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異世界で魔法を覚えて広めよう 作者:早秋

第1部3章

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(4)お茶会

 セイヤが初めてクリステルを見たときの感想は「おおすごい。本当にお人形さんですねえ」であった。
 腰まで伸ばした輝くような金色のストレートヘアー。絶妙なバランスで配置された顔のパーツは、将来の美を約束されていることを主張しており、なによりも左右で色が違うオッドアイが、神秘性を際立たせている。
 十一才という年齢にしては、同世代の女の子と比べれば多少低めの身長だが、それは負の要因にはなっておらず、むしろかわいらしさを強調している。
 まさしく、可愛らしさと美しさを見事に同居させており、この年でなければ出せない魅力を出していた。
 セイヤにとっては、同世代の女子で前世も含めてこれほど綺麗な子を見たのは、初めてのことであった。
 それほどまでに可愛らしい子を見たセイヤだったが、うっかり見惚れて固まるような無様な真似をしなくて済んだのは、マグスからの事前情報があったからだ。
 にこやかに笑顔を浮かべながら、頭の中では「これでお転婆って、勿体ないな」と考えていたのだから、魅了されるはずもない。
 ついでにいえば、辺境伯の子息とはいえ、母親が貴族の出ではないうえに、四男という微妙な立ち位置にいるため自分の将来にはほとんど無関係ということも影響していた。

 そんなわけで、無難に初対面を果たしたセイヤは、あとは着かず離れずの場所でクリステルの護衛をする……はずだった。
 魔法を使えば、たとえ部屋を隔てていたとしても、どこにいるかは把握することができる。
 最初の挨拶の時に、発信機の役目をする《印》をつけておいたので、あとはそれを監視しておけばいいのだ。
 ところが、次は夜食で一緒するくらいだろうと考えていたセイヤの元に、なぜかエリーナからの使いが来た。
 エリーナは現在、クリステルとのお茶会を楽しんでいるはずなので、その使者が来たときにはセイヤも驚いた。
 詳しく話を聞けば、なぜかクリステルがセイヤに興味を持ったようで、お茶会に顔を出して欲しいとのことだ。
 断る理由を思いつけなかったセイヤは、たまたま同じ部屋にいたシェリルに確認をしたうえで、ふたりが待つ屋敷に庭へと向かったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「――このたびは、お招きいただきありがとうございます」
 エリーナとクリステルに向かってセイヤが頭を下げながらそう挨拶をすると、なぜかクリステルがころころと笑い出した。
「まあ。ご丁寧にありがとうございます。それにしても、エリーナが言った通りなのですね」
「姉上が言ったこと……ですか?」
「クリステル!」
 挨拶のあとに付け加えられたクリステルの言葉に、セイヤが首を傾げ、なぜかエリーナが焦ったような声を上げた。

 エリーナの様子にさらに楽しそうな顔になったクリステルは、セイヤとエリーナを交互に見ながら頷いた。
「ええ。なんでも、エリーナの異母兄弟にとても変わった(・・・・)弟がいると聞いておりました」
「…………姉上」
 どちらかといえば褒めているとは言えないその表現に、セイヤはジト目でエリーナを見た。
「うっ……。ク、クリステル!」
「あら。私を責めるのは間違っていますよ? でも、そうですね。それ以外にもエリーナは、さんざん私に弟の自慢をしてくれましたね」
 さらりと告げられた言葉に、エリーナが顔を赤くした。
 まさかこんなところで、弟自慢を暴露されるとは考えていなかったのだ。

 セイヤは、姉の様子を見てわざとらしくため息をついた。
「どうにも先ほどの評価で素直に喜べないのですが、ここは姉に免じて嬉しく受け取っておきます」
「まあ!」
 セイヤの返答は、どう考えても八歳児が返してくるような言葉ではなかったので、クリステルが驚いたような顔になって口元に手を当てた。
 その驚きと仕草はとても自然で、それが作られたものであるかは、セイヤには判断が付かなかった。
 このときにセイヤは、淑女教育が行き届いているというのは、本当のことみたいだ、ということを考えていた。
 初対面の時に考えたように、とても屋敷を抜け出すようなお転婆お嬢様には見えない。
 このときほど<人は見かけによらず>という言葉を実感したことはないセイヤなのであった。

