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13話  母の命

前回の後編です。主人公の母さんへの気持ちや、龍に対する見解が乗ります。あくまでも主人公目線です。

 念話に最大の魔力を乗せて叩きつける!


『だまれ、トカゲども!!おまえらこそこの世界に不必要だとされてる種族の分際で、俺の母さんを侮辱するな!!』


 自然と言葉が紡がれる。


『俺を他種族なのに引取り、生きる術を教え、知識を教え、命のなんたるかを教えてくれた存在を、病気のとき自分は食事も取らず、3日も4日も付きっきりで看病してくれた存在を、15年同じ食事を採ってきた存在を・・。』


 力が溢れて来る、たぶん怒り。


『ありがとうと言うと、笑って、「ライトが大好きだから良いのよ。」と言って無償の愛を注いでくれる俺の母親を、滅びるしかないトカゲごときが知った様に語るな!!!』


 周りから一切の音がしなくなった。全力の魔力放出だけで動きが封じられてしまう生き物に失望した。


 こんな、サル山の猿より性質の悪い生き物だと思わなかった。


 ここまで、同じ龍で母さんと違うとはおもわなかった。


 母さんを思い浮かべる。やさしくて、厳しくて、おちゃめで、めんどくさくて、楽しいくて・・・大好きなラナ母さん。


 心が冷めていく。こんな生き物が母さんと同じなことが許せない。


 黒椿と黒桜を抜き、刀の状態にする。


『種族など関係ない。命を慈しみ、育む母なる存在を、あざ笑う生き物など・・』


 魔力の密度がさらに上がり、黒椿に炎の刃が、黒桜に氷の刃がでる。


『育んでくれてる世界と同義な、親という存在を否定する歪な存在』


 意志の力で、氷の刃と炎の刃をそれぞれ5mにする。盆地の中心が風が吹き荒れ、上空に黒い雲が出来始める。


『後5千年経つ前に滅びる種族なら、今滅びるのもたいした違いは無い』


 ゆっくり歩き、一番近くにいる水色の龍の傍らに立ち、黒椿を振りかぶる。


『今死に、・・・大地に帰れ。』


 黒椿を降ろした時に声がかかる。


『おまちくだされ!!』


 黒椿の炎の刃が鱗を1枚切断したところで止まる。振り返った先、一番高い位置にある穴にいる、他より大きな角を持つ黒い龍と目が合う。その黒い龍に向かっている魔力を遮断する。

 それと同時に、黒い龍がこちらに向かって飛んでくる。


 5m手前に着地した、黒い龍と目が合う。


 こちらを見つめる瞳は、深い知性と、長い年月を感じさせた。


『あなたは?』


『わしは、この龍の里の最長老で、まとめ役をしている黒龍のエドラムイと申します。』


 礼には、礼を持って対応する。


『私はエルフの国に住む白龍ラナイアウェルに育てられた息子のライトと申します。本来でしたら、こちらからお伺いしなければならない所、立て込んでいたので挨拶が遅れ、申し訳ありません。』


 頭を下げあいさつをする。


『宜しければ、ライト殿、用件を聞いてもよろしいか?』


『はい、こちらからもお願いします。・・・その前に周りのトカゲを処分しましょう。』


 振り返り黒椿を構える。


『お、お待ちください。』


『大丈夫です。10分ほどですべて処分は終わります。』


『いえ、そうではなく、里の者を殺すのをおやめ下さいませ。』


『・・・何故?どこに生かしておかないといけない理由があるのですか。』


 心底どうしてなのか分からない。黒龍に聞いてみる。


『エドラムイさんは、最初からの会話を聞いていましたか?』


 エドラムイさんが頷く。


『話をしても通じない生き物。自分たちが強いと思い込んでいる生き物。自分たちが相対している者の力量も測れない生き物。種として強くなる事を放棄した生き物。こんな生き物、5千年かからず滅びるんだから、その5千年生かしておくのに必要とされる食料などの物資を、他の種族に回す為にも今殺しておいたほうが良いし、何より、殺しに来たものを殺さなければ、俺が生き残れない。何かまちがってますか?』


