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異世界で魔法を覚えて広めよう 作者:早秋

第2部1章

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(10)次代の領主

 アーロンたちに魔法を教え始めてから半月ほどが経ったある日。
 セイヤはマグスに呼ばれたため、彼の執務室を訪ねた。
「父上、来ました。……あれ? 兄上も?」
 許可を得てからドアを開けて挨拶をすると、そこにアーロンがいるのを見つけたセイヤは、首を傾げた。
 このタイミングで、二人だけを呼ぶ用事というのが思いつかなかったのだ。

 そのセイヤを見て、アーロンがからかうように笑った。
「おや。そんな顔をすると言うことは、呼ばれた理由は分からないのかい? セイヤにも分からないことがあるんだね」
「……兄上。無茶なことを言わないで下さい。私にも分からないことは、たくさんあります」
 憮然とした顔でそう答えたセイヤを見て、アーロンはくすくすと笑い出した。
 勿論、今のはアーロンの冗談なのだが、それでもセイヤが自分よりも多くのことを知っていることは分かっている。
 だからといって腐ったりしないところが、セイヤも長兄として認めているアーロンのすごさなのだ。

 そんな兄弟のやり取りを笑って見ていたマグスが、セイヤを見て言った。
「セイヤ、これから秘密の会話をするから、例のあれを使ってくれないか?」
 具体的に名前を言わなかったマグスに、セイヤは少しだけ首を傾げたが、すぐに頷いた。
「ああ、あれですか。……はい。これで大丈夫ですよ」
 そう言ってセイヤが行ったのは、会話が漏れないようにするための結界を張ることだ。
 既にマグスの前では何度か使っているが、わざわざマグスから切り出したことで、これから重要な話がされるということがわかる。

 その雰囲気を感じ取ったのか、アーロンがまじめな表情になってマグスを見た。
「父上?」
「アーロン、私はお前に次代領主としての内定を出そうと考えている。来年、学園が終わり次第、領地で教育を始めるから覚えておくように」
 マグスの唐突の宣言に、アーロンは表情を引き締めて頷いた。
 ただ、その目には、疑問の色が浮かんでいた。

 アーロンは、自分が長兄として領主を継げるようにずっと努力してきた。
 何よりも、アーロン自身もそうだが、周囲もアーロンが次代の領主だと考えていただろう。
 それは、たとえリゼであっても同じである。
 だから今、マグスに言われたこともさほど驚くようなことではない。
 アーロンが驚いたのは、なぜこのタイミングでということと、虎の子であるはずのセイヤの魔法を使ってまで、ここまで厳重にする必要があったのかということだ。

 そのアーロンの心情を見抜いてか、マグスが頷きながらさらに続けた。
「アーロンの疑問もよくわかるつもりだ。とりあえず、これから話す内容を聞いてほしい。それを聞けば、ここまで厳重にした理由が分かるはずだ。
 マグスはそう言い置いてから、本来領主だけに伝えるはずの領地と守護神に関しての話を始めるのであった。

 
 マグスから話を聞き終えたアーロンは、先ほどまでの疑問が氷解するのと同時に、実際に頭を抱えるような仕草をした。
 マグスから聞いた話は一般常識からすればとんでもない内容で、平然とした表情で立っているセイヤがいなければ、父親の正気を疑っただろう。
 アーロンにとっては、それほどまでの内容だったのだ。
「アーロン、お前の気持ちはよくわかる。私もセイヤから話を聞いたときは、同じような気持だったからな。……いや、セイヤからの話だったから、もう少し衝撃は小さかったか?」
 ぽつりと付け加えられた後半の言葉に、セイヤは思わずジト目をマグスに向けた。
「父上、それはどういう意味でしょうか?」
「ほう。詳しく聞きたければ、いろいろと話せることはあるが? アーロンとの話が終われば、じっくりと語って聞かせようか?」
 負けじとそう言ってきたマグスからセイヤはついと視線をずらした。
 マグスが言う通り、いろいろとやらかした自覚があるセイヤは、この話で言い合いをしても勝てないとわかっているのだ。