 
 始めの挨拶から会話も進んで、ある程度慣れて来た頃合いを見てからセイヤがとある疑問を口にした。
「そういえば、なぜ私はここに呼ばれたのでしょうか? 単に、姉をからかうためだけですか?」
「セイヤ!」
 いたずら小僧のような笑みを浮かべたセイヤに、エリーナが頬を膨らませながら睨み付け、クリステルはクスクスと笑った。
「そうですよ。……と言いたいところですけれど、他にも理由がありますよ」
 これは初めて聞くのか、エリーナも少し驚いたような顔で、クリステルを見た。

 それを確認したセイヤは、エリーナも聞いていなかったのかと内心で考えつつ、首を傾げながら聞いた。
「理由……ですか? 私には思い当たることが無いのですが、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「それは簡単ですよ。セイヤ、あなたが私の目を見ても嫌な顔をしなかったからです。そんな人はエリーナも含めて初めてだったのです」
「目を……? あー、なるほど。そういうことでしたか」
 クリステルの説明に、セイヤは納得の表情になって頷いた。

 実はこのとき、セイヤは初めて自分がいる国では、オッドアイが蔑みの対象になるのだと気が付いた。
 長い歴史の中では、歴代の王の中にもオッドアイがいたため、表立って非難されるようなことはない。
 ただ、どちらかといえば不吉の象徴とされる向きがあるオッドアイは、ときに人々の嫌悪の対象になるのである。

 勿論、だからといって、セイヤがその風説に影響を受けるいわれはない。
 素直に、初めて見たときの印象を話すことにした。
「私は、多くの本を読んでいて、偉人たちにもオッドアイがいることを知っていますから、綺麗だとは思っても嫌な感じはしなかったですね」
「そ、そうですか」
「セイヤ……」
 セイヤの言葉に、クリステルが若干照れたように頬を染めて、それを見たエリーナが呆れたような顔を向けて来た。

 エリーナがセイヤに向かってなにかをいうよりも早く、クリステルがセイヤを見て微笑んだ。
「ありがとうございます。そこまでまっすぐに、目をほめられたことがありませんので、とても嬉しいです」
「いえ。特に褒めてもらうようなことでは……って、姉上?」
 なぜかむくれるような顔になっているエリーナに、セイヤが首をかしげた。
「…………セイヤ。話があるから、後で私の部屋に来るように」
「え? あれ? ……はい?」
 なぜ姉の機嫌が悪くなっているのか分からないセイヤは、頭上に疑問符をたくさん浮かべながらそう答えることしかできなかった。

 
 母親アネッサが呼んでいるということでお茶会の席から離れて行ったセイヤを見送った後で、エリーナがクリステルを見て言った。
「どういうつもりですか?」
「あらいやだ、エリーナ。そんなに怖い目で睨まないでくださらない? ……別に貴方の大事な弟を取ろうと考えているわけではありませんから」
 今はまだ、と心の中で付け加えたクリステルだったが、幸いにしてエリーナは気付かなかったようだ。
 その代わりに、エリーナは言い逃れは許さないと言いたげな顔で、クリステルを見ている。
「その割には、随分と気に入っているようですが?」
「そうですね。ですが、そこまでおかしいことでしょうか? 私のこの目をはっきり綺麗だと言ってくれたのですよ? 気にならない方がおかしいと思いませんか?」
 さすがにまだ恋心というところまでは行っていない。
 だが、同世代のどの異性よりも「気になる」存在になっていることは、クリステルも自覚していた。

 答えを聞いてからジッとクリステルを見ていたエリーナは、そっとため息をついた。
「その言葉がすべてを物語っている気がしますが?」
「あら嫌だ。いくら私でも、たったそれくらいのことで病に侵されるようなことはありませんよ」
「そうですか? ……まあ、そういうことならそれで構いません」
 何やら含みのある言い方をしたエリーナだったが、この場ではそれ以上は続けなかった。
 このときのエリーナの勘が当たっているのかいないのか、正解を知ることになるのは、今しばらくの時を必要としているのであった。
こ、こいつら本当に十一才(八才)か!?
ま、まあ、最高水準の淑女教育を受けている結果、ということで勘弁してくださいw
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