043
近接戦闘用の武器が必要だ。
「力を貸してくれ」
京也は立ち上がりながら叫ぶ。光があふれ、京也の両手に短剣が握られた。
右手に風神。左手に雷神。
京也が雷神を振る。稲妻が、骸骨であふれる砂漠の中心に落ちた。
骨と金属がぶつかる音が響き、ドーナツ型の穴ができる。
「発動」
黒く焦げた砂に、京也が移動した。今度は風神を振る。旋風が周囲の骸骨たちをなぎ倒していく。二十体近い敵が吹っ飛んでいった。
長柄コルセスカに比べ、短剣は扱いやすかった。小柄な京也には、重量のある大型武器より軽量化された小型武器が体に良く馴染んだ。
ステップを踏み前方の敵を切り、ターンして背後の敵を倒していく。京也に引きよせられる敵を、風圧で一定の間合いを保ち、電撃で蹴散らしていった。刀身の短さを、魔力が補ってくれた。
川が流れるように京也が短剣に身を任せると、無駄な動きと体力の消耗を最小限に押えられた。頭を使うのは、術者を捜す一点に絞った。
京也は最初、バックルに埋め込まれた石の色に注目した。しかし、倒しては蘇ってくる骸骨たちを見る限り、特別な意味は感じられなかった。
雷神と風神の動きが勢いを増し、京也を無限の戦闘へいざなっていく。うごめく骸骨剣士との闘いを続けるうちに、一体の骸骨が京也の目に留る。異様なリングの輝き。「奴に間違いない」根拠はなかったが、不思議な自信が京也にはあった。
雷神を空中に放る。稲妻を吐き、あらゆる方向に電撃を放出して雷神が上昇していく。
「発動」
能力を使う。リングを持つ骸骨の背後に京也が現れた。風神を振り下す。
剣と盾を捨てた骸骨が、振り向き風神を両手で挟む。
睨みあったまま京也と骸骨は動けない。「今だ!雷神」空高く静止していた雷神が、京也の呼びかけに答え落ちてくる。
勝利を確信した京也の背中に痛みが走った。真後から近づいてきた別の骸骨に、京也は切りつけられていた。倒れ込む京也。仰向けになる京也を骸骨たちが取り囲む。天を仰ぐ京也の目に、太陽を遮るように雷神が落ちてくるのが見えた。ブレスレットにもどそうと念じたがダメだった。雷神は形を変えず、京也の胸に狙いを定め落ちてくる。間に合わない。覚悟を決めた京也が目をつぶった。
ゆっくりと京也が目を開ける。
京也に覆いかぶさるようにダイヤがいた。ダイヤの背中には、雷神が突き刺さっていた。
「お、お前は殺したはず……」
京也の言葉を返すことなく、ダイヤはすでに息絶えていた。
無数の骸骨たちが術者を失い、動くことなく砂上に立っていた。風が抜けていく。
京也には理解できなかった。決着はついていた。
「なぜ。ダイヤは戦いをやめ、僕を助けた?」
塵になりダイヤは空高く消えていく。砂上に落ちた黒いリングが、持ち主の死を悲しむように紫色の光をはなっていた。