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 ホラーは深夜読まないと怖くない
 
 
チャット
作:留龍隆


 僕はネットが大好きだ。かといって引きこもってパソコンばかりしてるわけではない。会社から送られてくる文書ファイルや会計のデータを整頓したり、書き加えたりするという仕事をちゃんとしている。早い話、自宅で仕事が出来て、チャットなどが趣味というだけ。結構まともな人間だ。
 元々友達の少ない僕はネットくらいしか話し相手がいない。妻にも一年前に逃げられた。後日届いた離婚届には「あんたとは住めない」などと僕を罵倒する一言がのっていて非常に腹が立った。勿論、すぐに印を押して区役所に提出した。
 
 1島田>;最近どう?
 
 彼、と言ってもネットなので男かを知ることは出来ないのだが、話し振りから推察するに男と思われる人。彼は「島田」というハンドルネームの僕の数少ない友人だ。僕の本名は「島田明弘」なので、名前が同じだという共通点から付き合いが始まった。
 
 2カレー>;とうとう結婚が決まりました!
 
 「カレー」は僕のハンドルネームだ。大好物をハンドルネームにしているあたり、まだまだ子供っぽいと自分でも思う。そして結婚、というのは、僕がネットで知り合った女、春子とのことだ。ネットで知り合ったにも関わらず彼女は意外と近所に住んでいて、僕の住むマンションから歩いて五分のところにあるコンビニに勤めていた。「島田」はよく相談にのってくれ、「自分の良い所をアピールするといい」など、色々なアドバイスをくれた。
 
 3島田>:良かったなー!おめでとう!決め手はなんだった?
 
 4カレー>;ま、ごく普通に「結婚してくれ」と・・・・・・
 
 5島田>;キャンユーセレブレートを歌ってやりてーよ。
 
 6カレー>;ハハっ、ありがとよ。
 
 7島田>;でも前に奥さんに逃げられてたろ?大丈夫なのか?
 
 8カレー>;あれ?おまえに妻がいなくなったこと言ってたっけ?
 
 9島田>;今カレーさん、あごに手を当ててるだろ?
 
 10カレー>;なっ!!なんでわかった!?ひょっとして妻のこと知ってたのも・・・・・
        エスパーか!!w
 
 11島田>;アハハ、人間は謎に思ったときとか感心したとき、大抵あごに手を当てたりと
       かうーん、と首捻ったりするだろ?どっちかだと思ったからさ
 
 12カレー>;なんだびっくりした・・・・・・でもさ、正直また妻に逃げられたらと思う
        と嫌だよ。だから今住んでるこのマンションも引っ越して、一戸建てで最初
        からやり直すのだ!!
 
 13島田>;へー、そう。そういえばカレーさん、奥さんが逃げたのって俺と話し始めてか
       らだよね。
 
 14カレー>;ああ。おまえ、疫病神だなー。
 
 15島田>;うるせえよ
 
 16カレー>;アハハ。そういえばあの頃さ、まだ僕は会社勤めだったんだよ。それでその
        頃僕にしつこくまとわり付いてくる奴がいてさー!ストーカーだよアレ
 
 17島田>;それが浮気だと思われて奥さんいなくなったんじゃないの?
 
 18カレー>;それはない。だって僕、あのストーカーのことウザイ、と思ってたもんw
 
 19島田>;ひどっ・・・・・・ってかさ、疫病神そいつだろ
 
 20カレー>:確かに・・・・・・慰謝料よこせー¥
 
 21島田>;はははっ
 
 そこで僕は一旦チャットを中断して、冷蔵庫にビールを取りに行った。ついでにツマミや菓子を探していると五分ほど時間が過ぎ、僕は慌ててパソコンの前に戻った。
 
 22島田>:どしたの?
 
 23カレー>;何が?
 
 24島田>;いや、書き込みしばらく無かったから
 
 25カレー>:ビールとツマミ取りに行ってた
 
 26島田>;ふーん。で、これから引っ越すって本当?
 
 27カレー>;ん?ああ、そうだよ。でも島田とはネットで会うから関係ないよな。それよ
        りさ、最近コンビニの帰りとかにつけられてる気がするんだよ・・・・・・
        ま、だから引っ越すんだけども。
 
 28島田>;ふーん。怖いねェ。

 29カレー>;ホントこええよ・・・・・・もしかしたら、未だにストーカーにつけられて
        るのかも!同僚のアイツか?!嫌だ―――――!!
 
