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異世界で魔法を覚えて広めよう 作者:早秋

第2部4章

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(5)マグスとの会話

 エリーナとジェフリーの体力が回復したあとは、クリステルも加わって三体一での模擬戦だ。
 ただし、二人から三人に人数が変わったからといって、特に状況が変わるわけではない。
 セイヤは三人の攻撃を軽くあしらいながら、今度はお仕置きというわけではないので、指導に切り替えていろいろな助言をしていく。
 その指示に従って、三人は連携を深めて行くが、それでもセイヤにその攻撃が届くことはなかった。
 最終的には、悔しがった三人によって、ただただ感心したように模擬戦を見ていたキティとイアンが、強制的に加わるようにと言われて戦っていた。
 その際、やはりというべきか、キティは乗り気でイアンが及び腰だったのは、二人の性格を現しているといえるだろう。
 それはともかくとして、人数が五人に増えたとはいえ、いきなりの参加で連携が上手くいくはずもなく、あえなくセイヤによって撃沈されていた。
 それら一連のやり取りは、他の訓練場利用者にも見られていたのだが、セイヤたちは最後までそれを気にすることなく、訓練場を後にするのであった。

 
 訓練場を出たあとは、ごく自然に解散となった。
 このあとは特にすることもなく、時間も中途半端なためやることが無かったためだ。
 まずはキティとイアンが離れる旨を伝えると、クリステルもすぐに寮へと戻って行った。
 エリーナとジェフリーは、今晩はセイヤと一緒に、屋敷で夕食を共にすることになっている。
 以前と比べてすっかり丸くなってしまっているリゼは、きちんとセイヤの為に合格祝いを用意しているのだ。

 時折厭味ったらしい言葉は飛んでくるだろうが、それくらいは普通にありそうな範囲内のことでしかない。
 というよりも、リゼも現状の空気を読んで、その程度に敢えて抑えている雰囲気がある。
 例えセイヤが周囲にそれで愚痴をこぼしたとしても、生活態度について注意をしているだけだと言える範囲内なのだ。
 その辺りのバランス感覚は、しっかりと社交界を渡り歩いているだけのことはある。
 良く言えば、セイヤに苦言を言ってくる近所のおばさんという印象しか受けないように、現在のリゼは動いているのである。

 
 そんなリゼたちと夕食を終えたセイヤは、自室に戻ってこれからのことについてどうするかを考え始めた。
 騎士団長との戦いで外気法を見せた以上、それについても多方面から聞かれることになるのは間違いない。
 それによって、周囲がどう動くかが問題になる。
 どんな世界、どんな組織であっても、現状維持以上のことを求めない勢力がいるのは、同じことなのだ。
 セイヤ自身はたとえ大多数で攻めてこられても、魔法が広まっていない今なら切り抜ける自信はある。

 だが、それでは「世界に魔法を広める」という目的が達成できない。
 なぜなら、極端な話、セイヤ一人が逃げきれても、周囲の者たちが倒されてしまっては意味がないからだ。
 それだと、結局セイヤだけが「魔法という技術を使えた特異な人間」ということで終わってしまう。
 神様からの依頼を達成するうえで必要なことは、セイヤが伝えた技術が使える人間が生き残って、さらにその技術を広めていくことなのだ。
 もっといえば、新しい技術が世界に定着するためには、一代だけで終わるのではなく、代を重ねて行く必要もある。
 そうするためにはどうすればいいのか。
 セイヤは、これまでもこれからも、そのことを常に考えて魔法を広めていかなければならないのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 合格発表があった翌日。
 セイヤは、転移魔法を使って領地へと向かった。
 用件は、マグスやアーロンに話があったわけではなく、新団員の募集を始めた『旭日』の様子がどうなっているのかを確認しに来たのだ。
 マグスの所はそのついでに寄るつもりだった。

