鳴き響む
村の荒寺に住み着いた薄汚い男は、いつしか村の民と交流を持つようになっていた。
ある日、村に領主のもとへ美しい女を差し出せという命令が伝わった。しかし村のめぼしい女は、すでに献上済みだ。代わりとなるものを差し出す余裕は、村にはない。
村のものらが困り果てていると、薄汚い男が言った。
「なんとでもしてみせよう」
そうして男は村の少年ひとりと馬を連れて旅に出た。
ある日、村に領主のもとへ美しい女を差し出せという命令が伝わった。しかし村のめぼしい女は、すでに献上済みだ。代わりとなるものを差し出す余裕は、村にはない。
村のものらが困り果てていると、薄汚い男が言った。
「なんとでもしてみせよう」
そうして男は村の少年ひとりと馬を連れて旅に出た。
1
気が付けば男はそこに居て
2016/04/29 10:00
男は、年齢がわからなかった。
2016/04/29 11:00
いつしか男は村の中心にいるように、なっていった。
2016/04/29 12:00
村は、悄然となった。
2016/04/29 13:00
鈴を転がしたような澄んだ音だった。
2016/04/29 14:00
「申し訳ないが……子どもをおれに与えてくれ」
2016/04/29 15:00
「では、行こうか」
2016/04/29 16:00
2
花が咲くように顔を輝かせた。
2016/04/29 17:00
これから、オマエは汀と名乗れ
2016/04/29 18:00
突然脇の林から数人の男が躍り出てきた。
2016/04/29 19:00
男の腹を剣の鞘で撫でた。
2016/04/29 20:00
汀はずっと抱えていた疑問を、口にした。
2016/04/29 21:00
「人間には、水が流れている」
2016/04/29 22:00
「そういうことを、おれはしたんだ」
2016/04/29 23:00
ずっと意識をし続けていろという事だ
2016/05/01 00:00
がんばりました、じゃ飯は食えないんだよ
2016/05/01 01:00
少し、見せてはもらえまいか
2016/05/01 02:00
「これ、おじさんが作ったの?」
2016/05/01 03:00
気にすることないよ、おじさん。
2016/05/01 04:00
どうして孝明は、あの荒寺に住んでいたんだ
2016/05/01 05:00
「どうして、今じゃいけないんだ」
2016/05/01 06:00
「何が、見事なもんか」
2016/05/01 07:00
あの程度のもの、出来て当然だ。
2016/05/01 08:00
「こんな立派なの、はじめてみた!」
2016/05/01 09:00
「それだけ真摯に、細工に向き合って来たということだろう」
2016/05/01 10:00
「おれは、この竜をほこらしく思う!」
2016/05/01 17:00
ほんとうに、情けないことだ
2016/05/01 21:00
孝明を見た職人は薄い笑みを浮かべてかぶりを振る。
2016/05/02 11:00
ワシは死ぬまで職人だ。
2016/05/02 17:00
道中では、法師ということにしておこうか
2016/05/03 11:00
「汀は、なんて言ったんだ」
2016/05/03 17:00
いずれ、わかるようになる。
2016/05/04 11:00
3
「相部屋の、申し出か」
2016/05/04 17:00
「雨が止むまで、よろしくたのみます」
2016/05/05 11:00
汀は小走りで厩に向かい、焔の傍に寄る。
2016/05/05 17:00
何事も無かったかのようにすべてが終わった。
2016/05/06 11:00
真剣にヒョウタンを睨み付けた。
2016/05/06 17:00
小さな声が口から洩れた。
2016/05/07 11:00
さっそく土鍋に箸を伸ばした。
2016/05/07 17:00
孝明は悪戯っぽい顔をした。
2016/05/08 11:00
唇が緩むのを懸命に堪えつつ振り向いた。
2016/05/08 17:00
某は、まことに恵まれた状態で旅をしておる
2016/05/09 11:00
貴殿は、楽や舞に精通しているのか
2016/05/09 17:00
坊主の謎かけみたいだな。
2016/05/10 11:00
溜まった雨粒が落ちるように、宗平は心根を漏らす。
2016/05/10 17:00
「そういう趣味に、見えるか」
2016/05/11 11:00
荷物の中に長剣があるのを見て、口を開く。
2016/05/11 17:00
4
種も仕掛けもあるが、手妻とは違うな。
2016/05/12 11:00
