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異世界で魔法を覚えて広めよう 作者:早秋

第2部4章

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(3)合格発表と紹介

 クリステルの用意した馬車で学園の校門まで来たセイヤたちは、そこで下車して合格者が貼られている掲示板のあるところまで歩き始めた。
 その間、セイヤたちは当然のように注目を集めたのだが、それは別にセイヤのせいだけではなく、別の理由もあった。
 その理由とは、セイヤが周囲の反応に耳を傾けていたときに判明した。
「…………クリステルは、生徒会長だったのですか」
 そう。顔をあまり知られていないセイヤが注目されるよりも先に、クリステルに注目が集まっていたのは、彼女が学園の生徒会長だからだ。
「ええ、そうですよ。それに、副会長は、エリーナです」
「……私は辞退したはずなんだけれど、いつの間にか、ね」
 多少呆れたような顔になって言ったエリーナを見て、セイヤは納得した顔で頷いた。
 ここ数日のクリステルの自分に対する行動を見ていれば、いざという時にはいろいろな手を使って来るということは分かっている。

 そのセイヤの顔を見て、クリステルが若干ムッとした表情になってセイヤを見た。
「なんだか、とても失礼なことを考えている気がするのですが?」
 その言葉にドキリとしたセイヤは、ニッコリと笑みを浮かべた。
「気のせいだと思いますよ?」
「はあ、全く……。それならそういうことにしておきます」
 全然納得していない顔でそう言ってきたクリステルに、セイヤは余計なことは極力考えないようにしようと決意をするのであった。

 
 合格発表の掲示板に近付いてくるにつれて、徐々にセイヤそのものに注目する視線が増えて来た。
 流石にそこまで来ると、先日試験で実際にセイヤの顔を見た者が増えて来たのだ。
 そこかしこで、「あれが……」とか「どうせ不正……」とか、様々な声が聞こえてくる。
 貴族の子弟にしては迂闊な言動とも受け止められかねないのだが、そう思われるのを見越してわざとやっている者もいる可能性があるので油断は出来ない。
 こうなることは覚悟していたセイヤだったが、予想以上に面倒なことになりそうな状況に、内心でため息をついていた。

 そして、書かれている内容が見えるまでに近付いたセイヤたちは、すぐにセイヤの合否を確認した。
 といっても、わざわざ探すまでもなく、セイヤの名前はすぐに見つかった。
「トップ合格ですか」
「まあ、流石セイヤね」
「だな」
 結果を見て頷きながらそう言った三人に、セイヤは何やら微妙なニュアンスが含まれている気がしてジト目になった。
「……何か不穏な空気を感じるのですが?」
「馬鹿いえ。文句があるなら、自分の点数を見てから言おうか。ほとんど満点に近いじゃないか」
 トップ十の成績優秀者は、点数までもが公開されている。
 お陰で、セイヤがどのくらいの点数を取ったのか、丸わかり状態だった。

 ここでプライバシーの侵害が、などと言葉に出すような愚は、セイヤは侵さなかった。
 そもそもそんな規則はこの世界には存在しないのだ。
 さらにいえば、成績優秀者は名誉になることはあっても、不名誉になることはないので、むしろ公開することが推奨されていたりする。
 それが、その子供の将来に関わる可能性が大きくなるのだから、ある意味当然ともいえるだろう。
 もっとも、どこかの貴族家や王家に関わるつもりがないセイヤにとっては、ほとんど意味のないメリットではあるのだが。

 一応(?)トップ合格を喜んでくれているクリステルたちにきちんと礼を言ってから、セイヤはそろそろ退散しようかと提案した。
 そのセイヤの言葉に、クリステルがキョトンとした表情になった。
「え? もうですか? 誰かと喜びを分かち合ったりは……」
 しないのですか、と続けようとしたクリステルの肩をエリーナがポンと叩いて首を左右に振った。
 そのエリーナを見て、クリステルが「あっ」と小さな声を上げた。
「……何やら微妙に馬鹿にされている気がするのですが?」
 二人のやり取りを見て、セイヤがそう言ったが、その言葉に力はなかった。

