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吸血鬼と後輩少女
作:狂乱者




人里離れた山の麓に聳え立つ巨大建造物
まるで要塞
夜だと言うのに、大勢の人物が銃を持って見回っている

「正直・・どうよ?お前んとこの給料は・・」
「いや・・良くはない・・つか、同じ職場だろうが・・」
二人の兵士が溜め息を吐きながら、長い廊下で歩きながら話していた
「まぁな・・それより、最近、子供はどうよ?」
「いやー・・それが可愛いのなんのって!あはは・・・」
「・・親バカ・・・」
そんな一般兵士が話している・・・

同時刻

要塞 最上階

「バッ・・バカなぁぁぁ・・・!!」
髭を生やし、少し太り気味の男性がしゃがみ込みながら、絶望していた
そんな男性を酷く冷たい眼で見下している少年が一人
茶髪のショートヘアーに緑の瞳を持っている少年である
その部屋に一人の少女の明るい声が響き渡る
「センパーイ!爆破準備完了です〜!」
「ご苦労・・じゃ、転送準備にかかれ」
「うぃーっす!」
声は消え、再び静寂が部屋を支配する

「じゃ・・帰りますか・・」
少年が男に背を向け、部屋から立ち去ろうとした瞬間
「貴様ぁぁ・・・!!私の計画を壊しといて・・!!逃げられると思うなよ・・!!」
男が手に拳銃を持って、少年目掛けて放った
しかし、弾は鉄の扉に当たり、虚しい音が響くのみ
「遅すぎるぞ・・オッサン・・少しは痩せたらどうだ?」
「なっ・・!?ガグッ・・・」
一瞬でオッサンの背後に回った少年は踵落としを喰らわせ、気絶させた
「先輩!転送しますから、直ぐに外に出てください!つか、出ないと私が一人ぼっちで帰るハメに・・ウルウル・・・」
またも聞こえてきた少女の声
少年は溜め息を一回吐いてから、返事をする
「・・ハァ・・わかったから、眼を潤ます効果音をやめろ。非常にムカつく・・」
「は〜い!じゃ、今から三十秒後に転送します!爆破は四十秒後ですから!」
それだけ述べると声は途切れた
「ったく・・・」
少年はすぐさま外へと飛び出した
途中で一般兵達が「む・・今、何か通らなかったか・・?」「風だろ・・」という
会話をしていた

そして三十秒後

「おぉ!?身体が光に包まれる!?」
一般兵やオッサンは光に包まれ、その要塞から消えた
そして十秒後

とある要塞が爆発
少年はその要塞の最後には背を向けていた
振り返る価値も無いからだろう
そこへ・・・
「センパ〜イ〜!!むぎゅっ!?」
「抱きつくな、鬱陶しい」
「そんにゃ!?先輩への精一杯の愛情表現が!?」
「無駄に噛んで猫語になるのはやめろ。精一杯の愛情表現なんぞ要らん」
「も〜先輩ったら〜照れちゃって〜」
「そんな訳無いだろう、自意識過剰もいい加減にしろ」
「そんな事言っちゃって!可愛い〜!」
「くっつくな」
こんな風に少年とコミュニケーションを取る少女は、先程まで部屋に響いていた声の少女の様だ
オレンジのポニーテールに赤い瞳を持つ少女である

「早く帰りましょう!先輩!」
「お前がくっつくからロクに動けないんだろうが・・」
少女に呆れつつある少年の腕に腕を絡ませて、少女はご機嫌に帰っていく・・・



ギルド本部

ギルドは、寄生兵器「コア」が蔓延る世の中で唯一機能する巨大組織
いわゆる警察である

その内部に先程の少年と少女の姿があった
食堂らしき部分で食事を取っているようだ
「はい。先輩。あ〜ん」
「誰がするか」
少女は相変わらず、少年にベットリである

そこへ、二つの声が二人に掛かる
「あ、レイと詠ちゃん。お疲れ様」
「相変わらずアツいな・・・」
赤く長いマフラーをし、グレーのショートヘアー
ランニング状の服に黒いジーンズを履いている少年と
その少年の影から出ている触手の先端に狼の様な顔が付いている物が二人に話しかけたのだ
「お疲れ。シュリとクエルも今、帰ってきたのか?」
少年・・レイは軽く手を挙げ、シュリと呼ばれた少年に返事を返す
「うん。ちょっと細菌の開発阻止にね」
「そーゆーお前らも今、帰ったのか?」
シュリの影から出ている狼の顔を持った物・・クエルが、今度は問う
「まぁね。裏金で色々とやっていたバカ達に正義の鉄槌を下して来てやったの」
女性・・詠がそう答える
「そりゃ、お疲れさん」
「そっちこそ、お疲れ様」
シュリは二人の正面の席に座る
と、同時にクエルもシュリの影から離れ、真っ黒い人型へと変化する
容姿はシュリに近いが、赤いマフラーが無く、代わりに頭にヘッドバンドをしていた

