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異世界で魔法を覚えて広めよう 作者:早秋

第1部1章

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(4)覚悟

本日四話更新の四話目です。
ご注意ください。
 神との話し合いを終えてセイヤが目を開くと、目の前に驚いている神殿長がいた。
 セイヤがどうしたのだろうかと思う間もなく、神殿長が泡食ったようすになって問いかけて来た。
「ご、御子息! も、もしや、御神託を受けられましたか!?」
 その神殿長の様子に、これはあかんやつだと速攻で理解したセイヤは、とっさに首を傾げた。
「ゴシンタク、とは何でしょうか?」
 しかもわざとらしく片言で話してみた。
 その甲斐があって神殿長はだますことができたのか、先ほどまでの熱が若干冷めた様子になった。
「……これは、失礼をいたしました。御神託というのは、神から直接言葉を頂いたりすることなのですが……なにかありませんでしたか?」
「いいえ? 特には」
 私はなにも知りません、という態度を取ったまま、セイヤは服のポッケに入っている神から受け取った腕輪の感触を感じていた。

 そして、少しの間ジッとセイヤを見ていた神殿長は、諦めたようにため息をついた。
「そうでしたか。もし、御神託を受け取っていたのであれば、良かったのですが……」
 いかにも残念そうな表情を浮かべた神殿長に興味を持ったのか、マグスがセイヤと神殿長の会話に割り込んできた。
「御神託を受けていれば、なにかあったのか?」
「はい。儀式の際に御神託を受けられれば、それは聖職者としての力の発露ということになります。中央に報告すれば、喜んで迎え入れてくれるでしょう」
 要は、神官としての道が開けるということだ。
 しかも神殿長の口ぶりからは、エリートとしての道が用意されているようにセイヤは感じた。

 それは話を聞いたマグスも同じように感じたのだろう。
 首を左右に振ってから神殿長に言った。
「残念だが、今のところセイヤを神官にする予定はない」
「そうですか。それは残念ですね」
 セイヤが御神託を受けていないとわかったためか(嘘なのだが)、ちっとも残念そうではない顔で神殿長がそう答える。
 その口ぶりからは、将来のエリートを紹介した神殿長にも何らかのメリットがあるということがわかる。
 海千山千の貴族たちの間を、若いときからすり抜けて来たマグスがそれに気づかないはずがない。
 それでも、そんなことはおくびも顔に出さずに、マグスはただ曖昧に頷くだけにとどめるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 神殿を出て、馬車に戻ったときがセイヤにとっての本番だった。
 というのは、やはり実の親はごまかせなかったようで、マグスが先ほどのことをセイヤに聞いてきたのだ。
「セイヤ。神殿で何があったのか、きちんと話しなさい」
「えっ!? 儀式があって、目を開けたら神殿長が驚いていただけだけれど?」
 一瞬ドキッとしながらも一応誤魔化したつもりだったセイヤだったが、父親マグスの目はごまかせなかった。
「セイヤ。神殿長は誤魔化せたようだが、私にはそれでは無理だ。何年お前の父親をやっていると思う?」
 これは避けられないと悟ったセイヤは、同時に神との会話の一部を思い出していた。
 もう少し家族を信用しろと言うあれだ。
 神の言葉を思い出した瞬間、セイヤは覚悟を決めた。

 セイヤが覚悟を決めたそのとき、マグスは我が子(セイヤ)が纏っている雰囲気が変わったことを感じ取った。
 辺境伯の当主として様々な人間と相対してきたが、こういった雰囲気が覚悟を決めた者が纏うものであるということを、マグスはよくわかっていた。
 そして、自分が可愛がっている子供が、こんな表情ができることをマグスは初めて知った。
「……セイヤ?」
 そっと呼びかけたマグスに、セイヤはフッと子供らしくない笑みを浮かべる。
「話をするのは構いませんが、お互いに覚悟を決めなくてはならないのですがいいのですか?」
 これまで見せたことのないセイヤの丁寧な話言葉に、マグスは思わず息を呑んだ。
 セイヤを抱っこしているアネッサも、同じように息をつめて、自分の息子がなにを言い出すのかと注目していた。
 ただし、アネッサの場合は、どこまでも深いセイヤに対する愛情があることも見て取れる。

