再会 (1)
「…ん? おまえ、どっか行くのか?」
ポケットに両手を入れて気だるげに歩いてくるシカマルに気がつき、
受付に居座るコテツとイズモの不思議そうな顔が向けられた。
「出迎えっすよ…めんどくせーけど」
「ああ、砂の使者か。もうじき来るはずだから、ちょっと待ってな」
中忍の後輩が、同盟国の使者の案内役に抜擢されたことを知った二人は、
眠そうな顔で欠伸をするシカマルを見て、途端に呆れ返った。
「相変わらずやる気ねーな。綱手様の命令でなけりゃ、オレが買って出たのに」
ニヤニヤするコテツに、不意に怪訝な表情をシカマルは作る。
五代目火影に、砂の使者の案内役をしろと言われただけで、
それ以上の詳細を知らされていない彼が、わけがわからない顔をするのも当然だった。
「相変わらずおまえの頭ん中は、そういうことでいっぱいだな」
「バッカ、おまえ、男のロマンだろ!」
隣りで呆れるイズモにコテツが反論するが、
「…今日来るのは、女一人らしいぜ」
シカマルに向けてそう言い放つと、さすがのシカマルも、
ああ、そういうことかと納得するのだった。
……何が男のロマンなんだか。
ふと、あの少女の顔が脳裏をよぎった。
前回、砂のメンバーが来たのは、中忍試験の時だ。
その際に、砂の三姉弟を門まで見送ったのは、中忍になったばかりの自分だった。
しかし、砂の使者と言っても、そのメンバーが今回も来るとは限らない。
ましてや、女が一人で遠く離れたこの地へやって来るなど、普通なら考えられない。
でも、あの少女なら例え敵に遭遇しても、こてんぱんにやっつけるだろうから、
送られて来るだろう予感はしていた。
「気丈な上に、おっかねーし…な」
一人小さくつぶやいていると、見覚えのある姿が門の外に見え始めた。
黄金に輝く髪は四方に束ねられ、体に不釣合いなほど巨大な扇子を背にし、
それでも真っ直ぐ姿勢を正した、凛とした翡翠の双眸。
いかにも簡単には折れそうにはない気の強そうな少女・・・いや女性が、こちらに向かって歩いて来る。
間違いなくテマリだった。
“何かあったらまた助けてやる。そん時は言いな。泣き虫クン”
あの時の光景が甦る。
二年前に別れたこの場所で……。
「…やっぱりアンタか。遠い所ご苦労だったな」
懐かしくも見知った顔を見てテマリも安堵したのだろう、
彼女がうっすらと笑みを浮かべながら近づいてくる。
その微笑が何故だか眩しく見え、シカマルは一瞬息を止めた。
だが、強い日差しのせいだろうと、すぐに理由付ける。
同時に、あの時同様、胸にこみ上げる得体の知れないうずきにも戸惑いを覚えていた。
それが何なのかは、彼自身まだ気付かない。
「またお前か」
「わーるかったな、またオレで…。ところで今日は一人か?」
よく通る彼女の、皮肉めいたその第一声にシカマルの顔が更に仏頂面になったが、
気を止める様子でもなくサラッと受け流す。
「我愛羅は風影になった。カンクロウも忙しい。無論、私も上忍になって忙しい身なのだが、
今回は私が一人で来ることになった。何、用件が済めばすぐ帰るだけのことだからな」
「あ、あいつが風影!?」
よどみなく平然とした顔で話すテマリに、シカマルが愕然とする。
自分と同じ15歳の我愛羅が、風影になったことに驚愕したのだ。
「そういうお前はどうなんだ? お前ほどの忍だ。当然、上忍にはもうなったのだろう?」
「いや、まだ中忍のまんまだ。めんどくせー…」
「はん、相変わらず変わってないんだな……いや、少しは成長したか?」
「…は?」
会話を続けながらも受付を済ませたテマリだったが、
入国許可証を手にしてシカマルの隣りに立つと、違和感を感じたのか年下の少年を一瞥した。
かと思うと、フッと笑みをこぼしてすぐに目を背けたのだった。
些細だが、意味深にも感じるその行動が少年は気になった。
だが、テマリが正面を向いて歩き出したので、
シカマルも深いため息をついてから、その後を追う。
「だーから、オレはまだ中忍だっつーの」
「そういうことじゃない。ホラ、さっさと案内役を全うしろ。やることは沢山あるんだからな」
「ったく、五代目といい、人遣いがあれーぜ。これだから女ってのは……」
「またお前は男だ女だ面倒くさいことを言うのか?」
「ああ、めんどくせーけどよ」
二人の姿が遠ざかって行く。
二人が横に並んで立つと、少年の方が頭一つ分背が高い。
二年前には三つ年上と言えど、少女の方が背が高かったはずだ。
わずか二年の歳月が、この二人の間にもそれぞれの変化を与えていた。
そして、この二人にも…。
「……おい。なんか、オレらの入る隙間なかったよな…?」
「……ああ。って言うか、オレら完全に忘れ去られていたよな…?」
呆然として一部始終を見守っていたコテツとイズモは、
遠ざかる少年と少女をいつまでも見送っていたのだった。
続く…らしい。
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ああ、書いた書いた。
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