくれ!!さあ大変だ大変だぁ!!」


 何というタイミングだろうか、このままでは内戦に巻き込まれてしまう。


「まいったな……。」


 北村は一時帰国も視野に入れる。

 まだこの国とパイプすら出来ていないこの状態で、内戦が起きたとすると、自分たちの身が危ない。

 日本国を内戦に巻き込む訳にもいかず、彼は同行してきた自衛隊員に通信を頼み、本国に指示を仰ぐのだった。


◆◆◆


 王都アルクール 王城


 王城では謀反を起こし、今回イワン候領ワイザーで虐殺を行ったマウリ・ハンマンの反乱について、緊急会議が開催されていた。

 

 会議には国王ブランデ、王都3大諸侯のイワン、ウィスーク、その他王に忠誠を誓う貴族の面々が顔をそろえる。


「王様、今回のマウリの反乱、私は決して許すことは出来ません。

 我が愛する領民を惨たらしく殺した様子は、聞くに堪えません。

 現在、鳳凰騎士団は壊滅いたしましたが、私にはまだ牙龍騎士団と、封魔騎士団がおります。

 是非我が軍を筆頭に、マウリ領に攻め入る許可を頂きたい!!!」


 マウリ・ハンマンの軍は、イワン領の都市ワイザーに攻め入り、鳳凰騎士団を壊滅させ、住民を虐殺し、イワン候所有の倉庫に置いていた青色魔石をすべて奪い、街に火を放った後に自領に撤退している。


 イワン公爵は、自国の領民を大切に扱う事で有名である。そんな優しい彼の領に土足で踏み込んで来た後に、領民を残虐に殺したマウリに対し、彼は我を忘れるほどに怒っていた。