「それだけの期待を、寄せられていると言うことだな。孝明は」
2016/05/12 17:00
「人のいない村には、物の怪がいるかもしれないぞ」
2016/05/13 11:00
「物の怪の宿とは、どんな所だ」
2016/05/13 17:00
「からかうのは、そのくらいにしておけ」
2016/05/14 11:00
「孝明も、人の子なんだなぁと思ってな」
2016/05/14 17:00
「歩きづらいし、重いから離せ」
2016/05/15 11:00
入ってきたのは、孝明でも宗平でも無い男だった。
2016/05/15 17:00
身を固くした汀は口をつぐみ、男二人を睨み付ける。
2016/05/16 11:00
汀の体は強い力で後方に引かれた。
2016/05/16 17:00
その目が、汀の胸を震わせる。
2016/05/17 11:00
うねる井戸水が蛇の胴体のように汀を包んで
2016/05/17 17:00
汀に何をさせようとしてんのかに、興味が湧いてきたぜ
2016/05/18 11:00
5
さっそく汀はそうすることにした。
2016/05/18 17:00
「なんで、おれだったんだ」
2016/05/19 11:00
「わからねぇけど、気持ちは伝わるんだよ」
2016/05/19 17:00
「素直じゃねぇなぁ、アンタはよォ」
2016/05/20 11:00
片手で布団を敷きながら宗平が問うた。
2016/05/20 17:00
二人は娘に連れられて、蒸風呂へと向かった。
2016/05/21 11:00
うっすらと汗の玉が浮かび上がっていた。
2016/05/21 17:00
裸同然の女が二人、入ってきた。
2016/05/22 11:00
手ぬぐいを外した娘は、それで宗平の背中を擦りだした。
2016/05/22 17:00
「背を誰かに磨かれるのは、初めてか」
2016/05/23 11:00
「咎めているわけでは無い。聞いているだけだ」
2016/05/23 17:00
「ああ、畳の上は久しぶりだなぁ」
2016/05/24 11:00
「人がよさそうに見えると、言ったんだ」
2016/05/25 11:00
「法師は、祓いを求める者がいないかと街中をうろつくものだ」
2016/05/25 17:00
問いかけに、汀は首を振った。
2016/05/26 11:00
6
「奥のお部屋で、お待ちですよ」
2016/05/26 17:00
「孝明の酌で飲むのは、どれくらいぶりだろうかなぁ…………」
2016/05/27 11:00
「答えぬ方が、楽しみが増すでしょう」
2016/05/27 17:00
「戯れの言葉に、そう過敏に反応をするな」
2016/05/28 11:00
冷やかしとは別の小さな高揚が浮かび上がった。
2016/05/28 17:00
「商売の刀を打たないとは、どういう意味合いで――?」
2016/05/29 11:00
「詮索はするなと、いう事か」
2016/05/29 17:00
「おれも、刀が欲しい」
2016/05/30 11:00
「俺が、会いに行っていた相手だ」
2016/05/30 17:00
「どれ、腰に差してやろう」
2016/05/31 11:00
「それすらも、私の指示だと言ったらどうする」
2016/05/31 17:00
長親の目が新しい玩具を見つけた子どものように光った。
2016/06/01 11:00
「このような男が友であったのならば、さぞ面白かろう」
2016/06/01 17:00
7
「処世術として、必要なことだと教わらなかったのか」
2016/06/02 11:00
「得体が知れねぇだろう」
2016/06/02 17:00
「みんな、領主様の屋敷に行くのか」
2016/06/03 11:00
孝明は薄く笑んだだけで、何も答えなかった。
2016/06/03 17:00
「それは、ひょっとして桃李紐なんじゃないか」
2016/06/04 11:00
飽くことなく周囲を見回している汀の姿に頬を緩めた。
2016/06/04 17:00
「この先に、河原がある。そこの脇の林で野営をしねぇかい」
2016/06/05 11:00
「用心棒としての、初仕事ってぇワケだな」
2016/06/06 11:00
右の男の首を峰で打ち据えた。
2016/06/06 17:00
「死んじゃいねぇから、連れて帰って介抱してやんな」
2016/06/07 11:00
8
はっと何かに気付いた宗平が高い声を上げた。
2016/06/07 17:00
今はおとなしく孝明にならって頭を下げている。
2016/06/08 11:00