シスコン×2PDFで表示縦書き表示RDF


勢いに任せていっきに書きました。感想・評価頂けたら幸いです。
シスコン×2
作:たなべ


 ――――ピリリリッ

 携帯の着信音で目が覚めた。
「んーっ…」
 枕許に置いてある時計で時刻を確認し、絶句した。
 …朝の5時半? 誰だこんな時間に。
 しかも、今日は日曜日だぞ。

 ――――ピリリリッ

 …とりあえず電話に出るか、着信音で隣りの部屋で寝てる陽菜(はるな)を起こしたくないし。

 ピッ

「…はい。日下部(くさかべ)です。…どちら様でしょうか?」
『あ、おはよう、(たけし)。俺だけど』
 …誰かと思えば、親友の日野(ひの) 大夢(ひろむ)だった。
「…大夢か。こんな朝早くになんだ?」
『いや、ちょっと頼みがあってさ』
「頼み?」
『ああ…』
 こんな朝早くに電話してまで頼みたいこと? いったいなんだ?
『…朝飯作りに来てくんない?』
 …………………。
「…は?」
『いや、だからさ、家まで朝飯作りに来てって言ってんのさ』
 …………………。
「クタバレ」

 ピッ

 それだけ言って電話を切った。
 が、

 ――――ピリリリッ

 間髪入れずに再び電話が鳴った。
 仕方なくもう一度電話に出る。
「…ただいま、クソ野郎の電話に出ることは出来ません。ピーッという――」
『いやいやいや! それは苦しいって! さっきまで普通に話してたじゃん! っていうかさりげなく罵倒してる時点で隠す気ないだろ!?』
「…ちっ」
『舌打ちされた!? 地味に傷つくんだけど!?』
「舌打ちもするわ! こんな朝早くにそんなことの為に起こされたこっちの身にもなれ!! 切るぞ! もう掛けてくんなよ!」
『ちょ、ちょっと待て! 切るな! せめて理由を聞いてくれよ!』
 電話越しに焦った気配を感じとり、電話を切ろうとしていた指が止まる。
「ん? 何か理由が有るのか?」
『無かったらこんな時間に電話しねぇよ!』
 …それもそうか。
「分かった。理由を聞こう」
 ホッ…と安堵したような溜め息が電話越しに聞こえた。
 …理由も聞かずに電話切って、悪いことしたな…と反省。
『実はさ…』
「ああ」
(まな)がさ…』
「愛?」
 愛というのは、大夢の一つ下の義理の妹だ。
 そして、同時に大夢の恋人でもある。
 義理の妹なので、法律上は結婚できる訳だが、付き合うことになったと聞かされた時はかなり驚いた。
 まあ、考えてみれば兄妹にしては仲が良過ぎだったし、単に俺が鈍かっただけなのかもしれないが。
 閑話休題。
 その愛に何かあったんだろうか? だが、それと朝飯と何の関係が―――
『すんげー可愛いくてさ』
 …………………。
「は?」
『いや、愛はいつも可愛いけどな』
 コイツは何を言ってるんだろうか?
『今日の朝さ、何故か早く起きちゃってさ。それで、さっき愛の部屋にコッソリ忍び込んだんだけどさ』
「…あ、ああ」
 訳が分からないまま、相槌をうつ。(ちなみに、さっき言ったように愛は大夢の義理の妹なので、同じ家に住んでいる。)というか犯罪じゃないだろうか、それ。
『寝顔がすんげー可愛いんだよ!』
「…で?」
 …未だにコイツが何を言いたいのか分からない。それと朝飯に何の関係が?
『だからさ! その寝顔を出来るだけ長く見てたいんだよ! けどさ、今日の朝飯作る当番が愛なんだよ!』
「…ほう。で?」
 …訳が分からないまま話を聞いていると、何やら大夢のテンションが上がってきている。というか理由を話してたんじゃなかったのか? 理由になりそうなことはなにも――
『だからさ、剛が朝飯作りに来てくれたらさ、愛はずっと寝てられるし、俺はその間愛の寝顔を見てられる、って考えた訳さ』
 …そういえば、大夢と愛は校内でも有名なバカップルだったな…。
 …………………。
『という訳で朝飯作りに来て―――』
「ジゴクニオチロ」

 ピッ

 それだけ言ってまた電話を切った。
 が、

 ――――ピリリリッ

 また間髪入れずに再び電話が鳴った。
 仕方なくもう一度電話に出る。
「…ただいま、シスコン野郎の電話に出ることは出来ません。ピーッという――」
『それはもういい! っていうか、シスコンってなんだよ!』
「お前だ! バカヒロ!」
『ちっげぇよ! っていうか、それはむしろお前だろ! シスコン!』
「違う! 俺は断じてシスコンではない!」
『嘘吐け! 始業式さぼって陽菜ちゃんの入学式見に行ったくせに!』
 ちなみに、陽菜というのは今年の4月から小学生になった俺の可愛い妹だ。
「当たり前だ! 始業式なんて形式ばったもんより、一生に一度しかない妹の晴れ舞台を見に行ったほうが有意義に決まってんだろうがっ!」
『朝6時から小学校で場所取りしてたそうじゃねぇか! 陽菜ちゃんを撮影する為によ!』
「それも当たり前だ! 一番いい場所から陽菜が撮れなかったら、死んでも死にきれねぇっ!」
『学校早退して、授業参観にも行ったじゃねぇか!』
「当然だ! 俺の学校の授業よりも、陽菜の小学校での授業風景を見る方が大事に決まってんだろっ!!」
『充分過ぎる位にシスコンじゃねぇかっ!!』
 …シスコン? 俺が?
 …否、断じて否!
「違う! 俺以外の妹を持ってる人間が妹を大事にしなさ過ぎるだけだ!」
『お前はどんだけシスコンなんだ!?』
「妹が恋人のお前に言われたくねぇっ!」
『それとこれとは話が別だっ!』
「別じゃねぇだろ! シスコン!」
『別だ! シスコン!』
「別じゃねぇぇぇっ!」
『別だぁぁぁぁぁっ!』
「『…ぜはーっ…ぜはーっ…』」
 叫び続けたせいで息がきれた。それは大夢も同じらしく、暫くの間お互いに息を整えていた。
 そして、息が整ったところで、
「こんな朝早くにそんな理由で人を起こすんじゃねぇっ! シスコン!」
『俺にとっては重要過ぎる位に重要だ! シスコン!』
 第二ラウンド開始。
 この不毛なやりとりは、愛と陽菜が起きるまで続いた。


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