俺は一人じゃない。そう思えた17歳の初夏。縦書き表示RDF


恋愛カテだけど恋愛ではありませんのでご承知下さい。
愛は愛でも「姉弟愛」です。
すみません。 松の慎
俺は一人じゃない。そう思えた17歳の初夏。
作:松の慎


“天才”


その意味を俺は誤解していた。


首位に立つものが必ずしも天才なわけではなく、天才と秀才は違う意味を持つことを初めて知った。



「わーっ、凛またトップじゃん!」


休み時間、友達といつものようにバカ話をしていると廊下から女子の声が聞こえてきた。

どうやら中間の結果が張り出されたらしい。


「俺らも見に行くべ」
「だなー」


みんなが席を立ち上がる中、俺は漫画を読み続ける。
そんな俺を見て言った。


「蓮見に行かねーの?」
「行かねぇ。だって俺どーせビリだし」
「ぶはは。まぁな〜」


姉さん、またトップか。

バッカみてぇ。
そんなに1位にこだわるなんて。

いや、こだわってるわけじゃないか。

ただ姉さんは天才なだけで、嫌でも1位取れちゃうんだよな。

そのくらい俺にだって知ってるさ。


なおも漫画を読み続けていると、友達が廊下で騒ぐ声が聞こえた。
相変わらずうるせぇな、なんて思ってると女子3人がクラスに入ってくるのが目に映った。


「良いなー凛は。さっすが医者の娘ー」
「そんなことー。まぁまぁ運が良いってことかな」


身長は低めで髪の毛には軽くウェーブをかけていて、いつもなんだか知らないけどすっげぇ幸せそうにニコニコ笑ってんだ。

授業中なんか普通に寝てるし、こっそり携帯いじってるつもりが教師には普通にバレてるし、ついこの間部活を引退するまで運動部の部長だったし。

自分のことを「凛」って名前で呼んでるし。


幸せオーラ丸出し人間、俺の姉さん。


「あ、れーん」


姉さんが俺のところにトコトコやって来た。


「またトップだって?良かったな」
「うん!蓮は?」
「さぁな。まぁどーせビリだわな。まったく分かんなくて解答用紙にめっちゃ落書きしちゃったし」


ハハハと笑って言うと、姉さんは何を言うわけでもなくジッと俺を見つめた。


「なんだよ?」
「いつもそんなことしてたの?」
「あ?ああ、そーだけど」
「あんたテストをなんだと思ってんの?」


ドキッとした。

いつもみたく「バカじゃん蓮〜」なんて言って笑うと思ってた。


「…は。なんだと思ってるって?そんなんこっちの台詞だね」


俺はガタンと席から立ち上がる。


「あれほど無意味なもんってこの世にはねぇよ。じゃーな」
「ちょ…蓮!」


俺を呼ぶ姉さんを無視して俺は教室から出る。

こうしていつも授業をサボる。


ほんとくだらない。

やってられない。


姉さんと一緒の学校で良かった。

高崎凛といえば天才。
高崎蓮といえばバカ。


もう学校中にそんなことくらい知れ渡ってる。


姉弟なのにまったく違うんだねって何回言われたことか。

もっと姉を見習えと何回怒られたことか。


俺はそれを待ち望んでいるんだ。

もっと言って欲しい。
もっと俺を…「高崎蓮」をけなして欲しい。

高崎蓮は出来損ないなんだってことを知らしめてやりたいんだ。





『凛、蓮。この調子でトップを取り続けなさい』

『1点でも落とすんじゃない』

『私の名に恥じぬ成績や素行をしないさい』


…はは。
いや、それはもうずいぶん前の話か。


ちょっと前までは『しっかししろ!凛はこんなに良い成績を取ってるじゃないか!』とかだったな。

今ではもう見向きもされない。


殴られたのは1回きり。

