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シカテマ疾風伝<第一部>
作:スピリットQ



再会…その後 (2)


「飯は何が食いたいんだ?」
「そうだな…、以前来た時に店の前を通りかかったんだが、甘栗庵とかいう処に行ってみたい」
「おまっ…、甘党か?」
「何だ悪いか? 私は甘いものに目がないんだ」

強気な見た目には反して、意外にも甘い物が好きだということを知らされたシカマルは、少々驚いた。

「…ほんじゃ、そこにすっか。ちなみに、甘栗庵じゃなくて甘栗甘だ」
「どっちでもいい、とっとと案内しろ!」
「へーへー、わかりましたよお姫様」

シカマルは歩き出す。テマリもその後についていく。
夜の繁華街は、人々が行き交い、ざわめきとどこからともなく漏れ出す料理の匂いで、活気に満ち溢れていた。
忍びの里とは思えない生き生きした街の様子に、テマリは意表を突かれる。

しばらく歩くと、目的の茶屋に辿り着いた。
若い女が大半を占めるこの店だったが、特に臆することもなくシカマルは、
空いている席を目にすると、普通にそこへ行き、普通にイスに腰かける。
見れば、回りは女ばかりである。
ここへ来ることが、まるで慣れているかのようなシカマルを見て、テマリは鼻で笑う。

「ずいぶん慣れている様子だな。ここへは誰かとよく来るのか?」

突拍子もないことを耳にし、片肘をテーブルについていたシカマルは、顔をしかめた。

「オレはあんまり甘いもんは好かねーよ。それよりはやく注文しろって、めんどくせー」
「ああ、そうだな」

メニューを見開き、テマリは一覧を眺める。
と、それも束の間、あっさりメニューをパタンと閉じてしまった。

「なんだ、もう決まったのか? いのとは大違いだな」
「なんだ、やっぱり彼女とよく来るんじゃないか」
「そんなんじゃねーよ。まぁ、強いて言えば、無理につき合わされてるっつーか…」

シカマルが話している間にテマリが注文したのは、みたらし団子とあんみつの特盛りだった。

「……女って本当に甘いもん好きだよな」

テーブルに運ばれてきたこってりとしたそれらを見下ろし、テマリの瞳がキラキラと輝いている。
きっと初めて目にしたのであろう。
一方、大輪のような笑顔を咲かせたテマリのその表情を初めて見たシカマルも、
いつのまにか言葉が発せなくなっていた。

「…お前は食わないのか?」

テマリがそう言って顔を上げると、シカマルと目が合った。
不意を突かれたのか、シカマルが慌てて視線をそらした。

「い、いらねーよ!」

シカマルが急にその場を立ち上がり、席をはずした。

「どこへ行くんだ?」
「食い終わったら教えろ。外で待ってる」

そう言ってテマリを一人残し、外に出て行ってしまった。

「何だあいつ……? おかしな奴だな」

それでもテマリは、目の前にあるあんみつに視線を落とすと、
再び美味しそうに口に運ぶのだった。




「ったく…! これじゃあ、まるでデートじゃねーか」

店の外に突っ立ってシカマルは、日中、久しぶりに出会ったナルトに、
デートだとからかわれたことを思い出す。
別に異性と来たからと言って、必ずしもデートだとは言い切れない。
それはわかっている。わかってはいるが……。

……いのと一緒に食べることだって、今まで何度もあったじゃねーか。

そう自分に言い聞かせるが、どこか言い訳にしか聞こえない。何かが違う気がした。
そんなことを頭の中で悶々と考え込んでいると、
時間があっという間に過ぎ去っていたらしく、
いつのまにかテマリが、「食べ終わったぞ」と店先に出て来ていた。