「ふぅ・・喰った喰った〜」
クエルが満足そうに言う
ちなみに、クエルが食べたのは「エビチャーハン」である
「そうか・・お前達は暫く休みか・・」
「うん。最近、働き過ぎだったし・・ちょっとしたお休みを貰えたんだ」
「いーなー!先輩!私達も次の任務が終わったら・・・二人っきりで気持ち良い事しません?」
「断る。一人やれ・・とは言わんぞ。お前と同じ部屋だからな・・・」
「も〜先輩ったら!恥ずかしいですよ〜!」
「あはは・・・」
レイと詠の会話を聞いていて、クエルは呆れ、シュリは苦笑いを浮かべていた

「じゃ、俺らは次の依頼があるんで」
「じゃ〜ね〜」
「うん。気をつけてね」
「おぅ。気をつけろよなー」
そんな言葉を交わし、レイと詠は食堂から出て行った
「相変わらず、仲良いな・・あの二人・・」
「そうだねぇ・・・」
「・・お前も彼女、見つけたらどうだ?」
「・・えっ!?か、かかかかか彼女!?」
クエルの何気ない一言に顔を真っ赤にするシュリ
「・・お前、本当に初心だな・・・」



数時間後


レイと詠が辿り着いたのは高層ビルのみが立ち並ぶ土地
名を「UMG」・・アンリミテッド・マニー・グリード
金の金による金のためだけの街
強欲な人間ばかり住む街で、最近、不気味な事件と奇妙な事件の二つがが起きていた

最近、病院に意識不明の重病患者ばかり運ばれてくるのだ
外傷はほぼ無いのだが、血が大量に無くなっている
こんな事件ばかり起きるので気味悪がった住人の一人がギルドに依頼した
これが「奇妙」な事件
「不気味」な事件も多発していた
それは、頭部が無くなっている人物の死体が出てきた
最初は「奇妙」だけだったが、事件発生から一週間後ぐらいから「不気味」な事件も起きてきた
これを踏まえて、ギルドに依頼が出された
そして、それを受けてやって来たのが、レイと詠である
二人は事前に状況を把握していたため、最初に夜の街の捜索から始めた・・・




「あっ・・先輩のココ・・凄く・・硬い・・///」
「凄い・・たくましい・・///」
「熱い・・です・・先輩のココ・・・///」
「あっ・・私・・もう・・ダメ・・です・・あっ・・///」





「何でマッサージだけでこんな誤解を招く言い方をする必要がある?」
「硬いのは肩だ。背中がたくましいのは鍛えているからだ。熱いのは歩き回ったから、身体が火照っているんだ。マッサージに疲れたからって変な声を出すな」
「は〜い。でも・・先輩、あの晩は私をあんなにも愛してくr「黙れ。既成事実を作ろうとするな」
「てへっ☆」
「てへ、じゃない」
二人は夜の街を歩き回って、この街に唯一存在する公園のベンチで休んでいた
そこで詠が「先輩〜マッサージしますよ〜」なんて言った事から始まった
「全く・・・ん?」
「どうしました?先輩」
レイは黙ったまま、意外と広い公園の一角を指差す
そこには・・・

「よぉぉぉぉぉし・・これでOK!さっさと帰るべし!べし!」
「うぃ〜・・っす!!了解!非常に疲れたから帰ろう!そうしよう!」
「至極当然!帰ろう!うん!」
やたらとハイテンションな三人組の男が手に注射器を持ったまま、騒いでいた
その傍らには気絶して、倒れている女性が見える
「先輩!あれって・・・」
「可能性は大きい・・いや、正解かもな・・・」
言い終わると同時にレイは走り出す
「転送準備しながら来いよ」
「了解です!」
詠は身体から青白い光を少し出しながらレイの後を追い始めた