「イワン候、怒りに任せて突っ走るでない。

 マウリはやってはならない事をした。

 イワン候軍のみではなく、各諸侯の総合力を発揮し、十分な準備を行い、カルアミーク王国の総力をもって、奴を裁きの場に引きずり出す。

 もちろん、王下直轄騎士団も、惜しむ事無く投入しよう。」


「おお!!」


 一同がざわつく。

 カルアミーク王国最大の規模、そして最高の装備と練度を有する王下直轄騎士団の投入を、国王ブランデは決断した。

 通常であれば、マウリは鎧袖一触、なす術も無く倒されるだろう。


「王様、申し訳ございません。怒りに任せていました。王に従います。

 ただ、マウリ討伐の先方には我らにお願いします。」


「うむ。」


 本件緊急会議の結果をまとめると、下記のとおりとなる。


○各貴族の軍は、一度城塞都市でもある王都アルクールに集結し、その後マウリ領を目指

す。

 なお、集結が完了するまでは、およそ1週間を要する。

○マウリのスパイを防止するため、討伐完了までは、たとえ商人であっても、王都アルクールの出入りを禁ずる。

○カルアミーク王国軍はその軍事規模の三分の二をマウリ討伐にあて、残りの三分の一を王都防衛に任ずる事とする。


「守るべき非戦闘員の領民をただいたずらに殺する行為は決して許されるものではない。

 私、国王ブランデはマウリ・ハンマン公爵の討伐をここに命ずる。」


 ここにおいて、カルアミーク王国は内戦が始まった。


◆◆◆


 王都アルクール ウィスーク公爵家


「と、いう訳でしばらくの間、外交交渉は不可能に近い状態となり、さらにあなた方も王都からの出入りがしばらくの間は不可能になってしまいました。

 申し訳ないが。」


 ウィスーク公爵から北村に事の顛末が伝えられる。


「そんな……。では、我々は一時本国に避難し、事が落ち着いてから再度交渉に参りたいと思います。

 王都からの離脱だけでも許可していただきたい。」


 ウィスーク公爵の表情が曇る。


「王命で、スパイ防止のため、何人たりとも出入りが出来ません。

 すでに国交のある外交官の方でしたら別でしょうが、あなた方はまだ国として認知すらされていないため、難しいでしょう。

 1週間もすれば、事は変わって来るでしょう。

 我が家に滞在していただいて、何ら差し支えありませんので、王都から動くのは控えていただきたい。」


「では、お庭を少しだけ貸していただいて、王都にヘリを入れ、空から去る事は可能でしょうか?」


「いや、マウリ・ハンマンは魔獣を使役しています。

 映像で見たヘリコプターと呼ばれる飛行機械が飛んで来たならば、今の王都の者たちは、マウリの手の者としか思わないでしょう。

 厳戒令が出ているさなか、そのような方法に出れば、再度の交渉は絶望的になる可能性があります。」


 北村は一時避難をしぶしぶあきらめる。


「ご心配なさるな、北村殿。

 1諸侯と王国の軍、戦力差は隔絶しており、この王都も見てのとおり鉄壁の城塞都市です。

 マウリの軍ごときにやられはせぬ。」


 日本国使節団は、王都で足止めをくらうのだった。


◆◆◆


 9日後~


 王都アルクール北方約80km付近


 王国軍は、マウリ領の都、トスルの街から南に約10kmの高原まで迫っていた。

 たったの3日で80kmもの行軍、その機動力はこの島に存在する軍としては、常識はずれの速度である。


 王下直轄騎士団長メチルは隊列を整えるように指示しつつ、北を睨む。

 彼の目線の先には、一言でいえば異形の軍が対峙している。

 本来ならば、統率をとる事が出来ない魔獣と呼ばれる者たちにより構成された軍。


「なんと……面妖な。」


 どの程度の力を持ち、そしてどんな戦いをしてくるのか全くもって不明な相手に、精鋭王下直轄騎士団の警戒心は極限にまで高まる。


「メチル殿!メチル殿!!」


 マウリ・ハンマンによって被害を受けた、イワン公爵配下の騎士が話しかけてくる。


「何でしょうか?」


「逆賊、マウリ・ハンマンの軍への最初の一太刀は、我が騎士団が担当いたします。」


「解りました。しかし、相手はどんな攻撃をしてくるのか、全く不明です。

 お気を付け下さい。」


「どんなに強かろうが、我々だけで蹴散らしてみせようぞ!!」


 王国軍は準備を進める。




 マウリ・ハンマンの陣~


 温度はほのかに暖かく、空を見上げると美しい晴天が広がる。

 高原平野であるため、木の丈は低く、短い草が生え、見通しは良い。

 本来ならば気持ちよく、心地いい空間が広がるこの場所だが、今はどす黒い雰囲気が漂っていた。


「おー来た来た。

 お強そうなのがいっぱい来たな。

 ……王国軍の三分の二といったところか。

 ん?あの旗は……。

 王下直轄騎士団まで投入しているとは、どうやら本気で私を倒しに来ているな……好都合だ。

 おい、オルド!」


 黒い鎧に身を包み、マウリ・ハンマンは傍らの魔導師、オルドを呼びつける。


「ははっ!!」


「準備にぬかりは無いな?」


「はい。

 魔獣兵団、超魔獣ジオビーモス、そして戦車機甲兵団20輌及び有翼騎士団70騎、準備は完了いたしております。」


「超魔獣ジオビーモスと戦車機甲兵団、有翼騎士団は虎の子だ。

 まずは魔獣兵団だけで様子を見るか……。」


「ははっ!承知いたしました。」


「しかし、有翼騎士団70騎か……圧倒的だな。

 よくも、そんなに火喰い鳥を集める事が出来たものだ。

 ほめてつかわすぞ。」


「ははっ!ありがたき幸せ。

この世界(島)で唯一、人の重さを乗せ、空を飛ぶ事ができ、さらに射程約20mの火炎放射を発する事が可能な最強の鳥類……火喰い鳥を、魔獣操縦技術の応用で配下に置き、さらに騎士団に操らせるという、マウリ様の常人では考えつかない御指示があってこそでございます。」


