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ロック陰陽師 作者:鑑祐樹
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第8話 オカメインコ

 その間も彼女は道路の内側を走っている。
 俺と立花が乗った車はとうに彼女を追い越している。

 だから、俺はバックミラーで小さくなった彼女の姿を食い入るように見た。

 ――女の背後には特にだれもいない。何もない。

 ただ、自転車で通った道路が広がるだけだ。電信柱や年季の入った小さな工場がチラリとサイドミラーに映った。

 まさか……。

 立花のいう事だ。オカルトの話だろうと瞬時に思った。また、生霊か? ゴクリと唾を飲み込むと、立花の顔を覗き込む。

「オカメインコだよ」
「はっ?」

「あの女性の後ろに、追いかけるようにオカメインコが必死に飛びながら付いてきている。……君は波長の低いモノは見えるのに、そういうのは見えないようだね」

 赤信号のランプと共に、俺らを乗せたワンボックスカーが停止する。

 車の窓から気持ちの良い風が止まり、代わりにスーツ姿の中年のおじさんがスマホを耳に押し付けながら、横断歩道を小走りで横切る。気が付いたら、立花が俺の顔を学校の先生みたいな顔付きで見てた。

 確かに、俺には彼女の後ろに付いてきているだろうオカメインコは見えなかった。

 波長の低いモノっていうのは何だろう? もしかして、この間のあの靄の霊の事か……。

 たぶん、そうだろうと確信すると同時に、嫌な気分になった。要するに、俺はタチの悪いものしか見えてねぇのかよ。

 そう思いながらも、今は気になった事を聞くことにした。
「そのオカメインコって……亡くなってるんすか? もしかして、天国行けてねぇとか……」

「ああ、残念ながら亡くなっているね。でも、ちゃんと天国に行けているから、安心するといい――結構いるんだよ。亡くなった後でも、時々飼い主の様子を見にきたり、遊びに来たりしている子がね。鳥でも犬でも猫でも、飼い主の事が好きな子は来ているよ」

「へぇ、そうなんすか!」

 ああ、良かった。
 流石に、天国行けてねぇとか気分が悪いし嫌だからな。ペットが自分の事を好きだから見に来ているって聞いたら、赤いコートの彼女もさぞや喜ぶんだろうなって思う。
 来ている所を見ると、彼女もオカメインコを可愛がっていたのだろう。彼女はこれを知らない訳だけど、これが事実だとしたら――。

 そう考えたら気分が少し晴れてきた。立花は変わらず、正面を見て運転している。ただ、一瞬だけ眼を細めてから口を開いた。

「結局は心なんだよ。良いも悪いも、つまり感情だ。呪いも強い感情だしね。そのオカメインコも、誰かに強要されたんじゃなく、自分の気持ちで来ている。彼女が好きなんだろうね。ただ、顔が見たい時や、護ってあげたいとか――まぁ色々あると思うけど。大神君もそういう気持ちは分かるだろう?」

 俺は立花の言葉に、(あご)を引いて小さく二回頷いた。

 それは、分かる。

 俺、もしも今死んだら……福子の所に行く。心配だ。餌は誰がやるんだよ。
 確かに護ってやりたい。あと――兄貴の所にも行く。

 バンドのメンバーや、友達も見に行くな。両親は……どうかな……。

 立花がハンドルを軽く左に回す。
 車は、輪舞曲でも踊るようにスムーズにターンして左折した。

「でも、天国行けてるとか行けてねぇとか、何ですぐに分かるんすか?」

「それは、見ればすぐに分かるからだよ。……全然違うからね」

 全然違うのか……どう考えても、良い想像なんて出来ねぇな。
 気分が滅入りそうだから、聞かない事にした。

 そうこうしている内に、車は見覚えがある風景を颯爽(さっそう)と走り、茶色一面の田んぼを横切る。

「帰ったら大神君の部屋を案内しないとね。あと、家に住んでいる家族を紹介しよう。私の父と姪っ子……それと、うちでホームスティをしている留学生がいるんだ。家政婦のお婆ちゃんは住み込みじゃないけど。あと犬を飼っているよ。みんな紹介しないとな」

 立花はそういうと、薄っすらと微笑んだ。

「ああ、父と犬は今は外出しているけどね。数日で帰ってくるよ」

 すでに、二階建ての洋館とそれに寄り添う木々が見えて来た。
 和と洋の別の建物がくっついて一体になっている、あの独特の雰囲気を持った古民家があった。
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