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魔法少女は誰かを愛しちゃダメなんですか 作者:貞治 参

第1章

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第33話 救いの手

 マリ、絶体絶命かと思われたその時、救いの手は差し伸べられた。



 何かを察知したか、ハルの動きが止まったのだ。マリへと伸ばされた右腕はそのままに、周りの気配を探っているようだ。

 突然後ろを振り向いた。振り向きざまに右手で顔の正面辺りを薙いだ。

 サキは、この行動の意味を一瞬遅れて理解した。

 来たか……!



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 一般的に、魔法少女は近距離で戦うことが多い。それは、主な攻撃手段であるエネルギー変換には、近距離で作用するものが多いからである。熱、電撃、テレキネシスは特にそうで、何か空気以外の物質を伝搬させることができない場合、それらの魔法は普通は遠くまで届かない。

 もちろん、近距離以外で戦う方法はある。相手との距離がさほど離れていない中距離程度なら、物体や、偽物質生成で創り上げた武器をテレキネシスで放ったり、エネルギー変換・風に乗せて何かを飛ばしたりすることで、ある程度の距離までは対応することができる。

 しかし、物を効率よく遠くまで飛ばすには、限界がある。また、風をどこまでも吹かせるわけにはいかない。

 このため、一般的な話をするならば、遠距離であればあるほど魔法少女にとっての攻撃手段が失われるのである。



 ただし、例外はいる。



 ハルとマリ、サキ、メイから遠く離れたある建物の上、通常では攻撃など届くはずもないその距離で、ある一人の魔法少女がハルに向けて一撃を放った。



 その魔法少女の名は、イチと言う。



 イチは、ハルによって攻撃が散消されたことを確認したのち、その場からそっと離れた。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 イチが生んだ隙は、非常に重要なものだった。

 この間に、マリはサキに抱えられ、ハルから遠くまで離れてしまっていた。

「サキさん、腕が!」

「黙ってろ」

 負傷をしていない右腕でジタバタするマリをしっかり抱え込んでいる。

「おい、お前」

 メイが反応する。

「こいつについてけ。???のとこまで連れてってくれるだろうよ」

 サキは言いながら、マリを片手で放り投げた。マリはなんとか着地した。

「なんで、メイさんがここに……!? どうやって?」

「あなたは、どうするつもり……?」

 マリの疑問は無視し、メイが尋ねる。

 ハルはまだ周囲を探っているようだ。

「ハルを足止めする」



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 メイはとっさに反論した。

「できるわけない」

「かもな。だが、絶対無理ってわけでもなさそうだ」

「……?」

 サキはハルがいる方向とは別の方向に目をやった。メイもつられてそちらを見る。

 あれは……!

 メイの目にも映った。

 シズ、アイ、ユリ、それともう一人メイの名の知らない少女の姿が。彼女も魔法少女だろう。

 4人はこちらに駆け寄ってきている。

「なんで……?」

 メイのつぶやきにサキが答える。

「大方、こいつが助けを呼んだんだろうよ」

 マリを指差す。マリは4人の登場を複雑な面持ちで眺めていた。

「時間はない。さっさと行け」

「サキさん……」

「お前も、しっかりしろ。お前がいなきゃ、誰があいつんところまでこいつを連れて行くんだ?」

 マリはゆっくり頷いた。そしてすぐにその泣き顔を上げ、大声で言った。

「絶対に死なないでください! ハルさんを止められなくて、ごめんなさい!」

「わかったわかった、もう行け」

「はい! メイさん、こっちです」

 マリが駆け出し、メイもそれについて行った。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 ふう。

 ようやく一人で戦えると思ったが、4人、いや、5人増えちまったか。

 まあ、仕方ない。足止めとはいえ、ハルを一人で相手にするなんてことは土台無理な話だ。

 6対1……。

 これで魔力差を覆せるとは思えないが、やるしかないか。

 サキはハルを見据えた。ハルはもう、こちらに注意を向けていた。援軍の到着にも気づいている。

 右手で刀を構える。

 ハルの攻撃は、厄介だ。魔力量が膨大な分、力で戦えば必ず負ける。

 誰も死なせない、なんて難しい。これだから複数人で戦うのは嫌いだ。他人の心配までしなきゃいけなくなる。



 深呼吸をして、息を整える。

 嘆いても、この状況は変わらない。



 こちらにできること、それは……。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 マリのあとをついて走る。

 マリの足は速くないため、メイにはだいぶ余裕がある。しかし、話しかけはしなかった。相手は必死だからだ。

 突然、マリが足を止めた。まだカブラギ通りから少ししか離れていない地点だ。

「ここから行けます」

 マリの声には、もう涙は混じっていなかった。

 目の前には、なんの変哲もない商店がある。看板はないため、なんの店かはわからない。

「許可された人しか入れませんが、まだ、私でも入れるはずです」

 そう言い、商店の中へと入っていく。

 メイもそれについて行った。

 商店の奥の奥、マリの目指した先には、木製の台があった。メイには見覚えのあるものだ。

「空間魔法……」

「はい。ただし、特定の人しか使えませんし、行き先も決まっています」

「???のところ、か」

「はい」

 マリはいそいそと台の上に乗った。メイも続けて上に乗る。

「では、行きます」

 メイが頷く。

 マリの両手が光ったと思った瞬間、台も光を放ち始めた。

 そして、メイは本日2度目の空間魔法を体験することとなった。
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