「うむ。」


 マウリ・ハンマンは今戦いに絶対の自信を見せるのだった。


◆◆◆


「うぉぉぉぉぉ!!」


 自らを鼓舞する声と、馬が大地を蹴る音が付近にこだまする。

 イワン公爵の牙龍騎士団と封魔騎士団の士気は高く、騎士たちのあげた煙が高く上がる。

 およそ400騎にもわたる騎士団は、マウリ・ハンマン公爵の魔獣約1500体に初撃を与えるために進む。

 封魔騎士団が前に出る。


「悪魔め!!この弓を……くらうがよい!!」


 木のしなる音とともに、騎上で弓が引かれる。


「放て!!!」


 風切り音とともに、弓は魔獣へ向かい、雨のように飛んでいく。

 初射の後、封魔騎士団は敵の周囲を回るような機動をとり、弓矢による射撃を続ける。


 馬の機動力を生かした攻撃がつづく。


 トカゲのような形をした魔物に矢が刺さり、魔物たちは悲鳴と共に、怒りの咆哮をあげる。

 バラバラに配置された魔物の群れに、槍を構えた牙龍騎士団が突入する。

 金属のぶつかる甲高い音が響き、火花が散り、怒号と悲鳴が入り混じる。


 群れの一部が削れる。


「見たか!!我らが力を!!」


「我らは優勢ぞ!!機動力を落とすな!!!」


 戦場は熱を帯びる。


「マウリ様、やはり雑魚だけだと、ちと荷が重いようですが……。

 最低でも、12角獣までは投入しないと、上位魔獣のエサが減ってしまいます。」


「オルドよ、投入のタイミングや数はおまえに任せる。

 退屈しない戦いが見たいな。」


「ははっ!!」


 大魔導師オルドは司令を出す。





「どうやら、我が方が優勢のようだな。

 魔獣どもは個々の能力は高いようだが、統制がとれていない。

 武器も貧弱だ。

 我ら王下直轄騎士団が出るまでもなく、イワン公爵の騎士団だけでカタがつきそうだな。」


 王下直轄騎士団長メチルは楽観的に言い放つ。


「そうですな……このままだと間違いなく勝……ん!?メチル様!あれを!!」


 戦場の近く、地面に空いた穴から魔獣が30体近く飛び出してくる。

 その魔獣は黒く、足が6本付き、顔は醜悪そのもの、筋肉の隆起が見て取れる。

 頭には角が12本不規則に生えている。


「あ……あれは……まさか12角獣!?

 上位魔獣があんなに!!いかん!!!!」


 12角獣は、馬で疾走中のイワン候配下、封魔騎士団に向かっていく……速い!!


