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ペット宣言







「カリン、お前の世界にはぺルシーやハインドといった動物は存在していたか?」





ぺルシー?
ハインド?
そんなお洒落な名前を持った動物なんて聞いたこともないぞ。





「う~ん、どういう動物か実際に見てみないと何とも言えないけど……そんな名前の動物は私の知る限りいなかったと思う」

「……お前の知る限りだと随分と規模が狭そうだけどな」

「何だって!?」





そりゃあたし特別動物に詳しいわけでもないですけどね。
でもあたしの世界の人たちが一般的に知っているような動物くらいは知ってるさ!
猫とか犬とかライオンとかシマウマとかコアラとかチンパンジーとか鼠とか豹とかペンギンとかカンガルーとかフラミンゴとか象とか麒麟とかモモンガとか猪とか虎とかカバとか……ほら、今思いついただけでもこれだけたくさんあるんだからね!
もっと考えればいっぱい出てくるもん!





「まあ、お前の動物に対する知識がどれほどかということは今はどうでもいい話だが。それよりも――――」





どうでもいいなら何でその内容で人のことバカにしたんだコイツ!?
ほんと見た目最高なのに中身最低だわー。
こんなんが王様で大丈夫なのこの国?





「実際にその目で見てみろ。ぺルシーとハインドというのはこういう動物だ」





レイシスがそう言うやいなや、私の足元数メートル先に二匹の動物が音もなく姿を現した。
一匹はキラキラと輝く白銀の毛並みに燃え盛る炎のような赤い瞳を持つ猫によく似た姿をしていて、もう一匹は闇夜のように黒い毛並みに透き通った琥珀色の瞳を持った犬…というよりは狼に近い姿をしていた。
二匹の動物の右目の下には紫色の蔓草のような模様が刺青のように描かれていて、それがとても綺麗で印象的だった。





「小さい方がぺルシー。大きい方がハインドだ」





ふむふむ。
つまり猫みたいな方がぺルシーで、狼みたいのがハインドってわけね。
それにしても二匹ともすっごく綺麗な動物だなあ。
姿形は猫や狼に似てるけど……それ以上に美しくて、神々しいって感じ。





「コイツらは魔力を持った動物でな。貴族やちょっとした金持ちの家ではペットとして飼われていたりする」





ええー!?
この世界の人達はこんな綺麗な動物をペットとして飼ってんの!?
ちょっとこれはペットで飼うなんてレベルのものじゃないでしょ!
何か触れちゃいけない感じの……そう、国宝級レベルの動物ですよこれはっ!!





「それぞれのしゅの中でもランクがあって、この二匹は最高ランクのぺルシーとハインドだ。魔力もかなり持ち合わせているから、人型になることもできる」

「人型になる?」





私が聞き慣れぬ言葉に首を傾げたのと同時に、目の前の二匹がくるりと一回転ジャンプをきめる。
その華麗さに見とれたのも一瞬のうちで、二匹が地面に着地したその瞬間目の前に見知らぬ二人の人間が現れた。





「だ、誰ッ!?」





一人は襟足を少し長めに伸ばした白銀の髪とつり上がり気味のアーモンド型の真紅の瞳を持つ少年。
もう一人は背中までワイルドに伸ばされた黒髪と切れ長の琥珀色の瞳を持つ青年。
二人とも文句なしの美形で、右目の下に紫色の蔓草模様が描かれている。
しばしの間二人の美形っぷりに見入っていたんだけど、その容姿にすごく見覚えがあって途中で「あれ?」と疑問に思う。
こんな美形さん達、一度見たら忘れるはずなんてない。
てか、つい今しがた見たような気がするんだけど………。





「――――って、ああッ!!!」





不意にさっきまで目の前に居た二匹の動物の姿が蘇る。
そうだよ、思いっきりさっきまで見てたじゃん!!





「もしかしてこの二人ってさっきまでそこにいたぺルシーとハインド?」

「今さら気がついたのか?普通すぐにわかるだろ」





いやいや、わかんないって!
私の世界では動物が人間の姿になるなんてファンタジーなこと起こらないんだから!
思考が混乱しちゃうのは仕方ないことでしょ?





「わあっ、本当に!?すごいっ!!超すごいっ!!めっちゃファンタジーっ!!これこそ異世界トリップっ!!!」





あまりの興奮に私は椅子から立ち上がり、二人(二匹?)のもとへと走り寄る。
突然近づいてきた私に二人(二匹?)はびくっ、と体を固まらせ警戒心を露わにしたが私はかまわず彼らの手を取ってはしゃぎまくった。
ここではしゃがずいつはしゃぐのだ!!ってくらいの場面でしょ、ここは。





「……カリン、そろそろ落ち着け。怯えてるぞ」





レイシスが呆れた声でそう言うまで、私は二人(二匹?)の周りをぴょんぴょんと飛び跳ねてはしゃぎ続けていた。
もう、興奮が止まないって感じ?
落ち着こうと思っても胸の高鳴りが止まないぜ☆






「ねえねえ!あなたたちって名前とかないの?」





止められない胸の高鳴りのままそう質問すると、彼らは顔を見合わせた後戸惑うような視線をレイシスに向けた。
レイシスはそんな彼らの視線を受け止め私をちらりと見た後、一言「教えてやれ」と言った。





「私はシルヴィーと申します」

「私はダグリスと申します」





ぺルシーの方のがシルヴィー、ハインドの方がダグリス。
よし!(たぶん)覚えたっ!!





