窓際で揺れるカーテンの下でうたた寝をしていたら、頬をひんやりと冷たい風が撫で、僕は目を覚ました。
冷たいと感じた風はおかしなことに七月のもので、それがほどなくしてベランダにたどり着いたスコールの、湿った冷たさに過ぎないと気付いてほっとした。
ごう、と空が音を立てた気がした。
雷がそう遠くないところで轟いているのだろうか。
カーテンの隙間から覗いた僕の目の前を、雨粒が勢いよく通り過ぎる。
雨で心が洗われるとは、よく言ったものだ。
均一に降り注ぐ水の激しい音に、僕の胸はなぜだかざわついている。これは果たして洗われていると言うのだろうか?
雨粒が近くの屋根を穿つ。木の葉を弾きながら揺らす。
上空の、強い風に流されていく鉛色の雲は、まだ晴れ間をみせない。
まだ眠い。からだもだるい。枕ひとつで横になっているのが決して快適なわけではない。
ただ、ぼんやりと考えていたいのだ。まどろみの中で君のことを。
いつだったか電車を降りた途端に激しく雨が降り出して、サンダル履きだった君の、冷たそうな足の指を見ていてつらくなった。
何かできやしないかと、そればかり考えた。
結局僕は何もしてやれなくて、「大丈夫?」とうすっぺらな言葉しかかけられなかった。
彼女の視線の先、つま先の小さな赤い爪にばかにされたような気もした。
君はすっかり不機嫌になってしまって、濡れた肩口に置かれた僕の手を少し邪険に振り払ったんだ。
僕はそのわけがわからなかったけど、それよりも何よりもわからなかったのは、雨が降ると必ず君が不機嫌になることだった。
そして、僕たちのデートは高確率で雨に降られた。
だから、君が雨にいらついていたのか、隣にいる僕にいらついていたのか、それがわからないままだった。
ああやっぱり、僕も雨で心が洗われているんだと感じた。雨によって流れ、あふれ出した気持ちが、泥のように淀んでいることに気付いたから。
雨が洗い流した泥で濁った水はどこへいくんだろう。
川をくだって海を渡り、空へ昇って太陽を覆い隠して、悲しみとなってまた僕たちを打つのか?この雨も、あの日の雨も、誰かの悲しみだったのか?
流した涙の行方を探るような、ばかばかしい問いだ。
けれども僕は未だに、それが気になったりしている。
もうしばらく、好きな人に会っていない。
そう気付く頃にはスコールは通り過ぎていた。
寝起きで冷えた肌に僕はちいさく身震いする。
雨は僕に君を思い出させるくせに、君の温かさなどは微塵も残していってくれない。 |