「まずい!!我らもいくぞ!!」


 先方に展開中の騎士団が危機に陥ると判断した王下直轄騎士団メチルは、主力軍の前進を命じるとともに、自らの騎士団も前進を開始した。

 騎士団は、歩兵を追い越し、前に出る。



 封魔騎士団~


「左方注意!!魔獣の群れが向かってくるぞ!!」


「矢を射よ!!」


 弓が引かれる。

 封魔騎士団は、馬で走っているにも関わらず、魔獣との距離は縮まっていく。

 魔獣はその大きさが3mを超え、気持ち悪いことこの上ない。

 弓が放たれる。


 風切り音。


 矢はすべて、獣の針金のような体毛にはじき返される。


 マウリの配下、大魔導師オルドによって放たれた12角獣は、その勢いを殺す事なく封魔騎士団に襲い掛かった。

 騎士団前方の騎士が連続して馬ごと吹き飛ばされ、その後方の騎士を巻き込み、壮大に落馬、騎士団の足が止まる。


「し……しまった!!!」


 機動力を失った封魔騎士団は、たちまち下位魔獣に囲まれてしまう。


「抜剣!!隊列を整えよ!!」


 個々の能力差をカバーするため、落馬した騎士たちは、早急に隊列を整える。

 その隊列に再度12角獣が突入、多くの死者を出し、隊列が粉砕される。


「ぐぁぁぁぁっ!!」


 悲鳴と共に各個撃破される騎士たち。

 地獄絵図……。


「あきらめるな!!見よ!牙龍騎士団がこちらに向かっている!!」


 騎士団は隊員たちを鼓舞する。

 12角獣の群れは牙龍騎士団へ向かって走り始める。


 彼らは槍を構え、魔獣と対峙する。

 衝突……。


 多くの騎士が落馬し、弾き飛ばされる。しかし、12角獣は1体がケガを負ったのみ。

 明らかな戦力比。

 牙龍騎士団に動揺が広がる。


「ほっほっほ……。マウリ様、12角獣をたったの30体放っただけで、敵の先方は総崩れをしています。

 今回の戦いには魔炎駆動式戦車や、魔獣ジオビーモスの投入は必要無いでしょうな。」


「……しかし、王国軍主力が動き始めたぞ。

 12角獣のみでは、ちと厳しい気がするがな。」


「そうですな……マウリ様、私はある程度のコストのかかる戦車の投入は、王都攻略まで見送り、今回は有翼騎士団を投入し、お高くとまっている王下直轄騎士団を絶望の淵に叩き込んでやりたいなと思います。」


「ほう……もう虎の子を出すのか?」


「はい、相手は主力軍です。その主力軍に絶対勝てないと思わせる圧倒的力量差を見せつけ、そして1部を逃がす事により、王都の兵は士気が低下するでしょう。

 城塞都市アルクール攻略に大いに役にたちましょう。」


「さすが大魔導師だな。お前に任せる。」


 マウリ・ハンマンは彼の秘密兵器ともいえる有翼騎士団の投入を決定した。


◆◆◆


 王下直轄騎士団は総崩れとなったイワン候の軍、封魔騎士団と牙龍騎士団を救うべく、魔獣の群れに対し、突入を開始していた。

 しかし、まだ距離があるため、疾走する馬に乗っていても、その速度はもどかしく感じる。


「なっ!!何だあれは!!!」


「うぉぉ!まっまさか!!」


 騎士団に動揺が走る。

 何事かと、騎士団長メチルは、上空を見上げる。


「そんな……そんな馬鹿な!!!火……火喰い鳥の群れだと!?し……しかも、人が乗っている!!?

 まずいっ!!」


 天翔る騎士団は、王下直轄騎士団上空約20m付近で、火炎を地上に向かい放射した。


「ギャァァァぁ!!!」


 総数70騎にも及ぶ火炎放射は、地上をなめるように突き進む。

 この島の文明水準としては、あまりにも強力な攻撃となった面制圧火炎放射により、王国軍は総崩れとなる。


「天翔る統率された軍を、どうやって防ぐというのだ!!

 しかも最強の……天の覇者、火喰い鳥を操るなど……これほどまでに強力な軍がこの世界に存在するなぞ……ちくしょう!!

