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ロック陰陽師 作者:鑑祐樹
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第24話 はなし

「僕、この人形の持ち主……旭さんのお姉さん、知ってるんですよ」
 俺の疑問に答えるべく、飛龍フェイロンはあのゴージャスなベッドに腰を下ろして話しはじめた。仕方が無いので、俺もソファに座る。部屋は相変わらず暖かい。

「彼女、好きな人が出来るたびに、人形を一体用意するんですが……」
「えっ……! まさか、悪い陰陽師とか?」

 立花の姉は、呪術でもやっていたのか?

「いえ、そういうのじゃなくて。僕も同じ事を聞いたんですけどね」
 飛龍フェイロンは、スマホをポケットにしまいながら続ける。
「子供の頃、好きな人が出来た時に人形を買って、話しかけていたのが始まりだそうです」
「それが何であんなことに……?」

 俺は真ん中あたりにある、アニメのフィギュアを指差した。

「ああ、似ているキャラクターを買ってきたそうですよ」
「じゃあ、あの八体目は?」
「あれは、この間離婚した旦那さんですね。急に別れたから、途中で植毛をやめてしまったんでしょう」

 植毛って……ああ、あの髪の毛のことか。つい、あの手縫い人形に目をやってしまう。露出した頭皮が妙に生々しく感じたのは、生きたモデルがいるせいだろうか。

「腕は? もぎとったのか」
「あれも作り途中でしょう。完璧主義の彼女が、あんな状態で放置するなんて――それだけ、今回の離婚は色々あったみたいですね……」

 ここまで話しておいて、急に飛龍フェイロンは言いにくそうに口をつぐんだ。

雪華せつかちゃんのこともあるし」
「え? 雪華って――」

 立花の妹だよな、確か。何か色々事情があるんだろうか。気になるけど、こういのって聞いていいんだろうか。飛龍フェイロンの顔色を伺った。

「ここにいた人、雪華ちゃんの母親だったから」
「え? ……立花さんの妹じゃねぇの?」

 姉の子供だったら、姪っ子じゃね? 俺の疑問に、飛龍フェイロンは淡々と答える。

「複雑なんですけど、雪華ちゃんって、老師――旭さんのお父さんの養子になってるんですよね」
 一瞬、言っている意味が分からなくて口をつぐむが――頭の隅で、『捨てられた』という言葉が浮かんできた。

「自分の子供、捨てたのか……」

「正確には、彼女の子供じゃなくて、別れた旦那さんの連れ子なんですけど。旦那さんが酷い人だったから、可哀想で引き取ってきたそうです」
「……それなのに捨てるのか?」
「好きな人が出来たとか言って、出ていっちゃいました。だから、ほら」
 飛龍フェイロンは、化粧台を指差した。

「そんな彼女の、恋愛に対する執着をあそこから感じて、きっと旭さんは封印したんですよ」

 そんな話を聞いたら、余計に嫌になってくる、この部屋。
 そう思いながら、俺は箪笥の上の『八体目の手縫い人形』を見上げる。

「あれも途中放置か……せめて処分していけよ……」
「僕も、昔の恋愛を取っておくのはいかがなものかと言ったのですが」

 飛龍フェイロンは、片手で薬用酒の瓶を器用に回しながらこう言った。

「彼女のポリシーとして、思い出は形にして取っておくんだそうです」
「え――俺、この人形捨てたいんだけど……こんなもんある部屋でなんか眠れねぇよ……」
 化粧台も呪われてるし。

「この人形は平気ですよ、彼女の過去の産物ですから。もう終わってるんですよ」
 飛龍フェイロンは、あらためて化粧台の方を見た。

「ただ、女性の美の執念が宿ってるんですよね。彼女の家具で問題がある物は、今度休みの日に整理するって言ってたから――安心していいよ、大神双牙君」
 美の執念って、今日のロミといい……。
「変な女ばっかだよ、もう女が怖ぇよ俺……」
 俺がそう呟くと、飛龍は俺の目を真っ直ぐ見据える。

「いやいや、男もそう負けてませんよ」
「え?」
「僕の通っている大学の女性の話なんだけどね――」
 彼は、真面目な顔でこんな話を始めた。



 体調が悪い――。

 まずは、そんな所からだったらしいです。彼女、ここでは名前を伏せてAさんと呼びますが……大学に通い始めて、一年を過ぎた頃。
 身体のだるさや頭痛、吐き気に襲われ、病院に通いはじめました。けど、症状が一向によくならない。もちろん、病院も転々と変えたらしいですが、原因不明だったそうです。

 そうしている内に、付き合い始めた彼氏が交通事故に合い入院。Aさんもちょっとしたはずみで階段から落ちてしまい、怪我を負ってしまったそうです。

 とにかく不運が続く。
 おかしい――。
 なぜ、こんなに不運が続くのか……。
 理由はなんなのか?
 その日、Aさんは自分のアパートで友人に電話で相談したそうです。

 その晩――。
 Aさんがアパートの部屋で寝ていると。

 ごそごそ。
 こそこそ。
 どこからか、音がする。

 目をさましたAさんは、寝ぼけた頭をなんとか働かせて音の元を探そうと、耳を澄ます。

 ごそごそ。
 こそこそ。
 これは――人の話し声だ。

 とても、小さな囁き声だったけど、確かにそれは人の声だったそうです。Aさんは、慌ててベットから上半身をおこし、音の方向を確認しました。

 箪笥のほう……?
 そう思った直後。
 Aさんの背後、それも左耳に生暖かく、じめりとした人の吐息がかかって――。
 耳元で、誰かの声がしました。

 うねるような低音は、小声で何を言っているの分からなかったけれど、男の声だったそうです。
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