「私は花梨っていうの。よろしくね!」





にっこりと笑って見せると彼らはまた戸惑ったようにレイシスの方を見た。
……もう、さっきから何だって言うんだ!
そんなにレイシスが気になるのかね、君達は!!





「シルヴィー、ダグリス、仲良くしてやれ。カリンはこれからお前たちの仲間になるんだからな」





何とも偉そうな態度で彼らに命令するレイシス。
王様だから偉そうなのは仕方ないかもしれないけど……何かムカツクわその言い方。





「私どもの仲間、ですか?」

「ああ、そうだ」

「しかしこの方は人間なのでは……?」

「確かにそうだが、まあ色々と理由わけありでな。お前らの仲間としておいた方が都合がいいんだ」





ちょっとちょっと!!
話がまったく見えないんですけど!!
誰か説明してよー!





「ねえ!仲間って何?ちゃんと説明してよ!」





ここで声を上げなければ誰も説明してくれなさそうだったので、思いっきり声を張り上げるとレイシスが「ああ、まだ説明してなかったな」とか何とか言いながら私の方を向いた。
私を見つめるその顔にはとても真剣な表情が浮かんでいたので、釣られて私も意識を引き締めた。





「カリン、最初にも言った通りお前には我のペットになってもらう」

「だからそれの意味が分かんないんだって!」

「人の話は最後まで聞け。もちろん本物のペットになるわけじゃない。この王宮に滞在する間はペットのフリ・・をしてもらうだけだ」

「ペットのフリ・・?」





なんじゃそりゃ。
ペットにフリもマジもあるのかい?






「シルヴィーとダグリスが魔力を持った人型になれる動物だということはさっき説明しただろ?」

「うん」

「お前もそういう動物だってことにするんだ」

「は?」

「だから、お前もシルヴィーやダグリスのように魔力を持った人型になれる動物で、新しく我のペットになったものだということにするんだよ」

「何だそれー!?」





何でそんな設定にしなきゃいけないのさ!!
そりゃあさ、人間だって動物の仲間だけど、だからってなんでフリでもレイシスのペットにならにゃいかんのよ!!
あたしの人権は何処いずこへ!?





「いいか、カリン。お前の正体が曖昧である以上、お前は我の監視下に置かないとならない。そうなるとな、必然的にお前は我と共に過ごす時間が多くなる。異世界から来たお前には分らんかもしれないが、王宮というのは決して良い場所ではない。策略と陰謀が渦巻く魔の巣窟だ。そんな場所で、国王である我の傍にお前のような素姓の知れぬ女がいたら皆どう思う?俺との関係に変な勘ぐりを働かせて噂されるだけでなく、最悪命を狙われるかもしれないんだぞ?お前はそれでもいいのか?」





レイシスの言葉にハッとする。
そうか、ここは王様が存在する世界なんだ。
よくトリップの王道とかで繰り広げられるようなドロドロの争いに塗れた王宮。
そういう所に私はいるんだ。





「……殺されるのは、嫌だ」

「だろう?なら大人しく我の言うことを聞け。王宮に居る間、我のペットとして大人しく過ごすならばお前の命は何があっても我が守ってやろう。衣食住の心配をする必要もないし、お前が元の世界に戻れる方法も探してやろう。……どうだ?なかなかの好条件だと思うがな」





確かに、ペットになること(あくまでフリだけど!)を除けばこれ以上ないってくらい好条件だ。
はっきり言って元の世界に戻れる方法を探しながら、よく知りもしない異世界を一人で生き抜いていく自信はない。
ここはレイシスの提案を呑むのが一番良いのではないだろうか。
………例えフリだろうとペットってのがものすごく不本意だけど。





「わかった。私、レイシスのペットになる」





何の前触れもなく飛ばされた異世界。
右も左もわからないそんな世界でまさかまさかのペット宣言。









人生何が起こるか分らないって、こういうことを言うんでしょうね……。















前回、更新を早くできるように頑張りますとか言っておきながら、またしても更新が遅くなってしまいました(ーー;)
本当に申し訳ありません!




新キャラも登場し、無事(?)ペット宣言も果たし、ようやく花梨の王宮生活が始まります。
目指す所は主人公至上主義の溺愛ものなのですが……それはまだ先の事になりそうです。


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