『・・・・まちがっては・・おりませぬ。しかし、彼らとは永きに渡って共に里で生きてきた仲間にございます。見捨てる事などできませぬ。』


 じっとエドラムイさんの目を見つめる。揺るがない強い。


 ・・・・30分ほど2人?とも動かない。


 (そうだよな。俺でもエルフの村に魔物が襲ってきたら、見捨てられないしな。)


 ハア・・・、しょうがない。


 魔力の放出を止める。全ての龍達がその場に疲れたように座り込む。


『光の祝福』を全体にかけ龍達を回復させる。まだ気絶しているさっきの赤龍に『再生の光』をかける。骨折した肩の骨と筋肉が巻き戻すように再生し、内蔵のダメージも回復する。


 ・・・エドラムイさんと話し始める。


 母さんの状態、経過、俺の見解を伝える。400年ほど前に、似た症状で亡くなった龍がいたそうだ。その龍は生命力の枯渇によって、そうなったみたいで、もしかしたら、命を直接繋ぎ分け与えれば、与えた方の寿命は短くなるが、与えた分だけ生きられるかもしれない。


 予想なので確実ではないとのことだが、手をこまねいているより遥かに良い。


 礼をして帰る。


 転移!!


 洞窟の我が家に帰ってきた。


 母さんに近づくが、さらに生気が無くなっている。目すら開けてくれない。念話で話かけても返事が無い。


 母さんに両手をかけてそれでも話かける。


『このやり方で合っているか分からないけど、・・でも母さんにはもっともっと生きていてほしいから。』


 まずは、自分の中心に有る、太陽のように暖かいものを意識し把握する。目を瞑り、母さんの消えそうな太陽を感じ、ラインを自分の太陽から伸ばして繋ぐ。


 少しずつ馴染んでいくように、生命力?を注いでいく。


 母さんの命?の方が俺のより輝いたところでそっとラインをはずす。


 目を開けて、母さんを見る。薄っすらと光り発光している。目を瞑り、両手で母さんの大きな体を抱きしめ、探知の魔法を使い調べてみる。


 生命力が前より輝き、魔力も前以上に回復している。


(・・・・よかった。)


 改めて母さんを見ると姿が変化していた。


 体が10mから14mになったが、全体的にスラッとスマートになった印象で感じる存在感は遥かに強くなった。角は4本に増え、瞳は金色、体には金の風のような模様がついた。なんか、神性?が出て来ている感じがする。


 なんか2年前を思い出す。デジャブー?・・とりあえず本龍に聞いてみる。


『何で姿が変わったの?』


 母さん曰く、慈愛の神の加護を授かり、ランクが上がり聖獣の様な存在になったそうです。


 母さんが発光し、光が収縮していき、2m弱の塊になり光が消える。そこには、ロングの白髪に、4本の角が有り、金の瞳に、体に風の様な金の刺青のある、女神の様に綺麗な180cmほどの女性がたたずんでいた。


 その女性が、そっと近づき抱きしめてきた。


「え?・・・エ?・・・母さん?」


「そうよ。心配かけてごめんねライト。」


 ・・・人型になれるのね。


 混乱がある程度収まると、一気に安心感が湧き上がってきた。


「・・まだまだ、死んじゃ嫌だよ!」


 しっかり抱き返し、自然と涙が溢れてきた。(・・・・よかった。)


 後ろからアマリリスも涙ながらにだきしめてきた。




 ふと我に返って、気が付いた。後ろから170cmの妖艶美人、前は180cmの裸の女神?美人、俺身長160cm。


 天国の地獄が展開した。


 この後、すぐに服を買いに行ったのは想像に難くないとおもいます。



次回は龍の里その後を描きたいと思います。

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