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ロック陰陽師 作者:鑑祐樹
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第19話 ロミちゃん

「二人とも見て下さい! 赤い糸が消えたんです。お札のおかげでしょうか」

 山城は嬉しそうに、立花に貰った札を掲げている。俺も一瞬そうなのかと思ったが、立花は首を振った。
「いえ――その札は護符だから、縁そのものが切れたわけじゃありません。別の理由で消えたんだと思います」

「そうなんですか……」
 いくぶんガッカリしたような声で、山城がドアのカギを差し込んだ。焦っていたのか震えていたのか、少し時間がかかったが、しばらくすると恐る恐るドアが開かれる。

「――えっ……?」

 部屋の灯りが消えていた。

 さっきまで、窓から明かりが漏れていたはずなのに――真っ暗になっていた。
「なんで……!」
 慌てて電気を点けるが、山城は困惑した様子で室内を見廻した。
 確かに誰かが潜んでいるような気がして、俺もつい同じ動きをしてしまう。が、もちろん誰もいなかった。

 部屋の中は小綺麗で、あまり物がなかった。洗濯物が、部屋の真ん中で小さな山を作っているくらいだ。
「山城さん、確認したいことがあります。パソコンを起動して下さい」
 立花の声にそちらを見ると、俺の横を通り過ぎて部屋の奥へと向かう。
 ベッドの脇の机の上に、少し大きめのパソコンが置いてあった。

「メールです。なぜ、スマホには送ってこないで、パソコンだけなのか……山城さん。必ずパソコンなんですよね? 彼女からのメールは」
「は、はい……そうです」
 あんなことがあったせいか、山城は心底厭そうにパソコンを起動した。
 起動音と共に、ブンッという変な音がして――更に山城がうめき声をあげた。

「うっ……な、なん……うわぁ!」

 山城が、自分の左手を見ながら悲鳴を上げた。
 左手の薬指に赤い輪が出来ていた。まるで、指輪みたいにぐるりと回っている。
「なんで……こんなっ……」
 ついに山城は泣き出してしまった。
 さっきの赤い糸といい、左手の薬指に赤い輪といい――これは、まるで……。

「……なんか、それ……結婚指輪みたいじゃねえ?」

「だから結婚なんてしてませんよ……」
 もう山城は、痛さと怖さで大人しくなっている。疲れたのかもしれない。
「本当ですか? ふざけて、とか――遊びとかの口約束でも縁はできますよ」
 立花が、パソコンと山城を見比べながらそう尋ねる。
「遊びでそんな約束なんか……ん? 遊び……?」
 山城は、何かに気が付いたように考え込むと、ぼそりと呟いた。
「ゲーム……で、結婚したことが……ありますが」

「えっ!」

 俺はつい大声を出してしまった。
「何かのキャラクターと結婚したら呪われんの!?」
「いや、そういうのじゃなくて、オンラインゲームの中で知り合った人となんですが……」
「ゲームの中に人間がいるの?」
 立花が驚いたような声を出した。
「ああ、ネット上で色んな人と遊べるゲームがあるんスよ」
 俺は聞きかじりの知識で説明した。高校の時の友達が誘ってきたことがあったから、それくらいは分かる。やんなかったけど。

「ロミちゃんって言うんですけど……」
 山城の話によると、ソーシャルゲームでロミというキャラと結婚したことがあって――2、3ヶ月くらい前から、ばったりとこなくなってしまったとの事だった。

 話をしている間、山城の血の指輪から血が滴り落ちて来て、何度か話を中断させられた。苦しそうだったが、もうさすがに話すのを止めようとはしなかった。

「確かに、ゲームの中の『ロミ』というキャラクターは、横断歩道で出会った女性に似ていました。純白の白いワンピースとか着てそうなイメージで……プリーストでしたし」
 プリーストの意味が分からなかったが、話の腰を折ってしまいそうなので黙っていた。多分立花も同じだろう、じっと話を聞いている。

「実は、ロミちゃんは初恋の人と雰囲気とか似ていたんですよ。だから、好きになったっていうか……」

「初恋の人って……ゲームの中でしか会ってないのに?」
「いや、イメージっていうか、黒髪でセミロングで、白っぽいローブ? をいつも着てて」
「ローブ?」
 つい声を出してしまった。
「ロングスカートっていうか、ワンピースっていうか――」

 そこまで言って、山城はうつむいた。手が痛むのかと思ったのだが、急に怖がっているような声音から、寂しそうな雰囲気に変わった。
「言われてみれば、横断歩道の……彼女の、あの部屋で微笑んでた、キレイな姿は、どこか初恋の人に似ていました……」

 そこまで言うと、黙ってしまった。
 あの茶黒の女は、白いワンピースに、黒髪のセミロングだった。

 じゃあ、あいつ「ロミ」なのか?

 そう思った瞬間――背後のパソコンから、異音がした。
 まるで女の悲鳴のような、甲高い電子音だった。
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