「おい、お前ら」
「ふぇ?」
「な、なななな何だYO!」
「ギッチョン!ギッチョン!」
三人の男はやはりおかしい
レイは問答無用で二人を蹴りで気絶させ、残った一人を地面にひれ伏せた
男の背中に馬乗りになり、手を押さえつけ、質問をする
「答えろ・・何をしていた?」
「ガゲゲッ・・ひ、人のDNAを大量採取して、それを研究施設に持ち帰って、地球外生命体と 融合させてから生物兵器として売り捌いて儲けていたんだよ!」
「いや、そこまで言えとは言ってないが・・まぁいい、手間が省けた」
男は下で暴れているが、レイの力には敵わないようだ
「今までの事件はお前達の仕業か?」
「そ、そうだよ・・!研究施設は街から西に3キロ離れた荒野のボロ小屋の地下だよ!入るパスワードは「息子」だよ!」
「お前・・心読めるのか・・?別にいいけどな・・・詠、コイツら転送しといてくれ」
ようやくやってきた詠にそう言い、レイは残った男を蹴りで気絶させた
「了解ですー・・って、情報はもう聞き出しので?」
三人の男を「ギルド本部」へ転送しながら詠はレイに問う
「あぁ・・勝手にペラペラと喋ってくれたよ・・」
何処か微妙な顔をしながら、レイは街の西側を睨む
「?」
不思議な表情をしながらも、詠は男三人を転送した詠は呟いた
「じゃあ、この人を病院に運びましょう」
「・・そうだな」
とりあえず二人は気絶していた女性を抱えて、病院に向かった





そして、二人は街から西に3キロ離れたボロ小屋の中でパスワードを打ち終えた
見張り役が二人ほど居たが、レイの蹴りで気絶させてある
「おぉ!開きましたよ!先輩!」
「情報が嘘じゃなかったな・・嘘だとしても、そこに居る奴らから聞き出すだけだったがな・・」
レイの眼が気絶している見張りに向けられた
「まぁいいか・・行くぞ」
「了解です!何時も通りの手順ですよね?」
「ん」

何時もの手順とは
まずはメインコンピューターがある部屋を制圧
そこで詠の天才的なハッキングで施設を乗っ取る
その間にレイは首謀者を仕留めに行く
というのが二人のやり方である

当然、今回もそれで行くつもりだ
二人はまず普通に侵入
何故か、監視カメラは一台も無し
すんなりと進む二人
途中で研究員に出会ったが、レイの素早い行動で気絶させる
「流石、先輩〜!」と、事あるごとにレイに歓喜の言葉を投げかける詠を完全無視して
何事も無く、二人はメインコンピューターがある部屋に辿り着いた


制御室

「こんなもんか・・」
レイの視線の先には気絶している研究員が五人ほど居る
詠は早くもキーボードを高速で打っていた
その動きは神がかり的な物を感じさせる
「じゃ、此処は任せた」
「了解〜。先輩もお気をつけて!」
「分かってる」
簡易な言葉をかわし、レイは再び走り出す
目的の部屋は、先程、詠が画面に映し出してくれた「総統室」


総統室

「全く・・こっちには少しでも時間が欲しいってのに・・・!!」
自分の机の上に置いてある画面を見ながら、青髪のショートヘアーに蒼い瞳を持つ、白衣を着ている女性は呟いた
「先日、大手企業の一角が謎の爆発を遂げましたからね・・その影響でしょう」
その女性の傍らでは
黒一色の服装で上下が繋がっており、黒いショートヘアーを逆立て、黒い丸渕サングラスをかけている男がそう呟いていた
「怨鬼・・その情報は本当?」
女性は怨鬼オンキと呼んだ男性を睨みつける
「ルーツ様には十五時間程前に述べましたが」
睨まれても、怨鬼は慣れているのか、あっさりと返した
「うがーーーー!!良い!?あと少しでこの忌まわしい研究ともおさらばなの!あと少しの金さえ手に入れば・・私は・・・」
怒ったが、急に俯いたルーツと呼ばれた女性はそのまま黙ってしまう