もう反抗しても殴られも怒られもしない。

いないも同然の存在になったんだ。



内心かなりキレてるんだろうな。

そりゃそうだ。
有名医大卒で病院の院長をしてる父さんの息子が学校で成績がビリなんだ。

追試もサボって危うく留年しそうなところを父さんが土下座までして再試験受けさせてもらえたくらい。


恥ずかしいよな。
姉さんは申し分ない優等生なのに。

弟の俺はこんなにもクズ同然の劣等生。


笑っちまうよ。





──そうだ。お前は私のために存在する。道具扱いして何が悪い?──






「蓮」


誰もいないはずの授業中の屋上。

仰向けになりながらボーッと空を見上げている俺の視界に姉さんが入った。


「…なに。授業は」


ぶっきらぼうにそう言うと、姉さんは俺の隣にストンと腰を落として笑った。


「あはは、なんか凛寝ててね、そしたら先生に起こされて『お前ら姉弟は本当どうしようもないな。寝てた罰として弟探してきてくれな』って言われたの」
「ふーん…」


しばらくの沈黙。

言葉が出ない。


さっきのことでなんか言われるかな、と内心ドキドキしてるところもある。


「…俺行かねーよ。さっさと授業戻れば」


あ、今俺イライラしてる。

姉さんにこんな冷たい口調で話すのは気が引ける。


姉さんは…それでも俺の傍にいてくれる大事な人。
姉さんに嫌われたら一生の終わりな気がする。

自分からこんなクズになっておきながら。


「んー…蓮が行かないなら凛も行かない」
「は?!」
「どうせ授業出なくたって分かるし」
「…あー、そうだな。姉さんは天才だからな」


俺がそう言うと、姉さんは少し低めの声で「凛じゃなくて蓮が」と言った。


「なに言ってんの?俺どーしようもないバカだけど」


高3のこの時期に赤点ばかり取って卒業すら危うい俺。

この先の人生どうなってしまうのかって本気で心配されるような奴なんだ。


「バカなのは凛のほうだよ」
「は…」
「…凛は蓮が頭良いこと知ってる。だって中学のときだってずっと1位だったじゃない」
「まー中学はな。でもよーここ県内で一番の進学校じゃん?同じ中学の奴らなんて他に誰もいないような」


中学なんて所詮公立に通ってたんだから1位取れてもおかしくない。

別に俺は進学校じゃなくても良かったんだけど…むしろこの辺で一番偏差値が低い学校が良かったんだけど、姉さんがここにするって言ったから俺もここにしただけ。


「やっぱ本当に頭良い奴らにゃ敵わねぇなー。姉さんは本物ってことじゃん?」


姉さんと一緒じゃなきゃ意味がなかったんだ。

俺と比べる人がいないと、俺が困る。


…姉さんは本当の姉さんじゃない。
父さんの親友の子供で、姉さんが生まれてすぐ交通事故で死んじゃったんだ。

姉さんを引き取ったあと、俺も生まれた。
4月生まれの姉さんと3月生まれの俺は年子として、本当の姉弟として育てられてきた。

誰も疑いはしなかった。


俺がその事実を知ったのは、中3の秋。


「嘘!知ってるんだから!なんでちゃんとテスト受けないの?なんで親困らすようなことするの?」
「俺の成績には口出しするなって言ったじゃん」
「でも!!」


姉さんがそれを知ってるかどうかは知らない。

だけど俺が言えることはただひとつ。


姉さんは血がつながってなくても、「本当の家族」と呼べるたった一人の家族なんだ。


「…俺は医者にはならない。高校卒業できても就職もしないでそこらへん彷徨うつもり」
「なんで…?昔は2人でお医者さんになろうねって言ってたじゃない」
「昔のことなんてもう記憶にない」


