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異世界で魔法を覚えて広めよう 作者:早秋

第1部1章

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(1)生誕から五歳直前まで

本日四話更新の一話目です。
 セイヤがこの世界に誕生してからすでに五年の歳月が過ぎていた。
 その間のセイヤは、ひたすら基礎力を上げることに終始していた。
 セイヤの前世の記憶には、赤ん坊から転生を果たして、それこそ歩けるようになる前からいろいろとはっちゃけるような物語もあったが、自分ではやらなかった。
 というよりもできなかったという方が正しいかもしれない。
 というのも、しゃべれるようになるには、正しく顔周りに筋肉が付かないといけないし、頑張って早く歩こうにもどうしたって体の筋肉を付ける必要がある。
 勿論、なんとか早く立てるようには頑張って、確かに一般的な赤ちゃんよりは早く立てたとは思うが、あくまでも誤差の範囲だった。
 こんな感じで、初期スタートがあくまでも一般的な誤差の範囲で収まるような内容だったので、なるべく隠す方向で動いていたのだ。
 なによりも、大した情報が無い中で、下手に動いても仕方ないと考えていたこともある。

 そういうわけで、生まれたてのときは目立つ行動をしていなかったセイヤだが、ひとつだけやっていたことがある。
 それは、母親のおなかの中にいるときに見つけた体に感じた不思議な感覚のことだ。
 生れ出てからすぐに同じようなことを試してみると、見事に再現することができた。
 せっかく外に出ることによって全身を意識することができたので、この感覚を体中で感じることができるように訓練したのである。
 その感覚がなんであるのかは、すぐに答えを見つけることはできなかった。
 とはいえ、自由に動けない赤ん坊の時からほぼ毎日のようにやっていたので、歩けるようになってからは、その習慣も続けていた。
 そんなことをしているうちに、五年という歳月がいつの間にか過ぎていたというわけである。

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 セイヤが生まれた家は、リーゼラン王国のセルマイヤー辺境伯になる。
 セルマイヤー家は、その爵位名の通りリーゼラン王国の辺境を治めている一家だ。
 この世界の性質上、通常の貴族とは違って、辺境伯にはかなり強い権限が持たされており、その権威を示すかのようにセルマイヤー家の屋敷はかなりの広さがあった。
 とはいえ、場所が辺境ということもあって、中央に存在する貴族のように多くの貴族を招くようにはできていない。
 本当の意味で、家族が過ごすための家として機能しているのである。

 そんなセルマイヤー家のお屋敷の一角に、代々の当主が集めて来た蔵書が収められている書庫がある。
 本自体が高価で一般ではほとんど購入する機会がないこの時代、セルマイヤー家の書庫にはかなりの数の蔵書が集められていた。
 歴史ある辺境伯家のため、代々の当主の記録や日記のようなものが溜まっているというのもあるが、何代か前の当主が本の収集家だったこともあり、それを一家のために開放しているのである。

 セイヤは、そんな書庫の中で、とある本をペラペラとめくっていた。
「うーん。やっぱり何度探してもないな……」
 かなり早い段階で本に興味を示していたセイヤのためを思って、現当主であるセイヤの父マグスは、メイドを使って文字を教えてくれていた。
 そのため、セイヤは五歳になったいまでは、書庫にある書物のほとんどを読むことができるようになっていた。
 そのお陰か、家族の誰もセイヤが書庫に長時間籠っていることを止める者は、ほとんどいなくなっていた。

 幼いセイヤが書庫に籠って何をしているのかといえば、最初の目的は現状の把握だった。
 お陰で、いま自分がいる場所は、前世(?)の記憶にある地球とは全く違った世界――いわゆる異世界にいるということはわかっている。
 ただし、残念ながら魔法の存在はいくら探しても確認できなかったのだ。
 そのため、新しい文字が読める(意味が分かるようになる)たびに、色々な書物を漁っては、魔法に関して記した物がないかを探し回っているのである。