その時、怨鬼はある事に気が付いた
「・・ルーツ様。侵入者のようです」
「・・ネズミ?それとも一般人?」
「・・これをご覧下さい」
怨鬼はルーツが先程までイジっていたキーボードを数回叩く
すると、画面に廊下を走っているレイの姿が映し出された
「普通の男じゃない・・これがどうs「奴の襟首のバッチにご注目を」
「え・・・?・・!!」
ルーツの顔に驚愕が出る
レイの襟首にあったバッチには「ギルド」と書かれていた
「ギルドって・・!この研究施設がバレたか・・!!」
ギルドの存在は、この世界の裏に居る人物なら誰でも知っている
非常に厄介な組織である
ルーツにとってもそれは同じ
「この部屋に真っ直ぐに向かっているようですが・・セキリュティシステムは完全にダウン・・ どうやら乗っ取られているようですな」
それでも怨鬼は落ち着いている
「くっ・・!!ここまで来て・・・!!」
怒りを露にしながら、画面に移っているレイを睨む
「どうしますか?」
怨鬼はそう尋ねる
「・・・この調子じゃ研究員も既に捕まった後ね・・判った・・一旦、逃げて、身を隠す」
「追っ手を完全に巻いてから、第二研究施設に移動するので?」
「そうよ・・あそこは此処とそんなに大差無いからね・・只、品物と研究員が居ないだけ・・」
完全に痛手である
この施設は「生物兵器を作り出し、売る」という工程を行っている施設
その肝心な品物と作り出す人間が居なくなるのだ
「くそっ・・・!!ギルドめぇ・・・!!」
執拗に怒りを振りまくルーツに対して、怨鬼は静かに扉の前へと移動する
「・・怨鬼・・?」
「どうやら来たようです・・早く非常用階段からお逃げ下さい。あそこならばセキュリティも行き届いておりませんので」
「わ・・分かったわ・・貴方もすぐに追いつきなさい」
ルーツはすぐに扉とは真反対にある階段に手をつけた

その直後・・・

扉が吹き飛ばされた
同時に、怨鬼は何処から出したのか、マシンガンを取り出し、放った
レイはすぐさま攻撃を交わすと、怨鬼と対峙した
「ギルドの者だ。生物兵器製造などの罪により、お前らを逮捕する」
複数形なのは、レイが逃げ出す直前のルーツを視界に収めたからだ
しかし、そのルーツはすぐに非常階段から逃げ出してしまっていた
「一人逃亡か・・逃がすとでも?」
レイは階段に向かって走り出すが、すぐにその行動は回避行動へと変更される
怨鬼のマシンガンがレイ目掛けて発砲されたからだ
「ちっ・・・」
空を飛び、怨鬼と再び対峙する
「妨害するなら、お前の罪は更に重くなるぞ」
「・・・」
怨鬼はルーツと話していた時と打って変わって、無口になっていた
返事の代わりにマシンガンを捨て、片手持ちのバズーカ砲を服の中から取り出し、右手で持つ
「後で罪が重くなった事・・後悔すんなよ・・」
レイは姿勢を低くして走った

バズーカの弾が発射される
レイは一直線に飛んでくる弾を横っ飛びでかわし、そのまま懐に潜り込んだ
しかし、怨鬼の身体能力も並ではない
片手持ちのバズーカをトンファーの様に扱い、レイを吹き飛ばしたからだ
また、吹き飛ばしたレイ目掛けて、再び弾を発射した
回避行動中のレイには辛い攻撃である
「嘗めんなよ・・!!」
レイは受身を取り、そのまま右足で弾を弾き飛ばした
弾はそのまま壁に衝突し、爆発
怨鬼は爆発の瞬間に、レイの目前まで移動
だが、レイは怨鬼より上を行く身体能力の持ち主
その行動を読み、怨鬼の背後に回っていた
「うらっ!!」
そのまま右足で背中を蹴る
だが、怨鬼は吹き飛ばされず、その攻撃に耐え切った
「なっ・・・!」
驚くレイだったが、すぐにバック転を繰り返し、距離を取る
今度は怨鬼がその行動を読んでいたのか
服の中から取り出したスイッチを左手で押す

すると・・・

「くっ・・・!?」
レイの近くの数箇所で爆発が発生
怨鬼が予めに仕掛けておいた物らしい
爆風と煙が立ち込める
「・・・」
そんな中、怨鬼は黙って煙の中を見続けていた
しかし、何時まで経ってもレイの姿は確認できない
怨鬼はそのまま背を向け、階段へと向かい始めた

