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第二話
「ねえ、あきちゃん。そろそろ観ない?」
 私とかなはご飯を食べて、かなの部屋に戻ってくつろいでいた。
「そうだね、んじゃ入れ替えるよ」
「お願い」
 そう言って、私はかなの部屋にあるDVDデッキから録画用のDVDを取り出し、借りてきたDVDを入れ替えた。

 TVの画面をDVDに切り替え、再生をスタートする。

 他の映画のCMが流れる。
 CMを見ながら、かながこの映画はどこが見所だとか教えてくれたりした。
 そしてやっとCMが終わり本編再生が始まった。


 このとき私は、かながお勧めする伊勢君の映画の展開に期待しているだけだった。
 ありきたりな物語をどんな心躍る映画に撮ってあるのか、それが楽しみだった。
 リメイクの元になった映画を昔、父と一緒に見た記憶がある。
 楽しみなだけだった。
 ただ、それだけだった。
 それが、あんなことになるなど思わなかった。



 本編が再生されている。
 伊勢君が演じるのは現代の高校三年生。最後の部活動を終え、帰宅途中の道に知らない老人が苦しそうに蹲っているのを好青年が助けるという場面。
「伊勢君格好いいでしょー。ね! あきちゃんもそう思わない?」
 かなはお気に入りの犬のぬいぐるみをクッション代わりに抱きしめてはしゃいでいた。

「うん、まあ確かに格好いいかな。でも、かなはしゃぎすぎ」
「いいじゃない、映画館では静かに観たんだから。家で観る時くらい」

 ちょっと拗ねたように言う、かな。
 伊勢君が格好いいとかよりは、私はかなのが可愛いとか思ってたりした。

 映画の場面は進み、伊勢君は助けた老人からお礼として「魔法の本」をもらっていた。
「ねえ、かなは伊勢君のどこらへんが好きなの?」
「全部!」
 即答されてしまった。


「あれ?」
「おや……かな、こんな場面なの?」
 二人して困惑してしまった。
 伊勢君が老人から貰った「魔法の本」を開く場面になって、画面が真っ暗になったからだ。

「ううん。この後ね、本を開いて本に書かれてる文字を読む場面があるんだけど……」
 かなはそう言うが、画面は以前真っ暗だった。

「TV……故障しちゃったのかな? でも、音も聞こえないし……」
 一年前に私の家にあったブラウン管のTVが壊れたとき、画面は真っ暗だけど音だけは流れてたから、私はそう疑問を口に出した。もっとも、かなの部屋のTVは液晶だったけど。

「え? あきちゃん聞こえないの?」
「うん? TVから何か音してるの?私には聞こえないけど…」

 かなは、私とTVを見比べながら言った。
「うん……。『開いた』とか『見つけた』とか同じような言葉が繰り返して聞こえるんだけど……」

「音量……上げて……も、聞こえないよ?」
 私はそう言いながら、TVのリモコンで音量を上げた。

 だんだんかなの顔色が悪くなっていく。
「あきちゃん……これって……呪いのビデオとかかな……?」
「そんなの存在しないって。早送りしても映らないようなら、明日レンタルショップに抗議しに行こうよ? ね!」
「う、うん。そうだね」


 ああ、よかった。
 かなが少しでも笑ってくれて。
 ってか、呪いとかありえないから。
 そんな目に見えないものなど、信じないからね。
 無宗教、無神論者だ、私は!


 かなが少し笑ってくれたとほっとしたのもつかの間、いきなり聞こえてきた。
 私の耳にもはっきりと。


『道は開かれた。神銀しんぎんの乙女よ。我が世界へ!』


「「 !!? 」」
 二人して、画面を睨みつけるように見た。

 真っ暗なTV画面からいきなり、スポットライトのような強烈な光が放たれた。

 瞼の裏にまで差し込んでくる光。
 映画に使われる光とかにしては、あまりに眩しい。


 すべてが真っ白に。
 光に埋め尽くされる。






……ゃん……あきちゃん……あきちゃん!」
 ああ、かなが呼んでる。起きないと。
「ぅ……んー……ねむぃ……」
「あきちゃん! 起きて! お願い! あきちゃん!!」

 あまりに悲痛な、初めて聞くようなかなの呼び声に意識が覚醒する。
 そして唖然とした。

「……!?」

 見覚えなど一切ない。
 こんな場所に来た記憶もない。
 居たとしても、かなの部屋だ。
 まかり間違えてもこんな、場所じゃない。

 私とかなが居る場所は小高い丘の、漫画などに出てきそうな石で作られた祭壇の上だった。


 かなの部屋なんかじゃない。
 石造りの祭壇の上。


 ああ、かながなんであんなに呼んでいたのかわかった。
 そりゃ、あんな痛々しい声も出てしまうさ。
 目が覚めたらこんな知らない場所じゃ。
 日本っぽくない場所じゃ。
 かなの部屋じゃない場所じゃ。


 このとき私は周りの景色にばかり吃驚していた。
 気がついてから、かなを見ていなかった。
 だから、驚いた。




 かなを見て、私は驚くしかなかった。
二話目です。
勢いです。がんばっていきます。


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