 30島田>;どんな同僚だったんだよ。そんなにも付いてくるって。
 
 31カレー>;んー、やばそうな奴ではあった。いつも僕を一心に見つめてるっていうか、
        生暖かい目で見てくるんだよ。それもさ、なんか僕にだけわかるような態度
        で接して来るんだよ。お茶をいれてきたときに僕のところに留まる時間が長
        かったりとか、些細なことで接する時間を延ばそうとしてくるんだ。
 
 32島田>;怖いな・・・・・・でもそれ、気持ちを口に出したりしないんだろ?奥ゆかし
       い感じだな
 
 33カレー>;奥ゆかしいとかじゃないよあれは。なんかへばりついてくるような感じで、
        ガムみたいなもんかな。謙虚に引いてるんじゃなくて、引いてると見せかけ
        てる自分に気づいてほしい、みたいな!嫌だよあれー。
 
 34島田>;ふーん で ストーカーの奴はどうなの
 
 35カレー>;ストーカーか・・・・・・ちょい待ち、今日記取ってくるから
 
 僕はパソコンから離れると、ベッドの脇においてある日記帳に手をかけた。殆ど家から一歩も出ない生活をしているにも関わらず、これだけは常に書いていた。ぱらぱらとページをめくるとストーカーされたことについても細かく書いてあり、僕はまたチャットのネタが出来たと思いキーボードを叩いた。
 
 36カレー>;これこれ。春子に会いに行ったとき、つまりコンビニに行った帰りなんだけ
        どね。なんか電柱の陰に黒いコート着た髪の長い女が立ってるんだよ。で、
        僕が嫌だなー、と思って横通り過ぎると、ずっと付いてくるんだ。撒こうと
        して走るとすぐに振り切れるんだけど、安心すると次の曲がり角で出てくる
 
 37島田>;へー で どうしたの
 
 38カレー>;春子がその後うちに寄る予定だったからさ、マンションのオートロックのと
        ころまで走って逃げた。そしたらさ、オートロックで通れないガラスを、が
        んがんがんがん叩いてるんだよ!髪振り乱して。あー怖い!あれ、ほんとに
        同僚のアイツなのかな・・・・・・
 
 39島田>;ふーん で 「春子」さんはどうしたの
 
 40カレー>;春子はまあそのあと裏口から通したよ。今日も来る予定なんだけど・・・・
        ま、あのうざいストーカーに会わないといいんだけどな。っていうか島田、
        「」で春子を括るなよ。あと句読点つけろ!
 
 41島田>;うるせえよ
 
 42カレー>;なんだよ急に・・・・・・
 
 43島田>;うるせえって言ってんだよゴミが!!!ゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミ
       がゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴ
       ミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミがゴミが!!!!!!!!!!!!
 
 ものすごいタイピングの速さだ。一瞬にして並んだ僕への罵倒。さすがの僕でもぶち切れて、「島田」に向かって文句をぶちまけようとした。しかしパソコンはなぜか入力が出来ない。キーボードを打っても言葉が表示されない。
 
 44島田>;ちょっと細工させてもらったから、もうキーボードは使えねーよバーカ!!!
       パソコンばっかやってる割には全然詳しくないんだな島田!!!!!!!!!
       少し話をしてやろうか。おまえの離婚について。
       離婚の理由、おまえはそれをパソコンのやりすぎとか思ってるんだろうがな、
       実は違う。そのストーカーに散々嫌がらせされて嫌になったのさ!バカだろお
       まえ。バーカ!!!!!
 
 とんでもない奴だ。しかも今の口ぶりではこいつがストーカーの正体らしい。僕は思わず苛立ち、「男のくせに髪伸ばしてたのかよ島田の奴、悪趣味な」と呟いた。するとそれを聞いていたかのように、画面に言葉が並んだ。
 
 45島田>;ハッ、浅はかな奴!!!外面そとづらだけ見て理解した気になってんじゃ
       ねえよボケ!!!悪趣味?バーカ。「同僚」の気持ちを踏みにじってる奴の方
       がよっぽど悪趣味だ!!!!!!だから奴はストーカーになったのさ
 
 なんてことだ!!ストーカーと同僚は同一人物、そして・・・・・・島田も・・・・・・
 
 46島田>;島田、って名前を使ったのはおまえに親しみ易くするため。それともう一つ、
      「俺」がこの名前を使ったのには理由がある。それはな、「俺がおまえと同じ家
       に住んでる」からだよ!!!!!!
 
 僕は叫んだ。奴が、奴がこの家の中に居る!!そう思っただけで鳥肌が立ち、周りが歪んで見えそうなほどにめまいがした。すると、部屋の天井、ダクトのところがガコ、と開き、同僚のストーカーの「島田」がスト、と降り立った。がりがりにやせた体、振り乱す黒い髪。その間から覗く瞳は血走りつつもらんらんとして、手にしたナイフ以上に輝いていた。
 「『俺』がなんでおまえの恋愛お悩み相談に乗ってたかって・・・・・・?幸せの、絶頂を壊してやるためだよっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
 『島田』は僕の胸にナイフを突き立てた。最後に僕が見たのは、『島田』だったのか、『ストーカー』だったのか、『同僚』だったのか・・・・・・・・・・・・
 
  






 身近な恐怖、について書きたかったんですが・・・・・・なんか途中の豹変をもうちょいのんびり書いたほうが良かった気がします。ご意見、ご感想を送っていただけると幸いです。













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