 ちくしょぉぉぉぉ!!!」


 王下直轄騎士団長メチルは、マウリ・ハンマン配下の有翼騎士団の攻撃により、獄炎と共にこの世を去った。

 本戦いで、カルアミーク王国軍は死者5600人を出し、残りの3400名が敗走した。


◆◆◆


 その日、王都に衝撃が走った。

 カルアミーク王国軍主力の敗走、敗走兵から語られる敵の強さは常識では考えられないほどだった。

 強力な魔獣の群れも脅威だが、何よりも脅威なのが、最強の空の覇者、火喰い鳥を50騎以上という尋常ではない数を敵が操っていたという事実。

 統率のとれた火喰い鳥が襲ってくると、こちらからは攻撃出来ないため、一方的に撃破されるだろう。

 敗走兵の証言が事実なら、王都の強力な防御力に致命的な穴が開きかねない。

 国王ブランデは頭を悩ませるのだった。



 王都アルクール とある酒場


 酒場では、王国軍敗北の噂を聞いた酔っ払いどもが話をしていた。


「まさか、王下直轄騎士団までもが出陣して、1諸侯に負けるとはな。」


「ああ、しかし、マウリ軍は火喰い鳥を操っていたらしいぞ。」


「火喰い鳥だと!?あの猛鳥、いや、魔鳥か?」


「ああ……ええと……たしか……。」


「時速100から110kmで飛び、人くらいの重さなら、余裕で運ぶだろう。

 空から地上に向かって吹き付ける火炎はその射程距離が20mにも及ぶ。

 羽は固く、性格はプライドが極めて高く、人間を乗せるなぞ、考えられないが……。」


「本当に……話が本当だとすると……。」


「空からの攻撃なぞ、神話でしか聞いたことがない。

 本当ならば、王国軍の苦戦は免れない。」


「いったいどうなってしまうのだろうな。」


 酔っ払いどもの話はつづく。


◆◆◆


 情報が簡単に手に入らない世界は、こうも、もどかしいものか。

 外務省の北村は、あまりにも情報の少ない現状をなげく。

 周りの状況、兵たちの血走った目と、ピリピリとした緊張感から、マウリ討伐が失敗に終わったのではないかという事が推測できる。

 ウィスーク公爵に尋ねても、国に関する保秘事項であるようで、口が堅い。

 本国に情報がうまく伝えられず、強制的にヘリを呼び、カルアミーク王国から退去して良いものか、判断に迷う。

 北村が庭を見ていると、悩みとは無縁の人物が見える。


「ムーラ様、このお花をご覧ください。とっても綺麗ですね。」


「あ……ああ。」


「このお茶と菓子、お味はいかがですか?」


「ああ……うまいな。」


「うれしいっ!!私、昨日から寝ずに、ムーラ様を想い、作りましたの。」


「ありがとう。」


「そのしぐさ、キュンと来ますわ。」


 北村はため息を吐く。


「まったく、のんきなものだ。」


 自分だけが悩んでいる。

 情報が入ってこなければ、悩んでも悩まなくても行動は同じであり、結果も変わらない。

 眼前のお花畑な光景を見て、少しだけ彼は悩む事をやめる。


「今日も1日、情報を集めるとするか。」


 彼が身支度を始めたころだった。


 ゴウーン……。


 何かが遠くで爆発したかのような、重低音が王都にこだまする。

 王都の兵が慌ただしく動き始める。

 遠くの方から、悲鳴のような声。

 街からは、火の手があがり、その数は徐々に増えていく。


「何だ!?いったい何が起こっているんだ?」


 北村は、ウィスーク公爵に尋ねようと思い、早急に準備を整え、彼の部屋に走る。

 ウィスーク公爵の部屋に着いたころ、彼の配下の者がちょうど公爵に報告に来ていたところだった。


「いったい何があったのですか!?」


 北村は尋ねる。


 ウィスーク公爵の焦りの顔を見て、何か尋常ではない事態が発生した事を理解する。


「ああ、北村さん。マウリが王都に攻め入って来ています。

 すでに第1の城門が突破され、魔物が市街地に流れ込んできています。

 今、王国軍は急遽兵を立て直しているところです。

 ここは、第2の城門の内側にあるため、今のところ被害は出ないと思われます。」


 ウィスーク公爵は軽く情報を伝えると、配下の者に振り返る。


「何故こうも簡単に第一の門が落ちたのだ!!」


「はい、本日早朝、火喰い鳥に乗った騎士団が空から城門の内側を攻撃してきました。

 上空に気を取られているスキに、敵の魔導兵器、強力な戦車が現れ、城門を焼き払い、そこから大量の魔物が市内に流入しています。

 この戦車は、弓も通さず、バリスタでさえも弾き、魔法も受け付けず、なす術がありませんでした。

 敵は第1城門内の市街地を蹂躙しつつ、第2の城門に向かっております。

 第2の城門は、2重防壁となっていますので、簡単には抜かれないと思います。」


 話をしている間にも、街からの炎は増え続ける。

 王都全体が騒然とした雰囲気となる中、北村は本国に速報するために走りはじめる。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ピッコマにてコミックを知り、今出ている分は全て購入させて頂いております。7巻までかな。 [気になる点] 先にコミックを拝見してから、この小説を拝見しましたが・・・ やはり少し疲れます。 多…
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