 視線を逸らしたセイヤをジトっと見ていたマグスだったが、すぐにアーロンへと目を向けた。
「まあ、それは置いておくとして、言葉で言っても信じられないという気持ちはよくわかる。だから、アーロンには、基本的には(・・・・・)領主だけ行ける場所に行ってもらう」
「そんな場所が……?」
「ある。まあ、これもセイヤから聞いた話なのだがな」
 マグスがそう言うと、今度はアーロンがセイヤへジト目を向けた。
 領主だけがいけるはずの場所のことを、なぜセイヤが知っているのかという意味を込めている。
 それでもセイヤが次代の領主を狙っているのではと、アーロンがまったく疑っていないのは、普段のセイヤの言動のせいなのか、あるいは信頼感からなのか、微妙なところであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 マグスの執務室に、誰も知らなかった領主だけがいける隠し通路があることに、アーロンは驚きを示していた。
 ただ、それはまだまだ序の口で、通路を通った先にある部屋で待ち構えるように出現していたリムセルマに、気絶しそうなほど驚いていた。
「そこまで驚くほどのことかしら?」
 などと、当の本人(本神?)は驚いていたが。
 それはともかく、実際に守護神を目の当たりにしたことで、アーロンは先ほどマグスから聞いた話を信じざるを得なかった。
「……自分の中にある常識が壊れるということが、こういうことなんだということを、嫌と言うほど実感したよ」
 これが、次代の領主としての手続きを終えたアーロンの呟きだったが、その中にどこか悲哀が漂っていたように感じたのは、セイヤだけではないだろう。

 
 アーロンの登録手続きが終わったところで、セイヤが晴れ晴れとした表情になった。
「やれやれ。これでセルマイヤー領も安泰ですね」
「何を言っているんだ。これからが本題だろう?」
「へ?」
 やれやれという感じで首を左右に振るマグスに、セイヤは意味が分からないという顔を向けた。

 そのセイヤに対して、意外なところから突っ込みが来た。
「巫女に関することはまだ話していないのよね? それに、そろそろあの方から催促が来そうよ?」
「あ~。そういえばそうでしたか。いや、それよりも催促って……」
 リムセルマが言う「あの方」が誰であるかは言うまでもない。
 それよりも、寿命などない神からこれほど早く催促が来るとは、セイヤはまったく考えていなかった。

 どう答えたものかと考えたセイヤだったが、いま自分が考えていることを素直に話すことにした。
「巫女捜しは兄上に話をしたので進めても大丈夫でしょうが、もうひとつの計画はまだしばらくかかりますよ? 何しろ、まだ傭兵団を立ち上げたばかりですから」
「そうなの? それなら仕方ないと思うけれど……あまり待たせないほうが良いと思うわよ? 久しぶりに自分の力を顕現できると張り切っていたから」
 リムセルマのその言葉に、セイヤは渋い顔になった。
「あ~。そういう理由でしたか。ですが、あまり早くことを進めても上手くいかないのでお待ちくださいと伝えてもらってもいいでしょうか?」
「まあ、それがセイヤの考えなのだったら仕方ないわね。そうしておくわ」
 リムセルマが頷くのを見てホッとしたセイヤだったが、別の面々のことをすっかり忘れていた。

「セイヤ、私が聞いていたのは巫女捜しの話だけだったのだが、他にもなにか企んでいそうだな?」
 ガシッと自分の肩を掴んできたマグスに、セイヤは顔をひきつらせた。
「あ、あれ……?」
「そうだね。私もきちんと話を聞きたいから、執務室に戻ってしっかりとお話ししようか」
「あ、兄上……?」
 アーロンの言う「お話」が、なぜか「オハナシ」に聞こえたセイヤは、思わず助けを求めて周囲を見回した。
 だが、残念(当然?)ながら、この場にはセイヤの味方をする者は誰もいなかったのである。
このあとセイヤは、父と兄に連行されてしっかりと計画の内容を吐き出すことになりますw
その計画の内容はまた後で。
今回は、フラグだと思ってくださいw
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