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魔法少女は誰かを愛しちゃダメなんですか 作者:貞治 参

第1章

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第22話 フラッグ・オブ・マジック

 両チーム準備は整ったようだ。自陣の旗の前に、各々が並んでいる。ちなみに、この旗はメイが生成したものである。

 審判は、ミミだ。場外にいる。

「準備はよろしいですかー?」

「OK!」

「こっちも!」

 ライとアイの返事が聞こえる。

「では、フラッグ・オブ・マジック始め!」


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 合図とともに、シズの神経強化の魔法がアイにかかる。一瞬ののち、アイは駆け出した。真っ直ぐに相手の旗の方へ向かう。

 相手チームからは、ライが飛び出してきている。おそらく相手も神経強化をかけられていると見ていいだろう。イル&ルイは守りか。旗の前から動く気配はない。

 やがてサッカー場の中央に、アイとライが差し掛かろうとしていた。

 そこで、アイは煙幕を放った。サッカー場の面積の約半分ほどが、たちまち煙に覆われ視界が奪われる。メイ先輩から習った、煙幕。さあ、これで相手はどうでる?

 アイは煙幕の中を突っ切った。煙幕が広がったタイミングでライが風を使うかと思っていたが、どうやらライもそのまま突っ切るらしい。アイとライは互いを見ぬままにすれ違う。両チームとも相手の陣営を見渡せない状態が続く。

 アイが、煙幕から抜け出した。旗と、その前にいるイル&ルイを視界に捉えると、即座に旗めがけて風を放った。が、これはイルに散消される。諦めず次々と風を放ちながら、旗に駆け寄っていくも、イル、ルイ両者によって風は散消されていく。

 だが、これでいい。今はとにかく、相手の気をこちらにそらすことだ……。



 アイがそう考えたその時、大音量のビープ音がアイの後方から鳴り響いた。

 一体、何が起こった?

 アイは思いながらも、風を放つのを止めなかった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 ビープ音が鳴る前、シズはライの姿が煙の中から出るのを確認していた。

 こちらの準備は万全のはず。すでに旗のすぐ近傍の三方位には黒い壁が建てられている。風程度ではビクともしないだろう。さらに、相手の行方を遮るように、自陣には、3重の黒い壁が並べてある。

 シズの作戦は、黒装束戦の時にメイが使ったものと同じだ。すなわち、黒壁の裏に隠れておき、相手が黒壁を散消した直後、ほぼゼロ距離でテレキネシスを放つ、というものだった。

 さて、そろそろライが第一の壁に到着するだろうと思われたその時。

 ビープ音が鳴り響いた。

 ライがあの音を?何の合図?シズは訝しんだが、考えている暇はなかった。



 散消されると思っていた黒壁が轟音とともに破壊されたためだった。

 うそ!何で消さずに壊すの!?

 これでは壁の裏に隠れてなどいられない。破壊に巻き込まれてしまう。まさかこう来るとは予想していなかった。どうすればいい……?ライの侵攻を私に止められるか……?


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 ビープ音が合図となったのか、ルイがイルのそばを離れた。旗の周囲に半円を描くように移動しながら、遠くまで届く何かを放っている。

 あれは……ペンキ?

 赤い液体状のものを所構わず、生成してはぶちまけている。アイは自分のほうにかかってくるその液体を風で振り払った。そして、はっと思い当たる。

 まずい。気づかれたか!

 そのうち、その液体は、アイの右手側で何かに当たったのか、宙を赤く色付けた。



 完全にばれてしまってる……!

 マリだ。シズに不完全な透明化の性質変化をかけてもらい、密かに場内の端の方から攻めてきていたのだった。不完全とはいえ、目視はかなりしづらくなっているし、黒装束を着ているため、魔力発動をしなければ魔力感知もされることはないだろうと高をくくっていたが、こうもあっさりばれるとは……!

 ライ、相当勘がいいらしい。


 ……仕方ない、プランBだ。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 ライは、2つ目の壁を破壊したようだ。迂回しようという考えもないらしく、一直線に旗の方めがけてやってきている。3つ目の壁が破壊されるのも時間の問題だ。

 シズは咄嗟に思いついて、破壊されると予想される壁の内側の地面に、ある魔法をかけておいた。

 さあ、来るか……!



