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親の愛情はいつまでも、どこまでも
作:空音色


俺が中学生だった頃の話…。
母親を亡くしたクラスメートの女子の話である…。






「清水は忌引きで今日は学校に来ないぞ」

朝のホームルーム。
担任の先生が俺達生徒にそう告げた。
それでざわざわが起きたが、

「静かに。それと……今日の全校集会だがな…」

とすんなり別の話に変えたので、すぐに収まった。
清水ひかり……実は、このクラスの数人の女子集団に虐められている女子だった。
担任が教室から去った後、

「チッ…今日は一緒に昼食食いたかったのに…」
「明日になれば来るわよ」
「明日なら一緒に食べれるわよ!」
「……それもそうね」

キャハハハと笑いだす虐め組。
呆れた顔で彼女らを見ていた何人かの男子と女子。俺もその一人であった。
清水に散々酷い事ばかりしているのを、クラスメート全員は既に知っていたが、皆、それを止めようとする気はないみたい。
諦めているのか、仕返しが怖いのか、どうすればいいのかわからないのか。いろいろと理由はある。
ちなみに俺は…わからない組であった。





「彰」
「…」
「…彰?」
「…」
「あーきーらー?」
「っ? な、なんだ?」

翌朝。ボーッとしていた俺に何度も声をかけてきた和哉に慌てて向き直る俺。

「何考えてたんだ? ……もしかしてあの不良女共の事か?」

後半は耳打ちで俺に問いかけてきた和哉。
教室の隅にその不良虐め組がいたからであろう行動であった。

「それもあるけど……清水の事だな」
「ああ…なんとなくわかるわそれ」

一体誰を亡くしたのかわからないが、もしそれが家族、または一番近い親族だったなら、清水はさらに暗くなってしまうだろう。
それこそ不良共のいい的であった。

(あまり話はしないけど……小学生の頃はめちゃくちゃ明るい奴だったのになぁ……)

小学生、同じクラスだった頃を思い出す。
今は別クラスとなった女子達と話し、楽しそうに笑う清水。
今じゃ見る影もなく、目が虚ろになるばかりである。

ガラガラ

「! 来たわよ!!」

教室のドアが開く音。
開けた人物は昨日休んだ清水だった。
彼女が来るなり不良虐め組は駆け寄った。

「おはようひかり、昨日はどうして休んだの?」
「き……昨日は、お葬式があったから……」
「お葬式っ? 誰が死んだの? ねえ教えてよぉ」

明らかに失礼極まりない問い掛け。昨日先生が言っただろうが。さっきも思ったが、誰が亡くなったのかは知らない。
「ああまたか…」とクラスメートの一部は彼女らを見た。

「…お母さん……」
「あらっ? お母さん死んじゃったの?」
「あら〜可哀想〜」
「きっと涙が止まらなかったのね、え〜んママ〜!!って」

あはははははは!!と高らかに笑いだす虐め組。
見ていた皆の顔が怒りに変わる者もいた。

「……やばいな」
「ああ……」

和哉の短い感想に、俺も同意する意味で相づちをうった。
でも和哉の言う言葉の意味と、俺が捉えた意味が違う事を知ったのは、また翌朝の事であった。





「えー……皆に、残念なお知らせがあるんだ。驚かないで聞いてほしい……って無理かもしれないな………」

ホームルーム。いつもより担任の表情が生き生きとしていない。
そして虐め組全員の机が空いていた。
この事と関係があるのだろうか…?

「実は……」



担任の口から聞かされた話は、俺達全員を驚かせる事であった。

なんでも、昨夜、不良組が夜遊びからの帰り、町の踏みきりを通ったら、一人の女子……不良虐め組のリーダーが線路のへこんだ部分に足がはまってしまい、とれなくなったようだ。
それで他の仲間達が慌ててリーダーを助けようとしたらしいのだが、そこを電車が来てしまい、間に合わずに全員がひかれたらしい……。



話が終わり、彼女らの葬式はいついつだと話した後、担任は教室を出た。

「やっちまったか……」
「え?」

和哉の言葉の意味がわからず、俺は疑問を一言で聞いた。

「おれ、昨日やばいなって言っただろ。あれ、どういう意味かお前わかってたのか?」
「……ぶっちゃけ言うと、ハッキリとは」
「…そうか。いや、そりゃそうだろな……」

和哉は呆れた…あるいは仕方ないと言いたげなため息をもらした。

「前に話さなかったか?」
「何を」
「おれの霊感の話…」
「……!? まさかお前」
「ああ、昨日の朝見たんだよ。清水の背後にな」

母親らしき霊を見たんだ。
和哉の言葉にやっと理解した。
やばいなって……まさか、

「じゃあ、昨日の事故は」
「おそらく、清水の母親の仕業だろうな。昨日は散々清水を虐めまくってたから、それを見てしまった母親の霊の呪いなんだろうな」
「まさか……ありえるのか?」
「ありえるだろ。ほら、清水の背中……」
「っ?」

と和哉は、窓際の一番後ろの席に座っている清水を見た。

「母親が清水を可愛がるような目で見ている」

もちろん俺の目から清水の母親なんか見えはしないが、和哉がそう言うと…見えているような気になった。

「親って…」
「…なんだ?」

ふと思った事、

「死んでもやっぱり死にきれないのかな? 死んでも自分の子供を守ろうとするし……だからこんな事故起きたのか?」

口から出てきた。それに和哉は

「多分、そうなんだろうな。でなきゃこの世に留まらないし。あいつらに呪いなんかかけようとしないだろうし」

清水の背中にいるという母親の霊を見ながら、そう答えてくれた。

「にしても…清水、いい顔になったな」

今、清水は窓から空を眺めていた。
久しぶりのゆっくりした時間を、感じているのだろうか…。






その日から、清水は小学生の頃のように明るくなった。
クラスメートとの交流も深まり、気付けば俺は清水とすんなり会話をする仲にまでなった。



「…彰君、ひどいよ。いくらなんでも……」
「ご、ごめん。悪気があって言ったワケじゃ…」
「え…そうなの。良かったぁ……」

俺の冗談にはまだまだ真に受ける清水。
清水が他の女子に呼ばれ、俺の元から離れていったと同時に、

「あんまり清水を悲しい目に合わせない方がいいぞ。……殺されるからな」
「えっ…!?」

和哉が背後からこっそりと耳打ちをしてきた。その内容に俺は目を丸くした。
そして行っていく清水の背を見た。

「!……」

一瞬…母親らしき姿を見たのは、俺の気のせいだろうか…。








中学を卒業して、高校に入学し、さらに進路を決めて、社会人になってからも、まだ母親は娘を守ろうとしているのだろうか……。
今となると、調べる術はないが、1つわかった事があった。



親っていうのは、生きていても死んでいても自分の子供に愛情を注ぎ尽くしたいものなんだって事。

「パパー! 遊ぼうー!」
「おっ、何がしたいんだ?」
「キャッチボール!!」

親になった俺は、死んでもこいつを守ろうとする思いでいっぱいなんだ。
誰かがこいつにひどい事をしたら、そいつを俺は殺したいと思いたくなるんだ。だから。



Fin.


今回こちらで初投稿となりました。
一応テーマは『親の愛情』というものに沿ってみましたが…。
あまり上手く伝わらなかったらごめんなさい…。

お読み下さりありがとうございましたm(_ _)m













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