挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ロック陰陽師 作者:眞神 ユウ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

16/21

第16話 眠れない夜

お久しぶりです。
お読みいただきありがとうございます!
今回は少し短めのお話になります。
よろしくお願いします。
 暗闇に支配されている間、耳に入り込む音だけが世界を唯一確認できる手段だ。

 薄くかけた暖房の規則正しい機械音、水槽から聞こえる泡の音、柱時計の振り子が時に合わせ踊る音。時折聞こえる外からの寒々しくも強い風音。
 ベッドに入ってから、もう何度瞳を閉じ、開けたか分からない。
 サイドテーブルの上にあったリモコンを手探りで探し、照明をつける。

「落ちつかねぇなぁ」
 山城とロミのことでもうクタクタなのに、ちっとも眠れやしねぇ。
 あの後。立花さんがおごってくれたから、空腹も気持ちも多少回復できた。帰宅してから、部屋を案内してもらい、ようやく心身ともに休めると思ったのに――。

 頭上の小さなシャンデリアをにらみつけ、改めて室内を見回した。広さは十二畳位だろうか、赤みを帯びた滑らかな木製のアンティーク家具で統一されている。いかにも高級志向の女が住んでいた、という印象だ。カーテンやカーペットは全て鮮やかな花柄で、もちろん俺が寝ているベッドもそうである。刺繍が施されており、プリント柄ではない。高そうだ。屋敷の外観通りというか、まるで中世風の高級ホテルにいるようだ。

 片隅に置かれている俺の荷物。ベースやアンプ、スポーツバックが見事にアンマッチしていて、どこか寂しげに感じた。

 この部屋は、俺の新しい住まいだ。

 立花さんの姉が住んでいた部屋らしい。
 半年ほど前に出て行ったばかりと言っていたが、まるで夜逃げしたかのように生活感が残っている。家具は何も持っていかなかったのだろうか。
 高そうなのに。

 どうも自分には世界が違っていて落ち着かない。今日は寒いからと言って、出て行く前につけていった暖房さえ電気代が気になって仕方がない。

 ゴージャスなベッドから逃げるように立ち上がり、キャビネットの上に置かれている小さな水槽に向かう。
「福子、良かったな」

 金魚一匹には十分な豪邸だ。俺が本日、山城事件に巻き込まれている間に、飛龍と雪華ちゃんが閉店間際のホームセンターで買ってきてくれたものだ。
 金魚――と、彼らに言い残しておいて良かった。

 大きさは三十センチ程度、値段は二千九百八十円の初心者安全キット。
 帰宅したらすでに設置してあった。飛龍にお金を払うと言ったら、いらないと言われたけれど。
「後でお金をおろしてきて、返さないとな……」

 環境が変わっても福子は元気そうで安心した。広い水槽でかえって寂しそうに見える。
今度、何匹か買ってこようかな。金魚。

 福子の様子を確認した後、そわそわとした目線を左に向ける。そこに、俺の気がかりのモノがあったからだ。部屋のやや左に位置する場所に、それは大きな白い布が被せられていた。
 部屋の案内をしてくれた立花さんが、去り際に「ああ、その大きい布は気にしないで良いよ。色々と変なモノがあるかもしれないけど、姉の私物だから。後で整理するよ」と言っていた。
 詳しい説明はなかったが「見てはいけませんよ」と言われているようで、逆に気味が悪い。変なモノがあるとか言っていたのも気になる。
「まぁ、これも家具だろうけど」
 こんなもの怖がるなんて、俺もまだまだガキなんだなぁ。なんて思いながら、布を思いっきり引いてみた。
「! うわっ……」
 口から、声が漏れた。

 そこにあったのは、高そうなアンティークの化粧台だった。

 大きい。彫刻や飾りのせいか、まるで祭壇のようにも見える。
 恐ろしかったのは――にぶく光る鏡に、沢山の札がはってあったことだ。
 ロミの時にも、立花さんから札を貰ったが、その時は一枚だけだった。
 そして今、目前に貼られている札は、明らかに違うモノだった。色も赤い墨で書かれており、目立つ。何て書いてあるんだろうか? まるっきり読めない。模様にも見える。小さな四角がたくさん書かれていたが、もしかしたら漢字の「口」なのかもしれない。

 俺はその場で凍り付いたように、ただ化粧台を眺めた。

 鈍い回転しか出来なくなった俺の頭が、布を取ってしまった事に後悔しはじめた頃――視線を感じた。
 振り返り、危険を察するように部屋を見回す。

 ゆっくり。
 見逃さないように――。
 ゆっくりと。

 俺の視線は、高い位置で止まった。
「勘弁してくれ……」
 喉の奥から声を絞り出す。

 西洋箪笥の上に、たくさんの光る目があったからだ。

 良く見たら、ガラスだ。人形の目。長い睫の下、見開かれた青い瞳が、ありえないことなのに光って見えた。生き物みたいに。
 人形は、八体あった。
 左端にある人形は、やや大振りのアンティークドール。フランス人形らしい金色の髪が、やや湿気を帯びて乱れ、はねあがっている。

 それが右に移動するにつれ、四体目から漫画やアニメのキャラクターらしい男の人形……フィギュア? になった。スポーツ選手のような格好をしている。
 最後の人形――右端の人形に至っては、頭の一部の皮膚部分がむき出しになっており、髪が半分だけ生えている。良く見ると、手縫いの人形のようだった。やはり男のキャラクターで、大きな瞳に太めの眉、むっとしたような口が刺繍されている。スーツ姿……いや、白衣だ。腕が中途半端な位置でなくなっている。まさか……もいだのか?

 この部屋の主、手縫いの人形の腕をもぎとっている!

 モダン部屋は急にホラーになり、暖かいはずなのに、寒気がした。

 その時、俺の背後から、ぼーんという柱時計の高い音がした。
「こんなとこ居られるか!」
 ストレス値が跳ね上がり、俺はつい叫んだ。
 その間も、柱時計の振動は部屋中に響き渡り、幾重にも重なった音が微妙にずれて聞こえ、神経を逆なでする。胸がざわつき気分が悪い。

 扉の音を立てて、俺は部屋を飛び出した。
 ――しかし。

「福子!」

 部屋に福子を置いて来てしまった事に気がつき、慌てて部屋に戻る。だが水槽を見ると静かなもので、俺がかえって福子の安寧を邪魔してるような気がした。
 冷静になろうとして時計を見ると、針は――午後二時を指していた。
 世間でいう丑三つ時というやつだ。幽霊とか妖怪とかが、活発になる時間帯。
 そんな余計な事を考えたせいで、水の入ったコップをひっくり返したように、恐怖感が溢れ出す。

 気がつけば、また薄暗い廊下に飛び出していた。
cont_access.php?citi_cont_id=276060669&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