「・・・言わなかったか・・?後悔するなよ・・ってな・・」
「・・・!」
怨鬼が背後から聞こえた声に気付き、振り向いた瞬間には、腹部に深く鋭い蹴りが喰らわせられていた直後だった
怨鬼は吹き飛び、壁に背中から衝突する
そのまま座り込んでしまった
「ったく・・危ない野朗だな・・・」
レイは文句を言いつつも、怨鬼へと歩み寄っていく
どうやら、爆発の際に上空に飛び、爆発を回避
その後、煙に紛れて攻撃に移ったようである


「・・・貴様は三度、命を救われた相手に忠誠を誓わないか?」
座り込み、地面を向いたまま、怨鬼は近づいてきたレイに問う
「何?」
「あの方は過去に、三度だ・・三度も俺の命を救ってくれた・・どんなに非情でも人間ならば恩を感じるだろう・・それ故に、俺はあの方の目的のために命を賭けれるのだ」
「恩の返し方が間違ってんだよ」
怨鬼の言葉をそんな風に自分の意見で返す
「・・フン・・貴様にはわかるまい」
「わかりたくもねぇ・・で、あの女の行き先・・は、良いか・・目的は何だ?」
レイは悪魔で冷酷な眼で相手を見下したまま、問う
「・・冥土の土産だな・・此処で生物兵器を造っていたのは、金のためだ」
「金?」
「そう・・あの方は過去に息子を事故で亡くされてな・・息子を蘇らすために個人で研究できる施設が欲しいがために、大手企業に生物兵器を売りつけ、金を稼いでいた・・ってわけだ」
「・・・バカか、お前も、あの女も」
「・・第三者の意見だな」
呆れたように言い放つレイ
それを怒りでなく、冷たく返す怨鬼
「まぁいい・・お前も逮捕する。あの女はその後で捕まえる」
レイが怨鬼を気絶させようと、右足を振り上げるが・・・

「俺も言ったハズだぞ・・?冥土の土産だとな」
その前に怨鬼の服の中が輝き始めた
「おまっ・・!?自爆・・・!?」
部屋から逃げようとするレイだが、既に遅い



爆発音が部屋の中に響いた






制御室

「危なかったですね!先輩!」
「・・ああ、助かった」
「じゃあ!お礼の・・・ん〜〜〜」
「・・何だ?眼を瞑って、顔をこっちに向けて」
「ほら!恋人同士がよくする奴ですよ!」
「・・・ドロドロの三角関係?」
「違いますよっ!!キスですよ!!」
「・・・すまんな。気分が優れなくなってきた・・」
「先輩!嘘はもっと上手い奴を吐いて下さい!照れ隠しって事がバレバレですよ!」
「黙れ」
どうやら、詠が怨鬼爆発の瞬間にレイを制御室に転送したようだ
この様な使い方もできるので、転送能力とは役に立つ能力である
「じゃ・・詠、此処のデータは本部に送ってあるな?」
「勿論!」
「次、あの女の行き先は?」
「街の東部分に値するビルの最上階です!」
「了解。すぐに追うぞ」
「うぃっす!」
詠は地上にセットしてあった監視カメラやルーツ本人が自己安全のために、自分に仕掛けてあった発信機を使って、居場所を突き止めていた
そして、二人は街の東部分に位置するビルの最上階へと急いだ
その前に此処に居る研究員たちを転送し、施設を爆破してからである



街 東側に位置するビル 最上階


「はあっ・・・はあっ・・!」
息を切らしながら、ルーツは回転式の椅子に座る
最上階はルーツ本人の部屋で、このビルはルーツが買い取った物である
此処にも生物兵器は眠っているが、起動もしないし、使い物にならない
いわゆる「欠陥品」である
廃棄処分は全て、このビルで行われていた
「畜生・・!ギルドめ・・!!」
背もたれに寄りかかり、右手で顔を仰ぐ
部屋の中にはあまり物は無い
広い部屋には机と回転式の椅子
そして壁はガラス張りの窓となっていた
この街の光景が一瞬でわかる程、景色は良好
この部屋に物が無いのは、現在は研究施設に住み込んでいるからだ
それも、今では跡形も無くなっているが・・・