「ああ、ちょっと待ってな、支払いしてくる」

入れ替わるようにシカマルが店の中に入って行こうとするのを、テマリが引き止めた。

「支払いは済んだ。…さ、行くぞ」

振り返る少年を尻目に、テマリは颯爽と歩き出した。
肩透かしを食らったかのような体勢のままシカマルは、すぐにテマリの後を追い、
彼女の右手を掴んで何かを握らせた。

「あんたが払うことはなかったんだ。もらっておけよ」
「いいって。自分が食べた分は自分で支払うのが当然の成り行きだ。余計な世話は要らない」
「あのなぁ〜、いいからとっとけって! 火影にあとでどやされんのはご免だ」
「!」

早歩きで歩を進めていたテマリが、突然足を止めた。

「所詮は目上の命令か。そうでなければ、おごろうとさえしなかったんだろう、お前は?」
「な、何言ってやがる? そーじゃねーって」
「だってそうだろう。こうして案内したり付き添っているのも、命令だから仕方なくしているだけだろう? 
面倒くさがり屋のお前のことだ。内心は、早く帰ってゆっくりしたいんだろう?」
「……」
「私は別に一人でもかまわないんだ。一人でいるのは慣れている。むしろその方が気が楽だ」
「そんなにオレといるのが不服だってのかよ…?」
「私は必要以上に世話をされるのが嫌い、それだけだ」

テマリの瞳がキッときつくなる。刃をクナイを宿したかのようなその強い双眸に、
シカマルも一瞬たじろぐ。
この女は、自分の知る同期の少女たちとはやはり、一線を画する性格、
生き方をしてきたんだと分かる。
だが、そんな気を張り詰めた彼女を諭すかのように、少年は口にする。

「それは個人の勝手だが、あんまり気張んなって。時には息抜きも必要だ」

テマリがふぅーっと息を漏らすと、肩をすくめてきびすを返した。

「ところで話は戻るけどよ、温泉には行くのか?」
「……混浴なら遠慮する」
「ちっげーよ! つか、オレは案内するだけで最初から入りはしねーし!」

やや赤面して少年が動転している。こんな反応を見るのも、テマリには新鮮に見えた。
弟たちは、ほとんど照れたりしないからだ。

「冗談だ。また今度にするよ。実はまだやることが山積みなんだ。宿に行ってから片付けようと思っている」
「まだ仕事するつもりなのかよ。上忍で使者ってのは大変なんだな」
「当然だ。遊びに来たんじゃないんだからな」
「つってもなー、少しくらいは楽しんでけよ……っと、ここだぜ、あんたの泊まる宿」

シカマルがあごで一軒の宿を指し示す。

「ご苦労だったな。お前も帰って休め。私の相手をするのも疲れただろう」

思わぬねぎらいの言葉に、シカマルが呆気に取られる。

「オレは別に疲れてなんかいねーぜ。あんたの相手をするのだって別に……」
「ここでいい。…じゃ、おやすみ」

最後まで聞かずに、テマリは宿の中に入っていってしまった。
一人残されたシカマルは、しばらく呆然と突っ立っていた。
やがて、再び歩き出そうとしたが、前に出しかけた片足を元に戻す。
二階の一室に突然明かりが灯ったからだ。
窓の奥にうっすら人影が見えるが、それが今別れたばかりのテマリであることは、
一目瞭然だった。
しばらくそこを見上げていたシカマルだったが、自分の思いがけないその行動に嘲笑した。

「何やってんだオレ……」

深いため息をもらすと、頭をボリボリ掻いた。
その内、窓からテマリが顔を出すんじゃないか、そんなことを少しでも期待している自分がおかしかった。

「どーも調子が狂う女だぜ。……オレもきっと疲れてんだな。早く帰って寝るとするか」

背伸びをすると、今度こそ少年は歩き出す。



夜空には、星がきらめいていた。
いつもなら常に空を眺めている少年も、今日一日だけは、ほとんど見上げることもなかった。



やっぱり続く…らしい。



    

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ああ、書いた書いた。
面倒だね小説って。













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