 なぜセイヤがそこまでして、この世界での魔法の存在を探しているのかといえば……。
「どう考えてもこれって魔法だと思うのだけれどなあ・・・・・・」
 セイヤはそう言いながら、右手の人差し指の先にポッと小さな火を灯しながら首を傾げた。

 セイヤがその現象に初めて気づいたのは、それこそ赤ん坊のころから続けていた例の不可思議な現象の訓練の最中だった。
 ただ、セイヤの子供らしい問いかけに、父親も母親もそんなものはないと断言していたので、魔法なんてないんだとがっかりしていた。
 ところが、である。
 いつものようにお腹辺りから手の先に向かって『熱の塊』を移動させているときに、なんとなくこれで魔法使えるんじゃね、と思ってしまったのだ。
 そのすぐ後に、何となく火が灯るところを思い浮かべると、人差し指の先にポッと火が灯ったのだ。

 流石にこれには、転生なんて非常識な体験をしているセイヤも驚いた。
 なにしろ、両親の言葉によって魔法なんてものはないと思っていたのだから、突然火が付けば慌てるだろう。
 驚きのあまり灯った火をそのまま床に付けてしまって、その火が燃え移りそうになって冷や汗を流したのは、いまとなってはいい思い出だ。
 その現象に気付いたのは、セイヤが三歳の時で、すでにあのときから二年が経過している。
 いまでは、ほかに火が燃え移るようなこともなく、きちんとコントロールできるようになっていた。

 指の先に灯る火を見つめながら、セイヤはぽつりと呟いた。
「さて、どうしたもんかね」
 本来無いものが使えるとなると、下手をすれば化け物扱いされる可能性がある。
 もっと悪く考えれば、その場で物理的に首が飛ぶこともあるだろう。
 一応実の両親や正妻とは仲がいいが、正妻の子でない自分が貴族の立場を考えて『処理』されることもあると、セイヤは考えていた。
 だからこそ、この二年間は、屋敷の蔵書を調べたり、他人に見つからないようにこっそりと訓練をするだけにとどめておいたのだ。
 その間も自分がどう立ち回るべきか考えていたが、未だに結論は出ていないのである。

 
 しばらく間そんなことを考えていたセイヤだったが、ふと書斎のドアがノックされたことに気が付いた。
「セイヤ様、失礼いたします。そろそろお時間です」
 そう言いながら書斎に入ってきたのは、セイヤをそれこそ生まれたときから世話している侍女であるエーヴァだった。
 エーヴァがセルマイヤー家に来たのは十五の時らしく、一年の訓練期間を経て生まれたばかりのセイヤに付けられたという経緯がある。
「あ、もうそんな時間?」
 今日はこれからとある用事で外に出なければならないのだ。
「はい。準備を含めますと、そろそろ用意しませんと……」
「そうか。わかった」
 セイヤは、傍に置いてあった本を手に取り、立ち上がってから書棚にしまってから書庫を出た。

 セイヤは廊下を歩きながらエーヴァの視線を感じて、彼女を見た。
「なに?」
「いえ。ついにセイヤ様も祝福の日かと、感慨深く思っていたところです」
 祝福の日というのは、この世界に生まれた子供が五歳になったときに、神殿で行われる儀式のことだ。
 この儀式を迎えることができれば、正式に人として認められる……というと大げさだが、要はセイヤの知る世界での七五三のようなものだ。
「そう。……エーヴァ」
「はい?」
「これまでありがとう。そして、これからもよろしく」
 突然そんなことを言ったセイヤに、エーヴァは驚きで目を丸くして、すぐに笑顔になった。
「セイヤ様、少し気が早すぎます。まだ、儀式は終わっていませんよ」
「そういえば、そうだった」
 セイヤがそう返すと、とうとうエーヴァは声を上げて笑い出し、それにつられてセイヤも笑うのであった。
成長するまではまったりと魔法の研鑽に励んでいきます。
そのため、周囲に対する影響力は低いです。

※次回更新は、本日12時。
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