ぷろろーぐ「まどろみ」
何度やっても、人を殺すのは嫌な気分だ。
赤く染まったナイフを見ながら、思考停止気味に、ぼくはそんなことを考えた。
体中に飛び散った返り血。べとべとする。
気持ち悪い。早くお風呂にでも入りたかった。
手に持ったナイフ。……あれ、確かぼくは刃物恐怖症だったはずだけどな。
まあいいか。
足下を見た。
血溜まりのなかに人が倒れていた。
赤くて紅くて朱くて、緋かった。
さっきぼくが殺した人だ。
死んでいるんだろうか。
死んでいるに決まっている。ぼくが殺したのだから。
くす。
……少し、面白い。
殺したんだから、死んでいる、か。
当たり前だよ。
そんなことは名探偵コナンを読んでる小学生だって分かることさ。
おいおい、しっかりしろよ、ぼく?
どうでもいいけど。
ん?そういえば、ぼくは一体誰を殺したんだろうか。
うっかりと、今まで確認するのを忘れていた。
全く、僕としたことが不覚だった。 善は急げ。早速、確認しよう。
誰を殺したのか分かってないなんて、寝覚めが悪くて仕方ないからね。
……あは、今うまいこといった!うんうん。
何が?
まあいいか。
よっ、と……
うつ伏せに倒れていた死体をひっくり返す。
てこの原理を使えば簡単に返せる。
力点、支店、作用点♪
血溜まりの死体を動かしたら、当然のごとく血が跳ねる。
……血の赤って綺麗かも。
跳ねた血はぼくの顔にかかった。
べたべただなぁ。乾いちゃうと、血はあんまり綺麗じゃない。
それにしても、端から見たら怖いんだろうな、ぼく。
全身血まみれだもんね。
あははは。
気持ち悪い。
まあ、そんなことはどうでもいい。肝心の個人識別の方が先だ。
ぼくは顔を覗き込んだ。
少々の期待を込めて。
何がでるかな?
そこには、予想外の顔があった。
「……はは、まさか とはね!」
余りに予想外!まさに傑作!
ぼくはそんなことを考えた、思った、叫んだ。そのとき、死んでいる死体がぴくりと動いた。
まさか、そんなはずはないのだけれど。
だって、
彼はとうに死んでいるのだから。
朝の、日差し。カーテンの間から差し込んでくる。
雀の鳴き声がする
…………?
ぼくは、そこで目が覚めた。
「……あれ?」
夢でした。 |