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ロック陰陽師 作者:眞神 ユウ
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第14話 ロミちゃん

「メールです。なぜ、スマホには送ってこないで、パソコンだけなのか……山城さん。必ずパソコンなんですよね? 彼女からのメールは」
「は、はい……そうです」
 あんなことがあったせいか、山城は心底嫌そうにパソコンを起動した。
 起動音と共に、ブンッという変な音がして――更に山城がうめき声をあげた。

「うっ……な、なん……うわぁ!」

 山城が、自分の左手を見ながら悲鳴を上げた。
 左手の薬指に赤い輪が出来ていた。まるで、指輪みたいにぐるりと回っている。
「なんで……こんなっ……」
 ついに山城は泣き出してしまった。
 さっきの赤い糸といい、左手の薬指に赤い輪といい――これは、まるで……。

「なんか、それ……結婚指輪みたいじゃねえ?」

「だから結婚なんてしてませんよ……」
 もう山城は、痛さと怖さで大人しくなっている。疲れたのかもしれない。
「本当ですか? ふざけて、とか――遊びとかの口約束でも縁はできますよ」
 立花さんが、パソコンと山城を見比べながらそう尋ねる。
「遊びでそんな約束なんか……ん? 遊び……?」
 山城は、何かに気が付いたように考え込むと、ぼそりと呟いた。
「ゲーム……で、結婚したことが……ありますが」

「えっ!」

 俺はつい大声を出してしまった。
「何かのキャラクターと結婚したら呪われんの?」
「いや、そういうのじゃなくて、オンラインゲームの中で知り合った人となんですが……」
「え? ゲームの中に人間がいるの?」
 今度は立花さんが、驚いたような声を出した。
「ああ、インターネット上で、色んな人と遊べるゲームがあるんスよ」
 俺は聞きかじりの知識で説明した。高校の時の友達が誘ってきたことがあったから、それくらいは分かる。やんなかったけど。

「ロミちゃんって言うんですけど……」
 山城の話によると、ソーシャルゲームでロミというプレイヤーと結婚したことがあったらしい。でも、彼女は二、三ヶ月くらい前から、ばったりとこなくなってしまったとの事だった。

 話をしている間、山城の血の指輪から血が滴り落ちて来て、何度か話を中断させられた。苦しそうだったが、もうさすがに話すのを止めようとはしなかった。

「確かに、ゲームの中の『ロミ』というキャラクターは、横断歩道で出会った女性に似ていました。純白の白いワンピースとか着てそうなイメージで……プリーストでしたし」
 プリーストの意味が分からなかったが、話の腰を折ってしまいそうなので黙っていた。多分、立花さんも同じだろう。じっと話を聞いている。

「実は、ロミちゃんは初恋の人と雰囲気とか似ていたんですよ。だから、好きになったっていうか……」

「初恋の人って……ゲームの中でしか会ってないのに?」
「いや、イメージっていうか、黒髪でセミロングで、白っぽいローブ? をいつも着てて」
「ローブ?」
 つい声を出してしまった。
「ロングスカートっていうか、ワンピースっていうか――」

 そこまで言って、山城はうつむいた。手が痛むのかと思ったのだが、怖がっているような声音から、寂しそうな雰囲気に変わっていた。
「言われてみれば、横断歩道の……彼女の、あの部屋で微笑んでた、キレイな姿は、どこか初恋の人に似ていました……」

 そこまで言うと、黙ってしまった。
 あの茶黒の女は、白いワンピースに、黒髪のセミロングだった。

 じゃあ、あいつの名前は「ロミ」なのか?

 そう思った瞬間――背後のパソコンから、異音がした。
 まるで女の悲鳴のような、甲高い電子音だった。
「山城さん、大神君。下がっていて下さい」

 立花さんはそう言うと、椅子に座ってパソコンに向かった。
 デスクトップの画面は、急に明るくなったり暗くなったり、点滅を繰り返している。
「……メールボックスは、インターネットを開いて下さい。すぐに分かると思います」
 山城が苦しそうに説明する。
「これですね」
 立花さんが、マウスをクリックする。

 その時、一瞬だけ――液晶画面に女の顔面が映って見えた。落ちくぼんだ目に、開いた口。何故か白黒だった。
 俺は息を呑んだが、二人は反応がなかった。見えなかったのだろうか?
 直後、パソコンがフリーズした。

「ちっ」
 小さく舌打ちすると、立花さんは指を動かしながら何事か呟きはじめた。

「……青龍、白虎、朱雀、玄武、空陳、南寿、北斗、三体、玉女……」

 少しの時間をおいてから、パソコンは大人しくなった。それを確認すると、立花さんはこう続ける。

「電化製品は、やられやすい。霊障で電磁波が乱れるし――憑くんです。山城さん、あなたのパソコンに彼女は住んでいたんですよ」
 話しながらも、時折指を動かしている。 

「あなたが望んでもスマホにメールをよこさなかったのは、生前、ロミとやりとりしていたのがパソコンのネットゲームだったからでしょう。彼女はインターネット回線を通して、あなたの元へ来ていたんです」
 立花さんの手元からマウス音が聞こえる。

 生前という言葉に、俺も山城も反応してしまう。特に山城は、思うところがあるのだろう、一度だけ首を振った。
 確か、ロミは二、三ヶ月前からばったり来なくなったと言っていた。

 じゃあ、その時から――彼女は幽霊になっていたのだろうか。

「ロミという女性はパソコンに憑いていて住んでいる。家に入る前に、赤い糸が消えたのも、一時的に撤退して、私達を監視するためです」

 そこまで言うと、パソコンからひときわ大きな音がした。
 画面には、メールボックスが映っている。しかし、そこにある文章は、全て記号の羅列だった。一見すると、バグが起きているように見えるが――。

「これが、彼女からのメールですね」

 立花さんは、呪いのメールを消す作業を始めた。

 話をしている間、山城の指はさらに悪化している。苦しそうに呻いているので心配して覗き込むと、指におかしな模様が浮かんでいるのが見えた。

「何すか、それ――」

 ローマ字で『ROMI』と、浮かび上がっていた。まるで、刻印のようだ。
 怨毒のような、瘴気のようなモノを放っている。やばい。何なんだ一体。

「これ……ゲームの中で、お互いに送りあった結婚指輪……」
「ええ……」
「お互いの名前が彫ってあるっていう設定で……」
 もうどうすれば良いのか分からなくなり、立花さんの方を見ると、彼は大きな声でこう告げた。
「山城さん、未練を捨てて、自分の強い意志で――『縁を切る』と宣言して下さい」

 その時。
 蛍光灯が弾けたような、大きな音がした。
 見ると、茶黒の塊が――いつの間にか山城の背後に立っていた。
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