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ロック陰陽師 作者:鑑祐樹
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第15話 茶黒と白

お読み頂き、ありがとうございます!
また、投票頂いた方々もありがとうございました。
感謝します。
 それからです。彼女が私の部屋に住み始めたのは。

 初めは、ちょこちょこと彼女の姿を見かける程度でした。
 ふとしたときに、気配を感じて振り返ると、ベットに座っていたり……帰ってくると、テーブルの前に座っていたり。
 すぐに消えてしまうんですけれど、いるんです。部屋の中に。

 おかしいんですよ。
 怖いことのはずなのに、いつの間にか、慣れてきてしまって。

 ――だんだん、当たり前になってしまって……。

 私は、アパートで一人暮らしをしています。自宅に帰ると、いつも部屋の中が暗闇で……でも。ある日、いつものように仕事から帰宅すると、消したはずの部屋の電気が煌々と付いていたんです。
 ドアを開けると、彼女がテーブルの前に座っていて、嬉しそうに「おかえりなさい」と――私に言ったんですよ。

 それが、嬉しくて……。
 もちろん、彼女がその――幽霊だってことは分かってるんです。
 でもね、会話したり――あっ、そうだ。メールも来るようになったんですよ。パソコンに。スマホには来ないんですけど……。

 スマホの方が、いつでも見れて嬉しいんですけどね。


(……まるっきり意味が分からない)

 俺は話を聞きながら、だんだん不快になってきた。
 山城は、途中から、嬉しそうに説明していた。たまにチラチラと見える横顔が、半笑いで気味が悪い。

 まるで彼女の自慢話だ。

 立花の携帯にかかって来た助けを求める電話は何だったんだよ。
 あの時の山城の声には、切羽つまった危機感と恐怖――。あれは演技ではなかったはずだ。

 それに――ウレシイか? 怖ぇだろ、それ。

 山城の話はつまり――。
 交差点で一度見た知らん女が、自分の後を付いて来て、いつの間にか自宅のアパートに住み着いてるってことだろ。

 ヤベェよ……完全に幽霊にとり()かれてるよ。
 俺は救いを求めて運転席の立花に視線を送る。後部座席からだから、横顔しか見えない。薄っすらとした明かりに表情までは分からないが、何故か、だんまりを決め込んでいる。

 俺は山城の後頭部に視線を戻す。
 じんわりと腹が立って来たのは、山城の態度が不快だからか空腹のせいなのか分からないが、俺は疑問を本人にぶつけてやる事にした。

「それじゃ、山城さんが電話で言ってたアレは何だったんすか? ほら、助けてくれ、女が――って言ってましたよね」

 山城は俺の言葉が合図とでも言うかのように、身体を縦に振るわせた。

「あ、あぁあ……」

 唇から零れ落ちた声と共に、山城が頭を振る。何度も、何度も。
 なんだろ、これは。
 自分より、軽く十歳以上は離れているであろう山城が、幼稚園児に思えてくる。これでは、まるで駄々をこねる子供だ。
 何か、嫌な事でも思いだしたんだろうか。

「ふふふ……山城さん、あなたがそんな風だから、ほら……」
 ――彼女が。
「迎えに来ましたよ――」

 立花の静かな声が車内に響き渡り、俺の思考は止まってしまった。

「うっ、わぁあああああああ!」

 だが、突然の絶叫に現実に引き戻される。見れば、山城が立花に抱きついていた。

 山城の視線の先――。

 フロントガラスの向こう側に、黒茶と白の塊があった。いや、良く見るとそこには顔がある。黒茶色の顔面は、埃と湿気で固まっているのだろうか、ワカメのように固まった長い髪に(おお)われていて表情は見えない。

 そいつは、車のボンネットに音もなく乗っていた。

 荒々しい呼吸に合わせて両肩を上下させながら、(かす)かに移動している。

 黒茶の肌、枯れ枝のようにカラカラに干からびた長い両腕、その先についている指先はまるで吸盤でも付いているかのようにフロントガラスに張り付いていた。

 それに反比例して、純白のフリルのワンピースが白光りして目に痛い。
 動作や顔に矛盾したその衣装は、何かを主張するように、ふわふわと風に揺れている。まるで、着ている本人の姿に抗うように。

 こいつ、まさか――山城の部屋にいた、例の『彼女』じゃねぇだろうな。

「認めたくないんじゃないですか? 見たものを」
 俺の思考を読んだかのように、立花が言葉を紡いだ。

「これが、彼女の真の姿だっていうことを」
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