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サツキとダンの新しい世界
第1話サツキ編    楽勝!異世界トリップ
 大きなお屋敷の大きな庭――。
 なんと噴水まである。
 私はその庭で、まったり紅茶を飲んでいる。
 ああ、幸せ。
 私の名は、五月サツキ
 十七歳。
 ここはトーラ王国のカタヤ家。
 ほんのちょっと前まで日本の女子高生だった私だけど、どうやら異世界トリップしてしまったみたい。
 でもこれが、とにかく幸せなのだ。
 小説のように伝説の巫女だと言われる事も、勇者と言われてモンスターと戦う事も、王様との強制結婚もない。
 し・か・も。
 こんなお金持ちに拾われて、本当に私ってば運がいい。
 養父母は優しいじいちゃんばあちゃんだし、言葉だって完璧マスター。
 日本にいる時は、英語さえまったく理解出来てなかったのにだよ。
 異世界語がペラペラになるなんて、人間やる気になれば出来るもんだね。
 異世界トリップ、意外と楽勝。
 紅茶をもう一口飲んで、ホッと息を吐く。
 今日はいい天気だなぁ。
 青い空、白い雲。
 ヒラヒラと飛ぶ布……。
 ん!? 布!?
 あらら。洗濯物が飛んで行ってるよ。
 あれ、うちのだよね?
「マーチー!」
 メイドのマチルダを大声で呼んだけど、聞こえていないみたい。
 仕方ない。私が追い掛けてやるか。
 立ち上がり、長いドレスの裾を持ち上げて走る。
 待てーっ!!
 しかし、なかなか追い付けない。
 ありゃ、うちの敷地を出ちゃった。
 生け垣を掻き分け進む。
 あ……、ドレス破けた。ごめんなさい。
 気を取り直して更に追い掛けると、布は隣家に飛んで行く。
 う……。どうしよう。
 お隣さんって、会ったこと無いんだよね。
 なんか仕事が忙しいらしくって、いつも留守だし。
 通いの使用人さんがいるみたいだけど、たまにしか来ないしね。
 うーん。
 ……不法侵入になるけど洗濯物回収するだけだし、ちょっとくらいいいよね。
 チビな私の身長と変わらないくらいの低い塀に手をかけ、よじ登る。
 よいしょ、よいしょ。
 よし、後は降りるだけ……って、え!?
「…………」
 お、男の人がいる。
 隣人さん……?
 男は大きな体を小さく丸め、椅子にちょこんと座っている。
 もの凄く真剣な表情で左手に鏡を持ち、右手で頬を上げ下げしているけど、何やってんの? 変な人。
 あ! 布が男の目の前に落ちた。
 男が布に気付いて鏡をテーブルに置いた。
 布を手にしてキョロキョロ……って、目が合った。
 とっても驚いている。
 そりゃそうだよね……。
 私は出来るだけ事態を穏便に解決させる為、笑顔を作った。

「こんにちは。私、サツキって言います。怪しい者では無いんです!」

 ニッコリ笑って、お隣さんの庭に飛び降りた。


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