挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ロック陰陽師 作者:鑑祐樹
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

23/26

第23話 人形部屋

 その時、俺の背後から、ぼーんという柱時計の高い音がした。

「こんなとこ居られるか!」
 ストレス値が跳ね上がり、俺はつい叫んだ。
 その間も、柱時計の振動は部屋中に響き渡り、幾重にも重なった音が微妙にずれて聞こえ、神経を逆なでする。胸がざわつき気分が悪い。

 扉の音を立てて、俺は部屋を飛び出した。
 ――しかし。

「福子!」

 部屋に福子を置いて来てしまった事に気がつき、慌てて部屋に戻る。水槽を見ると静かなもので、俺がかえって福子の安寧を邪魔してるような気がした。
 冷静になろうとして時計を見ると、針は――午後二時を指していた。
 世間でいう丑三つ時というやつだ。幽霊とか妖怪とかが、活発になる時間帯。
 そんな余計な事を考えたせいで、水の入ったコップをひっくり返したように、恐怖感が溢れ出す。

 気がつけば、薄暗い廊下に飛び出していた。

 山城の時は、彼が怯えていたせいか恐怖感を押し殺す事が出来たけど、もう限界かもしれない。
 時間帯的に、とても立花の所に行けないし――。
「だからって、あんな人形部屋なんかで寝れるかよ……」
 ロミだわ腕がちぎれた手縫い人形だわ、胃が痛くなってきた。
「寒い……眠い……なんでこんな事に……」
 部屋と廊下を行ったり来たり、たまに福子を見たり。どれくらい経っただろう。

「動くな」

 廊下の奥から、男の声が響き渡る。物静かに聞こえるが、研ぎ澄まされた鋭さを感じた。俺は反射的に動きを封じられ、その場で固まるしかなかった。
 足音が気配が近づく。
 抵抗しようと、ゆっくりと後ろを振り返る。ちゃぽん、と水の音がした。

「あれ……なんだ、大神双牙君? 何してるの?」

 そこには、あの留学生――飛龍フェイロンが立っていた。
 さっきまでの威圧感は消えて、少し間抜けとも取れるような表情をする。
「あっ……いや、それが……うわ」
 彼の手には、茶色い大きめの酒瓶さかびんが握られていた。
「酒瓶……」
「え? ああ、これ。薬用酒ですよ」
 飛龍フェイロンは、爽やかに答える。健康に気を使っているんだろうか。
「物音がするから、泥棒かと思ったよ」
 彼が話している間も、俺は手元の瓶が気になって仕方が無い。目線に気付いた飛龍フェイロンは、何故か照れたようにこう言った。
「俺がいるのにいい度胸だと思って――」
「ああ……」

 この飛龍フェイロンという留学生は、体格が良い。筋肉質で、なにか運動をしているような――それこそ、武術でもやっていそうだ。
「泥棒のほうが逃げ出しそうだ」
 俺の言葉に照れたのか、空いている方の手で頭をかいている。
「……で、大神双牙君はこんな時間になにをしてるんですか?」
「そうだ、それが――」
 思い出して、慌てて事情を説明した。鏡に張られたお札や八体の人形のことを。
「ああ、大神双牙君は怖いの?」
「怖くねぇよ!」
 カッとなってそう叫ぶと、飛龍フェイロンはニヤついた顔で瓶を持ったまま、モダン部屋のドアを開けた。
「じゃあ行こうか」

 え? 何で行くんだよ。ああ、そういえば飛龍フェイロンは陰陽師の弟子だったな。立花みたいに解決してくれるのかな。
「弟子なのに、すげぇな。もう除霊とか出来るんだ」
「え? 出来ませんよ」
「は?」

 俺が目を丸くしていると、彼はずかずかと部屋の中に入っていった。
「ちょっと待てよ、今なんて――」
 仕方が無いので、追いかけるようにモダン部屋に入る。
 飛龍フェイロンは、まず福子のいる水槽を確認すると、次に化粧台を見た。そうしてゆっくりとした動作で箪笥の上を仰ぎ見る。八体の人形を見ると、ジャージのポケットからスマホを取り出して、人形に向けた。カシャ、という軽快な機械音が、モーター音の中で響き渡る。

「これは酷い」

 言いながら、もう一度、スマホのボタンを押している。
「何で写真撮ってんだよ?」
「いや、僕は幽霊見えないから、怪しい奴は写真に撮ってるんです」

 幽霊……見えない……?

 そして、八体目の人形――あの作りかけの人形を見ながら、こう呟いた。
「やっぱり離婚したから……」
「何の話だよ!」
 たまらなくなって、俺は叫んだ。
cont_access.php?citi_cont_id=276060669&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