表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サツキとダンの新しい世界  作者: 手絞り薬味
サツキとダンの新しい世界
28/101

第14話ダン編    大胆な告白

 うつ伏せになって枕に顔を埋め、俺は溜息を吐く。

 ああ、幻聴が聞こえる。

 サツキ……。


「ダン、起きるねダン」


 ん? 背中を叩かれている……?

 それにやけにはっきりとした幻聴だな。

 ……いや、違う。まさかこれは現実か?

 ゆっくりと顔を上げると、サツキの顔が目の前に……。

 驚いた俺は、咄嗟に後ろに飛びすさった。

「サ、サツキ、どうしてここに」

 幻ではない! 本物のサツキだ。

 しかしどうして……。

「話があるね」

「話……?」

「うん。あのねぇ――」

 サツキが這うようにして俺に近付く。


「一緒、住むね」


「え……?」

「新しい屋敷、ダン一緒、住むね」

 一緒に住む? どういう意味だ。

「ね」

 いや、『ね』と言われても……。

「ダン、一緒、住むね」

 サツキは繰り返す。

 もしかして……、新しい屋敷に俺も一緒に住もうと言っているのか?

「駄目だ」

 そんな事すれば、また誤解される。

 俺達は離れた方がいいんだ。

 ありがとう、サツキ。最後に会えて良かった。

 さようなら。

 俺が覚悟を決め別れを告げようとした時、サツキが口を開いた。


「屋敷に住む。ダンの下に一つになりたい」


 ……え?

 俺の下に一つになりたい?

 何だそれは。

 サツキを見つめて考える。

 俺の下に一つ……。うーむ。

 俺の下に一つになる……。つまり。

 俺の下になって一つ……。


「えぇえええー!!」


 それは、え、いや、まさか、そういうことなのか!? 何故!

「待つね!」

 思わず後ずさる俺に、サツキが勢いよく抱きついてきた。

「お願い、ダン」

 潤んだ瞳で見上げてくるサツキ。

 そんな……やめてくれ……どうして……、サツキには好きな人が……。

 そこで俺はハッとした。

 もしかして、いやでも、そうとしか考えられない。何ということだ!


 サツキが好きなのは……俺だったのか!


 そうだ! よく考えれば分かったのに!

 カタヤの屋敷に出入りしているのは俺しかいない。

 サツキは口には出さないけど、一生懸命俺に好きだと訴えていたんだ。

 それなのに鈍い俺は気付かずに……、そうか最近機嫌が悪かったのも、俺がいつまでたってもサツキの想いに気付かないからイライラしていたのだな。

 そして、屋敷を買収して俺と結婚するという強行手段に出たのか!


「すまなかった、サツキ!」


 ギュッとサツキを抱きしめる。

 ああ、なんて愛しい。

 サツキの目から流れる大粒の涙を俺は指で拭った。

 今、気付いた。


 俺は――サツキを愛している!


 自分の気持ちに気付かないなんて、俺は馬鹿な男だ。こんなにサツキを泣かせて……。

 サツキは頬を赤く染め、俺に縋り付いている。


「サツキ、分かった」


 受け止めよう、この想い。

「え!? 本当?」

 ああ。結婚しよう。

「今からおじ様とおば様に挨拶に行こう」

「…………」

「サツキ?」

 サツキが俺を黙って見つめている……と思ったら次の瞬間――。


「やったあ!」


 子供のように両手を上げて飛び上がり、サツキは俺の頬に口付けた。

 う! サツキ。先程の大胆な告白といい、積極的なところもなんて可愛いのだ。

「準備するから少し待っていてくれないか」

「うん」

 居間にサツキを連れて行き、そこで身支度が整うまで待ってくれるようお願いして、俺は急いで服を着替えたり顔を洗ったりした。

 結婚の挨拶に行くのだから、それなりの格好をしないといけないな。

 鏡で姿を確認して、俺はサツキの元に向かう。

「行こうか」

「うん」

 手を差し出すと、サツキが笑顔で俺の手を握る。

 この小さな手を、笑顔を、俺はこの先ずっと守っていこう。

 手を、心を繋いで俺達は歩く。


 二人の明るい未来へと――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