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彼女のこたえ
しばらくの間、紗世は時田に渡された指輪をじーっと眺めていた。
そして意を決したように話はじめた。
「時田さん。指輪すごく嬉しかったです。ずっと聞きたかったプロポーズの言葉。一生に一度なんだから絶対に記憶に残そうってずっと前から決めてたのにいざその場にくると頭が真っ白になっちゃって」
クスッと笑い言葉を続ける。
「わたし時田さんと結婚できません。時田さんのことはいまでも大好きだし、いつか結婚できたらって思ってました。でも…信じる自信がなくなってしまって。これからあなたを信じて妻としてサポートしていく自信がないです。一度失ってしまった信頼を取り戻すことができなくて。どうしたらいいのか毎日悩んでいました。考えてみれば近くにいたはずなのに言いたいことも言えないでいることが多かった。不安なのに不安だと言えなかった…。いつも疑うようになってしまった。こんな自分が結婚なんてきっと無理だと思う。ごめんなさい。あなたと結婚できません。しばらくひとりになって考えてみようと思っています」
言い切ってホッとしたのか紗世の肩から力が抜けたのがわかった。
それに落ち着いた優しい声で時田がこたえる。
「わかった。もともとは自分で撒いた種だから。でもこれだけは信じてほしい。さっき言った言葉に嘘はないよ。もう紗世を悲しませることはしない。もしまた俺のこと信じられるようになったら戻ってきてほしい。ずっと待ってるから」

サッと立ち上がり紗世が部屋をでていく。
一人残された時田は自分がしてしまった過ちの大きさを実感する。大切なものを失ってしまった。
突然の孤独。
でも彼女の気持ちはもう戻ってこない。
あんなに一途に自分を受け入れてくれていた彼女を裏切った罪は消えない。
気づいたら涙がでていた。
泣くのなんて何年ぶりだろう。
大学生の時、大好きな祖父が亡くなった。その時以来かもしれない。
どんどん悲しくなってきて涙が止まらなかった。
部屋にひとり残された彼は明け方まで泣き続けた。


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