 さらに、クリステルが何かを言おうとする前に、ジェフリーが笑いながら言ってきた。
「何を言っているんだ。微妙にじゃなく、単に事実だろう?」
「ぐっ」
 セイヤに貴族の知り合いが少ないのは、ジェフリーの言う通り、紛れもなく事実である。
 こればかりは反論のしようがなかった。

 だが、そんなセイヤに、救いの神が現れた。
 ちょうどセイヤだけが見えて、クリステルたちには見えない方角からキティとイアンが現れたのだ。
「あ、やっぱりここにいたよ!」
「キティ、だからそんなに大声でなくても聞こえるから!」
 いつものようなやり取りをしながら近付いて来た二人に、セイヤは軽く右手を上げながら近付いて行った。
「二人とも来ていましたか。一応確認しますが、どうでしたか?」
 どちらも性格などに問題があるわけではないので、合格はほぼ間違いないが、セイヤはそう確認した。

 そのセイヤに、二人は一度顔を見合わせてから頷いた。
「勿論、合格はしているよ」
「セイヤほどの好成績ではないけれどね」
 キティとイアンは、しっかりとセイヤの成績も確認していたようで、そんなことを言ってきた。
 そもそも騎士団長との模擬戦を目の当たりにしている二人は、セイヤが不合格になるなんてことは、かけらも考えていない。
 試験当日の様子から筆記も高得点だと予想していたので、トップ合格はともかく、成績優秀者になることは予想済みだったのだ。

 
 親し気に話し始めたセイヤたちをみて、クリステルたちは一度お互いに顔を見合わせてから近付いて行った。
「セイヤ、お友達だったら私たちにもきちんと紹介をしてね」
「そうだな。少なくとも俺は知らないぞ?」
 エリーナとジェフリーがそう言うと、セイヤは満面の笑みを浮かべながら振り返った。
「おや。これは失礼いたしました。実は王都に来る前に知り合って、試験当日にもいろいろと話をしていたのですよ。こちらがキティ・コックスで、こちらがイアン・エンベリーといいます」
 そう言って二人を紹介したセイヤだったが、貴族にとっては大事な領地の位置を知らないことに気が付いた。
 家名と爵位までは聞いていたのだが、それ以上は興味が無かったのだ。

 セイヤはさてどうやって誤魔化すかと考えたが、その前にクリステルがその名前に反応した。
「コックス家にエンベリー家ですか。確か、私の家に近い領地でしたね」
 いくら自領に近いからといって、男爵や子爵まで含めればかなりの数になるはずなのに、さらりと応えるクリステルは流石といえるだろう。
 ついでに、エリーナとジェフリーから白い眼を向けられていたセイヤは、それをきれいに無視していた。
 一方、キティとイアンはそれどころではなく、クリステルに慌てて頭を下げた。
「は、はい。プルホヴァー家には、とても良くしていただいているようで、ありがとうございます」
 そうそつなく挨拶をしてきたのは、当然というべきか、イアンであった。
 キティは、恐縮するようにただただ頭を下げている。
 もっとも、両者ともにその顔に「なんで公爵家の令嬢が!?」と書いているので、まだまだ貴族としては精進する必要がありそうだったが。

 その二人を交互に見ていたクリステルは、少ししてからニコリと笑った。
「いいえ。こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。それに、セイヤとも仲が良くなっているようで、安心しました」
 敢えて何に安心したのかは言わなかったクリステルに、イアンは首を傾げてから頷いた。
「ええ。セイヤ様も知り合った当初からよくしていただいております」
「そう。これからも付き合いを続けるのであれば、私と会うことも多くなるでしょうから、よろしくお願いしますね」
「「は、はい!」」
 微妙に牽制を含めたクリステルの言葉に、キティとイアンは半ば驚いた様子でそう答えていた。
当然のように一位合格のセイヤでした。
生まれた時から自意識(?)があって、文字を覚えるのが早かったセイヤにとっては、
学園の試験は、鼻歌を歌いながら解けるほどの簡単な問題です。

クリステルは、キティとイアンの関係を一瞬で見抜いているので、自分のライバルにはなり得ないとこの時点で判断しています。
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