姉さんだけが俺の救い。

父さんも母さんもいらない。
俺には姉さんさえいたらそれで良かった。


別に血がつながってる必要もない。

つながってなくとも俺は胸を張って俺の姉さんは「高崎凛」だって言える。


「どうして?どこで変わっちゃったの?」


姉さんは少しだけ泣きそうな顔をしている。

姉さんの問いかけに答えずにいると姉さんは「答えなさい!蓮!」と少し声を上げてキッと睨みながら言った。


…そうだ、姉さんのいうとおり。

授業なんか出なくたってテストで1位くらい取れる。
むしろ満点すら取れるだろう。

間違えた答えを書くのが大変なくらいだ。


だけど、あの日決めたんだ。


「…父さんの顔に一生消えない傷をつけたかったんだ」


もう二度と父さんの言うことなんか聞いてやるもんか、と。

俺の人生がどうなろうとも、自分を犠牲にしてでも許せなかった。

医師の間でも有名な父さんの顔に泥を塗ってやりたかった。


そうすることしか、できなかった。


「なに言って…」


姉さんは少し怯えたような顔をした。

俺はフ…と軽くあざ笑って、ドスのきいた低い声で話し始める。


「中3の秋頃のことだった。俺と父さんは些細なことでケンカした」


真夜中、のどが渇いたから飲み物取りにリビングに行くと父さんと母さんの話し声がした。

普通に声をかけようとしたけど、次の父さんの言葉に耳を疑った。


『凛もよく出来た子だな。まるで本当の我が子のようだ』


我が子のようだ?
ようって…なに?
姉さんは我が子じゃないの?と思った。


『本当ですね。本当に血が繋がっているようだわ』


2人の会話から姉さんと俺は血がつながっていなく、姉さんは違う人の子供なんだって理解した。


『ねぇ、どういうこと?』


俺は気が気じゃなくて、2人の話に割り込んだ。

2人ともまさか俺に聞かれてるなんて思っていなかったのか、かなり驚いた顔をしていた。


『姉さんと俺は姉弟じゃないの?』
『…そうだ。凛は私の親友の子だ。凛を生んでまもなく凛の両親は交通事故で亡くなって私たちが引き取ったんだ』
『は……嘘だろ』
『嘘じゃない。まぁまだお前が生まれてない頃だ』


完璧血がつながってると思ってた。

姉さんは俺と並んで頭も良くて運動神経も良くて人当たりだって良い。
俺よりも先生に好かれてる、まさに完璧人間だ。

父さんの娘といっても誰も疑いやしない。


『安心しろ。うちの病院を継ぐのはお前だ』
『は?ちょっと待って、だって姉さんがいるだろ』
『あいつじゃダメだ』
『なんで!』


ずっと継ぐのは姉さんだと思っていた。

たとえ俺が医師になっても、院長になるのは姉さんでせいぜい俺は副院長くらいだな、と。

姉さんのが生まれるのがはやいし、どっちが院長になっても見劣りしないのならやっぱり姉さんが継ぐのが妥当だと昔から…


『高崎の血を受け継いでないからだ』


そう思っていたから、父さんの言葉はあまりに衝撃的だった。


『ちょ…血ぐらいなんだよ!姉さんは姉さんだろ!』
『ダメだ。いくらあいつが出来てもやらせるわけにはいかん』
『そんなに血がつながってるのが大事なのかよ!』
『そうだ。だから凛が我が子でお前が他人の子だったら間違いなく凛に継がせていたけどな』


俺は目を丸くした。

実の父親がなんてことを言ってるんだろう…

意味分かって言ってんのか?