「――私のところはついでか」
 一応、先に顔を出したセイヤに、マグスがそう言ってきた。
「それはそうですよ。父上には既に試験のことについては話をしたではありませんか」
「それはそうだが。……いや、待て。他に何かやらかしたのではないのか?」
 完全に信用していない様子でそう聞いて来たマグスに、セイヤはジト目で見返した。
「私は何もやっていませんよ。ただ、合格発表のときにクリステル嬢と一緒に行ったことで多少騒がれましたが」
「………………それは……確かに、やらかしとはいえないところだな」
 完全にセイヤのせいとは言えないので、マグスも微妙な顔になっていた。
 マグスはクリステルの側から婚約を望んでいることは知っているが、セイヤにそれを無理に押し付けるつもりはない。
 ただし、今の状況は既成事実を着々と積み上げられているようにしか見えないので、そんな表情になったのだ。

 とはいえ、今のマグスにとっては、別に気になることがある。
「お前が良いんだったら良いのだが、本当に見せても良かったのか?」
 以前にも騎士団長との戦いで見せた魔法についての話はしたのだが、今更ながらに外野の注目度にマグスも実感を伴って心配になってきたのだ。
 本来外気法を一般に見せるのは、内気法の扱いに世間が慣れてからとセイヤは考えていた。
 そもそも魔力というものの扱いに慣れるためにはそうしたほうが良いと、これまでマグスたちに教えて来たセイヤが決めていたのだ。
 それが、いきなり当てが外れてしまったことになる。

 マグスの問いに、セイヤは肩をすくめてから答えた。
「仕方ありません。贅沢を言えば内気法だけを使って勝ちたかったのですがね。騎士団長は流石といえますよ」
 外気法を使わなくても勝てる自信はセイヤにはあったが、それだと圧倒して勝つという目標は達成できないことになる。
 魔法の力を見せるためには、どうしても余裕をもって勝つ必要があったのだ。
「そうか。だが、いきなり外気法を教えろと言われるのではないか?」
 セイヤが内気法にこだわっているのは、何も教えやすいからだけではない。
 一度でも派手な外気法を見せてしまえば、内気法を疎かにして外気法だけを求めてくる可能性が高かったためである。
 内気法の訓練は、魔法の基礎力を高めるので、出来ることなら外気法を一般に教えるのは抑えておきたかったというのが本音だった。

 だが、こうなってしまった以上は、セイヤにもどうしようもない。
「それはそうでしょうが、そもそも好き勝手に魔法を教えるつもりはないですからね。無理矢理そんなことを言ってきても、突っぱねるだけです」
 結局、外気法にしろ内気法にしろ、魔法を教えるのはセイヤになるので、そこでコントロールしてしまうつもりだった。
 その上で、無理やりなことを言って来る者がいれば、そのときはきっぱりと拒絶するつもりでいた。
 何もセイヤは、自分にとって嫌な相手にまで、慈悲深く(?)魔法を広めるつもりはない。

 とはいえ、セイヤがそうした相手に拒否をすればするほど問題も起きてくる。
「そうか。……こちらに面倒が回ってきそうだな」
 セイヤが駄目となれば、今度はセルマイヤー家にお鉢が回って来ることになる。
 そうした者たちの相手をするのは、マグスの役目ということになるのだ。
「そうですね。魔法を上手く使って、頑張って立ち回ってください」
 マグスの言葉に、セイヤが頷いた。

 魔法(外気法)を教えろという陳情(?)は、面倒ごとではあるが、セルマイヤー領にとってはチャンスにもなる。
 何しろ、それを餌に有利に交渉を進めることが出来るからだ。
 それをどう使って相手と交渉していくのかは、それこそマグスの役目といってもいいだろう。
 そして、その範囲内においては、セイヤはマグスの行動を制限するつもりはない。
 もっとも、屋敷にいる誰もが(マリーを除く)、少なくとも実践的な外気法に関しては、他人に教えられる程の実力があるわけではない。
 そうなるためには、まだまだ時間がかかるだろうとセイヤは考えているのであった。
セイヤは、自分が直接教える相手に関しては、いろいろと吟味をするつもりですが、教えた相手が誰に教えるかはタッチするつもりはありません。
そんなことをしていては、いつまで経っても魔法は広まりませんからね。
ただし、現状、外気法を他人にきちんと伝えられるのは、セイヤを除けばマリーとシェリルくらいでしょうか。
ほかは、まだまだ火系統でいえば、ライター程度の火をつけるくらいのことしかできません。
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