その時

扉の開く音がした
「・・・!!」
ルーツはすぐさま椅子から下り、身構える
入ってきたのはレイと詠
だが、ルーツには特殊能力など無い
あるのは生物兵器を造り出す知識のみ
もはや用が無くなっているこの部屋では防御システムなども存在しない
絶体絶命
「違法生物研究、死体遺棄などの罪で・・お前を逮捕する」
「観念しなさいっ!」
レイの後ろで詠がビシッと指を刺す
「・・・フン、此処まで来られるとはね・・・」
もう諦めた感じでルーツは自嘲気味に笑う
「お前の目的・・あの男から聞いたが・・」
「怨鬼から・・?珍しいわね・・アイツが身内以外の奴に話すなんて・・」
ルーツの言葉など無視して、レイは語り始める
「ハッキリ言おう、お前のやろうとしている事はバカの極みだ」
「なっ・・・!?」
驚愕と怒りを交らわせた表情でレイを睨む
「あ、アンタなんかに何がわかるっていうの!?」
「分かるわけないだろう。でなきゃ批判などせん」
「くっ・・じゃ、じゃあ!黙ってなさいよ!!第三者から見たらバカな事かもしれない・・けど!!それでも・・!!私にとっては・・あの子との日常は幸せだったから・・・」
俯き、床に水滴が落ちる表情を決して見せないルーツ
詠は黙って、レイとのやり取りを聞き続けている


「確かにバカだ・・・だがな、その子供を思う気持ちだけで子供にとっては・・・十分じゃないのか?」


「ッッ・・・!!」
その一言にはどんな意味が込められていたのだろうか
少なくとも、ルーツには何かが響いたようだ
俯いたまま、静かに語り始める
「アンタ・・死んだ旦那にそっくりね・・常日頃は冷たい癖に・・変な所で優しいとこが特に・・・」
「フ、フン・・・」
少し動揺したのか、レイはそっぽを向く
そんなレイを見て、詠は「む〜」と頬を膨らませていた
「・・逮捕・・するんでしょ?」
ルーツは立ち上がり、大人しくしていた
抵抗する力など無いようだ
それほどまでにレイと旦那が似ていたのだろうか・・・
「あ、あぁ・・・詠」
「む〜・・あ、はーい」
少し怒った詠の表情に「?」を浮かべながら、レイはルーツを見る
そのルーツの表情は何処か晴れ晴れとしているように見えた・・・




「見ツケタゾ・・・我ガ憎悪ノ対象」




その声がレイの耳に届いた
直後、窓ガラスが割れ、一匹の生物が飛び込んできた
「なっ・・・!?」
「えっ・・・?」
「きゃっ・・・!?」



刹那

詠の顔に生暖かく赤い液体が掛かった
それは血
先程まであったルーツの頭が食べられた際の出血
今では頭は無く、首から血を噴出して仰向けに倒れているだけの死体

更ニ惨劇ハ続ク


その衝撃の光景に気を取られていた詠の腹部を何かが突き抜ける
「あ・・・」
驚愕の連続で痛みを感じるまで数秒掛かった
いきなり意識が消えかかりそうになる
その直前に視界に飛び込んできたのは、先輩の叫んでいる顔
私の心配でも・・してくれてるのか・・な・・・



「詠っ!!」
レイが叫ぶ
同時に、詠を突き刺していた突起物がうねり始め、詠を壁際まで投げ飛ばす


「良薬、口に苦し・・とはこの事か」


深い緑色のショートヘアーに黒い瞳
ボロボロの黒い布切れで全身を覆っている男が静かに呟く
その口元には大量の血痕
ルーツの頭・・否、脳ごと頭を喰った血である
「お前・・・!!」
「ほぅ・・知力はあの憎悪の対象以下だが・・身体能力はダントツで上か・・」
ジュルリ・・と唾液を床に落とす男
「先にあのオレンジの女を食そうかと思ったが・・変更だ・・「堕落」の餌となれ。男」
自らを堕落と名乗る、「かつてルーツが造った最初の欠陥品」は述べる
鋭い爪を世話しなく動かし、その長く鋭い尾を嬉しそうに振りながら、八重歯のみで構成された歯の間から唾液を垂らしながら・・・