 両親の態度が変わっているのを自覚しつつ、セイヤは話を続けた。
「もし私の話を聞けば、辺境伯当主として決断しなければならなくなるでしょう。それには、私を切り捨ているというものも含まれます。……それでも、お聞きになりたいですか?」
 既にマグスは、まるで大人の貴族と話しているような感覚になっていた。
 そして、本当の意味で覚悟を決めないといけないのだということを理解していた。
 ただ、同時に、不思議に思うこともあったので、それを息子に聞いてみることにした。
「覚悟か……。なるほど、お前の態度を見ていれば、それが事実だということはわかる。だが、なぜそれを母親アネッサには問わない?」
「母上は、たとえ辺境伯と敵対することになったとしても、私を守ってくれるように行動するでしょうから」
 間髪入れずそう答えたセイヤに、マグスは息を呑んで苦笑し、アネッサは笑みを浮かべてぐりぐりとセイヤの頭を撫でまわした。
 両者の態度が、それが事実であることを如実に表していた。

 辺境伯という立場では、特に我が子を切り捨てなければならないような場面が出てくる。
 それが、どんなに可愛がっていた子であったとしても、だ。
 セイヤはそれが当然だと考えているし、そうしなければならないとも思っている。
 だからこそ、マグスの態度を責めるつもりはまったくなかった。
 一方で、アネッサの場合は、元が一般の出ということもあって、自分の子(セイヤ)といまの立場どちらを選ぶと問われれば、すぐにセイヤを取ることはいままでの経験で分かっている。
 現にセイヤは、マグスが厳しい顔になったのを見たときに、セイヤを抱く両腕に我が子を守ろうと僅かに力が入ったことを敏感に感じ取っていた。

 セイヤの言葉に、一瞬だけ自嘲気味な苦笑を浮かべて「なるほどな」と呟いたマグスだったが、すぐに真剣な顔になった。
「よかろう。お前の親として、また、辺境伯として覚悟を決めて改めて問おう。――神殿で何があった?」
 辺境伯としての顔になった父親マグスを見て、セイヤは嬉しくなって思わず笑顔になった。
 なぜならマグスの態度は、セイヤの言葉をただの子供の戯言ではなく、一人の人間としてとらえてくれたということに他ならないからだ。
 また、そうなるように会話をしていたのだから、無事にその結果が出たともいえる。
「屋敷に戻ったときに、ふたりきりで話しましょう。ここでは、誰の耳があるかわかりませんから」
 動いている馬車での会話を聞くのは至難の業だが、絶対にできないわけではない。
 例えば、御者から無理やり聞き出すことだってできるのだ。

 あくまでも慎重な態度を崩さないセイヤに、マグスは頷きつつも不思議そうな表情を浮かべた。
「ふたりでか? アネッサは?」
「母上には、父上が必要だと判断した場合にお話ししてください。――別に母上をのけ者にするつもりではありませんから!」
 セイヤの言葉でアネッサが悲しそうな表情になったため、慌ててそう付け加えた。
 それを聞いたアネッサは、再びセイヤの頭をぐりぐりと撫でまわす。

 母子のやり取り苦笑しながら見ていたマグスは、セイヤを見ながら頷いた。
「いいだろう。屋敷に着いてからきちんと場所を用意する。逃げることは許さんからな?」
「逃げませんよ。折角、覚悟を決めてここまで話したのに」
「そうか」
 ようやく子供らしい拗ねたような顔を見せた息子セイヤに、マグスは小さく笑いながら頷いた。
早速両親にばれました。
といってもセイヤが悪いということではなく、どちらかといえば両親が鋭すぎたと言っていいでしょう。
(ということにしておいてくださいw)

次話更新は明日の8時です。
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