なによりも姉さんのことを悪く言うことが憎らしかった。


たとえ血がつながってなくても俺にとってたった一人の姉で、それは変えようのない事実だ。


「ケンカ…?」
「…そのとき、俺は父さんにこう言ったんだ。『あんた俺をなんだと思ってる?道具だとでも思ってんのか?』ってね」


確かに父さんを見て育ってきたから医師にはなるつもりだった。

その道に恥じぬよう生きてきたつもりだった。

けれど、父さんは俺を俺としてじゃなく「高崎蓮」として見てきた。

血さえつながっていれば俺じゃなくたって誰だって良かった。


「そうしたら父さんなんて言ったと思う?」


俺はうつろな目で姉さんを見た。

姉さんは眉の八の字にして、首をフルフルと横に振った。


「…『そうだ。お前は私のために存在する。道具扱いして何が悪い?』」


そう言うと、姉さんはバッと手で口を押さえて今にも泣きそうな表情をした。


「まぁ…道具だって言われてももうなんとも思わないけどね。期待が全部姉さんにいっちゃってごめん」


他の生き方、見つかんなかったんだ。

見返してやるとか仕返しとか、なにをやっても無駄だと思った。

結局良いことをして父さんの鼻を明かそうにも、きっと「私の子なんだから当然だ」と言われるのがオチだ。

それならば逆のことをすれば良い。


「でもそう仕向けたのは俺だ。姉さんと同じ学校に入ることで…姉さんと俺を比べることで俺はダメ人間で姉さんこそ高崎家にふさわしいって思い知らせてやりたかった」
「凛こそって…」


姉さんに指摘されてハッとした。

しまった…


「…そっか。蓮知ってたんだ」
「え…」
「凛が本当の子供じゃないってこと」


…姉さんも知ってたんだ。


「…凛ね、中1の頃医者になりたいってお父さんに言ったよ。そしたら凛の身の上のことを全部話した上で凛を継がせるわけにはいかないってキッパリ言われた」
「…」
「本当の子じゃないって知ってすごいショックだった。別に継ぎたいわけじゃなかったけど、ただ凛は両親と血がつながってないからダメだって言われたのが悲しくて」


中1…
俺より2年もはやく知ってたのか。

…どうして俺に言ってくれなかったんだろう。

いや、言いたくても言えないか。


「だから凛も高崎の娘だって認めて欲しくていろんなこと頑張った」


風がなびいた。

ウェーブの姉さんの髪が横に揺れている。


儚くもろく

けれど、強く。


「…知ってる?凛、試験の1週間前はいつも3時間睡眠なの」
「え?姉さんが?まさか…」
「授業中寝てるせいで余計に時間取っちゃってね」


姉さんは弱弱しく笑った。


「寝なきゃ良いんだけど、寝なきゃダメなの」
「どういうこと?」
「寝ても勉強できる…そんなイメージをつけたかった」


姉さんの言っている意味が理解できない。

それでも分からないでいると、姉さんは付け足した。


「授業聞かなくても分かるって…完璧なんだってみんなに知られたかった。そうすればいずれはお父さんの耳にも入るかもしれないって」
「じゃあ、なに…姉さんは…」
「天才なんかじゃない。凛は蓮とは違う…何時間も何時間も必死にやってやっとこさの1位しか取れない」


知らなかった。

俺の知ってる姉さんは俺と一緒で本当に寝ていてもスラスラ問題解けて、みんなから頭良くてうらやましいと言われるような人。

3時間睡眠なんて…
そんな夜中までずっとクッククック勉強してたのか?


