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ロック陰陽師 作者:鑑祐樹
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第21話 帰路

「……メールは全部消しておきました。これで少しは縁も弱まります。あなたも宣言したことだしね」

 立花の声に、俺はハッとした。パソコンを指さしながら、こう続ける。
「どうしますか? 除霊して売るか、捨てるかした方が良いですよ」

「……捨てます」

 言われて、頷いている。消え入りそうな声で、立花にこう訊いた。
「物理的、精神的に完全に彼女と縁を切っていれば、大丈夫だと思います。残っている瘴気を浄化しますし、念の為に部屋に結界を張っておきますね。何かあったら、連絡を下さい」

「ロミちゃん……彼女は、消滅したんでしょうか」
「引いて行ってしまっただけです。また誰かを狙ってるかもしれない」
「彼女、自分は一途だって言ってたんですけど……」
 あんなことがあって一途とか言われても……。俺がそう思っていると、立花が眉を下げてこんなことを言う。

「……彼女が、初恋の人に似ていると言っていましたね。きっと、幻覚を見せられていたんですよ。演技でもなんでもね、あなたの好みの姿になっていたんでしょう。良くあることなんですよ」

「そう――そう、ですよね……」
「これはネットの世界だけじゃなくて、現実でも同じです。人間性を見抜かないといけない」

 山城は頷くと、無理にだろうけれど、笑ってみせた。
「お金、口座に振り込んでおきますね。ありがとうございました、立花さん。あと、君もね」
「俺、何もしてねーけど」
「お疲れ様、大神君。色々と助かったよ」
 言いながら、立花が俺の肩を叩いた。



「山城さん、大丈夫すかね?」
 帰りの車の中で、俺は気になっていたことを聞いた。

「ああ、彼は問題ないだろう。彼女は他に縁が繋がった人の所に行ったのだろう。最後に、彼女の指に他の人の赤い糸が見えたから……」

「えっ……。それ、やばくないですか」
 さっきの『一途』って一体……。

「ゲームで付き合っていた人が、一人じゃなかったんだろうね。私とやり合うなら、他の人がいるからイイヤと思ったのかもしれない」

 車はラーメン屋の前を通り過ぎていく。
「また、山城さんの時と同じように、やり取りしてたPCに憑いて、そこから彼女が現れるかもね。そしらぬふりして、横断歩道の信号待ちや、デパートの中とか。まぁ、色々な形でね」

 時計を見ると、もう十時を過ぎていた。カーショップはすでに閉まり、まだ営業している回転寿司屋の前を通る。のぼり旗には、『まぐろフェア』の文字が見え、食欲をそそる。しかしもうじき閉まるだろうから、寂しげに見送った。

「その……他の、赤い糸がついてる人って、大丈夫なんですか?」

 明るい看板が目に眩しい。こってり系のラーメン屋だ。
「ロミに会った時に、気持ちを持っていかれなければ問題ない。山城さんも言っていただろう?
かわいい――って。心の隙間というか、自分から受け入れてしまってたんだよ。振り返ると消えていたり、痩せてきたり。どう考えても異常だったのに」

 おかしいと思う所があったのに、受け入れた。
 そこが、問題だったね。

 立花の言葉に、さっきの山城を思い出す。何時の間にか、異常が普通になってしまったのかもしれない。

「縁って怖いスね。ネトゲやらなくて良かった」
「ふふ、ゲームでも現実でも同じ事だ。性格、本質を見ないとね。まぁ、現実でもゲームでも恋愛ごとは強いみたいだね。息抜きでやってもいいけど、付き合う相手は選んだほうが良い」

 またラーメン屋の前を通った。この辺りはラーメン激戦区なんだな。
 空腹のせいか、流れる風景の中に食い物屋ばかり目で追ってしまう。

 腹減ったよ……。

「縁は悪い事ばかりじゃない。大神くん――私と君が出会ったのも何かの縁だよ。縁は選ばないとね」

 そう話している間に、車がすーっとファミリーレストランの駐車場へ入っていった。

「あっ!」

「おごってあげるよ。ずっと空腹だったのに、悪かったね」
「やったあ! 師匠! あっ、先生のほうが好みですか?」

 俺は喜びを全身で表した。本当に嬉しい。ショウガ飴にやられた胃腸も喜んでいることだろう。
「君って現金だね」
 立花は、明るい声で笑った。
プロローグと山城編は、今回で終了です。
お読み下さってありがとうございました!
投票やブクマも本当に嬉しかったです!
また続編ができましたら、宜しくお願いします。
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