「邪魔だっ・・!!早く詠を手当てするっ・・!!」
怒りに駆られ、レイは堕落に向かって走る
その速度は光速・・とはいかないが、それに近い側であった
「キッ・・!」
堕落は歓喜に満ちた表情で、レイの蹴りを尾で防ぐ
「死ねっ・・!!」
レイはすぐさま次の蹴りを繰り出す
「急がば回れ・・とは聞かぬか?」
その蹴りは堕落の爪によって食い止められた
更に、爪はレイの左足に深く食い込んでいた
血が床に落ちる
だが、痛みを感じないようにレイは食い込んだ爪を振り払うように足を振るう
流石に、その行動までは予測していなかったのか
堕落は壁際まで吹き飛ばされるが、壁に張り付き、天井へと移動する
「馬鹿力・・神経麻痺か?」
「黙れ・・!!」
レイは天井に居る堕落目掛けて飛ぶ
蹴りを繰り出すが、堕落は何と、繰り出したレイの足の上に着地した
「ッ・・・!!」
「身体が軽いのが特徴でな」
そのままレイの腹部を尾で突き刺し、床に着地する
その鋭く尖った爪を両肩に突き刺し、完全に動きを止めて・・・
ようやくやって来た激痛により、レイの動きが一瞬鈍った
「泣きっ面に蜂か・・いや、蜂では無く、死神だがな」
レイの顔の目の前で大口を開ける堕落
その口の中には鋭く尖った舌
唾液に塗れながら、獲物を突き刺そうとする舌が見える

「一撃必殺」
「ッッ・・・!!」
レイはそれでも眼を閉じず、堕落を睨み続けた
そして、堕落の口から鋭利な舌が急激な勢いで飛び出してくる

「ぐ・・むっ・・?」
違和感を覚えたのは直後
堕落の尾は血塗られたまま地面に突き刺さっている
鋭利な舌は無様にも地面に穴を開けている
だが、そこに・・死ぬべき男の姿は無い
「何・・・?」
すぐさま背後を振り返る
そこには両肩、左足から血を出し続けているレイが立っていた
その眼はやはり堕落を睨み続けている

「へへっ・・思い・・知りました・・?」
弱弱しいが、この空間では十分過ぎる声が壁際から聞こえてきた
そこには苦しそうに笑っている詠の姿が見えた
どうやら、堕落に攻撃される直前にレイを転送した様だ
「先輩・・あとは・・御願いします・・ね・・・」
「・・・わかったから、少し休んでろ」
「あはは・・は、はい・・」
詠はそのまま眠るように気を失った

「油断大敵」
堕落は会話をしている一瞬の隙を突こうとするが・・・
「キッ・・!?」
尾が突き刺さっていて動けない
同時に、この場から動けないという意味でもある
「・・・殺人の罪により・・この場で死刑」
レイの右足に蒼い光が収束されていく
「ギギッ・・!死して屍拾う者無しか・・?ギッギッギッ!」
心底可笑しそうに笑う堕落に対して、その一撃は放たれた

「一生くたばってろ。欠陥品」

強大な一撃は
欠陥品を原型残さずに消し去った












「ふわ・・・あれ・・?」
詠は朝日が眩しい荒野の中で目覚めた
ただし、寝ていた場所は床でも地面でもなく、人の背中である
「・・先輩・・?」
「起きたか・・さっさと帰るぞ」
詠はレイにおぶさりながら寝ていたようだ
今でもおぶさった状態で会話をしている
「って・・傷はどうしたんですか?」
「・・忘れたか?俺は吸血鬼だ・・血を飲めば回復するし、俺の血を飲んだ奴も傷は治る」
「あぁー・・そうでしたね・・・」

レイ・バルディッシュ
その類い稀なる戦闘能力は幼少の頃に吸血鬼に噛まれたためである
しかし、他の吸血鬼と違い、朝日などには弱くない
普通の人間の進化版とでも言っておこう


「そーいえば・・何か唇が暖かかった感触が・・・」
「・・・気のせいだ」
「・・先輩〜。心臓が高鳴ってますよー?」
「ぐっ・・・早く帰還するぞ」
「あー!先輩!!ハッキリさせて下さいよぅ!」
「うるさい。黙れ。」
「うー・・まぁ良いか・・その代わり!帰ったら、今宵はたっぷり愛して下さいよー」
「・・方法による」
「じゃあ・・・大人の愛s「却下だ」
「えぇー!勝手にキスした癖にー!」
「ナンノコトカサッパリダナ」
「棒読みですよー!」


二人は何時もの調子・・・
いや、レイの態度は少し素直になりつつも、帰路へと着いた






報告書

今回の事件の首謀者は行方不明
死亡確率が高い
研究データ、研究員は転送済み
以上














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