「なんで…なんでそこまでして」


ずっと姉さんを天才だと思っていた。

天才なんかじゃない。
姉さんは100%努力してる秀才なんだ…

知らなかった。

なのに俺、姉さんにいろいろひどいこと言った。

姉さんは天才だの本物だの、姉さんには敵わないだの…


どんな思いで俺の言葉を受け止めてたんだろう。


「お父さんに血がつながってなくてもお父さんの娘だって胸を張って言いたかったの」


姉さんは名前の通り凛とした表情でそう言ってみせた。


「でもきっと蓮が継がなくてもお父さんは凛に継がせてはくれなかった。親戚とか従兄弟とかに継がせた…。血ってそんなに大事なのかな」


いつもニコニコ幸せそうに笑ってる姉さんの、はじめて聞く本音。

本当はこんなにも弱かったんだ。


一緒の家に住んでたって、ずっと一緒に生きてきたって、なにも知らないんだ…


俺は姉さんをギュッと抱きしめた。


「れっ…蓮?!」


姉さんは驚いた声を出した。

俺は構わずもっと強くギュッと抱く。


「…姉さん、血なんかいらない」
「え…?」
「姉さんだけが俺の本当の家族だったんだ…」


俺たち、同じだった。

俺も姉さんのように正しい道を行けば良かった。

傷ついたことは一緒なのに、なのに俺は父さんを憎んでばかりで自分が上に這い上がろうとは一切しなかった。


身を滅ぼしてでも父さんを傷つけたいというのは、一瞬綺麗事に聞こえるかもしれない。

けれど、勇気を出せない臆病な奴が進む道でしかない。


俺は父さんに認めてもらう努力をこれっぽっちもしてこなかった。


「別に跡継ぎとかそんなん、どうだって良いんだ…」


たぶん、俺ら求めていたことは同じなんだ。

求め方が違うだけで、本当は同じだった。


「蓮…っ…」


姉さんも俺をギュッと抱きしめた。

俺の涙が頬を伝って、姉さんの体に落ちた。


こんなにも温かい。

こんなにも俺を癒してくれる人は、世界中で姉さんだけだと思った。

大げさかもしれないけど、それでも姉さんは必要な人だった。


俺は姉さんから離れて、袖でグイッと涙を拭いた。


「…俺、いつも逃げてた」


姉さんに泣いてるところを見られてちょっと恥ずかしかったけど、どうしても姉さんと向き合いたかった。

できれば中3のあのときに戻りたい。

戻っていろんなことをやり直したい。


「でも姉さん、姉さんのおかげで分かった。あゆみよる努力を忘れたらいけないんだってこと」


やり直したい、でもそんなことは無理なんだ。

無理なら、これから間違った道へ行かなければ良い。


今まで歩いてきた道は決して遠回りなんかじゃない。

俺がこの先前へ進んで行くのに必要な道だった。


「…うん。凛も蓮の悩み聞いてあげられなくてごめんね」
「そんなこと…」
「蓮、一緒に医者になろうね」


姉さんがスッと右手を差し出した。


医者


その言葉に今はこれほどにも重みを感じる。


けれど、もう逃げないと誓った。


「おう。絶対」


俺はその手をギュッと掴んだ。

































「れーん、期末の結果張り出されるみたいだぜー」


いつもの会話。
いつもの日常。


「ああ、良いや別に俺」
「そか?まぁどーせビリだしな」
「いや、今回はトップだな」
「は?」


今日帰ったら父さんと母さんに真っ先に期末の結果を見せよう。

そして一言言ってやるんだ。


今までいろいろ悪かった。
でも、父さんたちの言いなりになるんじゃなくて俺は俺なりに生きてみせる…って。


「ギャーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


廊下から数々の悲鳴が上がった。

ようやく張り出されたんだな。


まぁみんな驚くのも無理はない。


「蓮がトップーーーー!!!!つか1教科以外全部満点ーーーー!!!!!!」
「ありえねーーーーー!!!!!!!」


俺がこうして1位を取ることで、もしかしたらまた姉さんを傷つけてしまうかもしれない。

けど、それでも姉さんは笑ってくれるんだ。


教室でノウノウと漫画を読んでいる俺の周りにガヤガヤと人が集まる。

みんなしてなんか一斉に言うもんだから聞き取れない。


めんどくさいからなおも漫画を読み続けると、人ごみの中からひょっこり姉さんが姿を現した。


「姉さん」


俺は読んでいた漫画を机に置く。


「さっすが蓮。1つ惜しかったねぇ」
「次は全教科かな」
「凛も負けないように頑張るからね!」
「望むところだ」


今日の俺。

今の俺。


本当の俺。


これからは迷わず正々堂々と生きて行く。

もうなにも迷わない。




──父さんに愛されたかった──




たぶん、俺らの願いは一緒。

ずっとずっと同じだった。


同じ傷を持っているんなら、きっと姉さんと生きてゆける。


そう思えた17の初夏。


「さ、姉さん帰ろ」


とにかく



今夜が楽しみだ。





        fin














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