 ドッと壁が破壊された。シズは壁の破片を避けていると、目の前に、ライが現れた。

 ライは笑っていた。

 ちょっと怖い。シズがそう感じたとき、ライの動きが一瞬鈍くなった。

 すかさず、シズは指を鳴らした。

 魔法解除。

 師匠が使っていた技だ。師匠はティーカップに透明化の魔法をかけておき、指を鳴らすことでその魔法を解除したのだった。

 ライの動きが止まる。ライは自分の足元を見つめた。そして、足が地面にめり込んでいるのを確認したようだ。

「性質変化・液状化とその解除、か」

 ライが笑った表情のままつぶやく。それには答えず、シズはライに向かって、テレキネシスを放った。



 しかし、これは散消された。

 続けざまに両手でテレキネシスを放ち続けるが、ライの反応も速く、散消がなされるだけだ。

 おそらく、ライの力からすると、今は地面によって封じられているその足を自由にするくらい訳ないだろう。

 このテレキネシスと散消の応酬で何とか時間が稼げればいいのだが……。

 シズは、煙の向こうにいるアイとマリの作戦の成功を祈った。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 イルとルイは二手に分かれて対応するようだ。アイのほうにイルが、マリのほうにルイがそれぞれ付いている。

 アイは、相変わらず風を放ってはイルに消されていた。

 そういえば、イルもルイもバドミントン部のエースなんだっけ。アイはぼんやり考える。だとすると、打ち返すのは得意な訳だ。

 アイの思った通り、イルの反応は素早かった。ほとんど近距離で放っている風を見事なステップと身のこなしで正確に打ち消している。



「わわわっ」

 あの声はマリか。ちら、と視線を向ける。ルイがマリをテレキネシスで攻めているようだ。マリが一旦、ルイから距離を置いた。

 落ち着け……。心の中で、アイはマリにエールを送る。

 チャンスを待つんだ……!


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 ライの手数が多くなってきた。こちらはその対処に精一杯になっている。

 限界か……。

 やがて、ライのテレキネシスがシズに当たり、シズは横に吹き飛ばされた。

「くっ」

 すぐに受け身をとった。が、その間にも、ライは旗の周りの黒壁に駆け出している。すでにシズとのやり取りの間に、自分の足は解放したようだ。

 もうだめか……!


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 チャンスはやってきた。マリがルイから離れ、こちらに視線を向けた。

 今だ……!

 アイは頷き、イルに()()()()()

 イルの表情は確認できないが、おそらく驚いていることだろう。戦いの最中にいきなり背を向けられたのだ。

 願わくばこれが意表をついた行動であった欲しい……!

 アイは自身の体に上方向のテレキネシスをかけると同時に、勢いよく垂直にジャンプした。

「イル!」

 ルイの声が聞こえた。

 アイはそのまま空中で後方に宙返りをし、そして……。



「オーバーヘッドシュート!」



 アイの右足によって、()()()()()()()()()()()()()ボールが蹴り飛ばされた。イルの頭上を通過し、一直線に旗へと向かう。イルが反応したようだが、もう遅い。

 ボールは旗のポールを吹っ飛ばし、ゴールポストに収まった。



 ピーーー。

 試合終了の笛が鳴った。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 危なかった。

 シズは笛の音を聞きながら、ほっとしていた。

 旗の周囲の黒壁の前にもう一枚、半透明の壁を用意しておいて良かった。

 ライもその半透明の壁に直撃する前に壁の存在には気づいたようだが、咄嗟によけるか破壊することができなかった。駆け出した勢いのまま、肩で壁にぶつかったらしい。壁はそれで壊れることはなかった。

 その少しの間が、西チームを救った。



「いやあ、負けちゃったね。悔しいな!」

 ライがやはり笑いながら、シズに言ったのだった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 地面に見事着地したアイは、いまだ口を開けているイルに言い放った。

「言ってなかったっけ?私、女子サッカー部のエースなんだ」
今回の勝負、割とうまく戦略的に書けた気がします。

次回、勝負の反省会と別れの時、です。

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