それは結構珍しいのではないのだろうか?
この世界に存在する物は多少の変化はするが、あまり激しくは変わらない。
岩・山・地面、地球の表面を構成する物は大きさが違うだけですべて鉱物だし、自然界に存在する物も成長はするが急激な変化はしない。
だからなのか僕は誰も来ない小高い丘の上で寝転んで空を見るのが好きなのかもしれない。
「あんたもよく飽きないわね」
僕は目線を少しだけ横にずらす。
おしいもうちょっと、すこし顔をずらせば何とか……。
「ぐはぁ」
いきなり顔面に蹴りを喰らった。
くそ、ばれたか。そんな短いスカートをはいてる方が悪いんじゃないか。
彼女は怒りながらも僕の横に座り今度はあきれた顔を向けてきた。
「っで、何してたの? ってか聞くまでもないか」
「じゃあ聞くなよ」
「社交辞令よ」
どんな社交辞令だよ。それに僕がどこで何をしてようと勝手だろ、そう反論したいが力関係が下に位置する僕には彼女に文句を言えるはずもなく、しかたなく目線を元に戻す。
「そんなに面白い? 空ばっかり見てて」
「まあね」
「何処が?」
今更それを聞くか? それに君との付き合いも結構長いぞ。
付き合いといっても恋人関係ではなく単なる腐れ縁だ。何故かは分からないが一緒にいることが多い、それは高校生になった今でも不思議と変わることなく続いている。だから周りから結構誤解させるが決してそういう関係ではない。
本当、何でだろ?
「聞いてるの?」
僕が無視したと思ったのか彼女は焦れた様子で聞いてきた。
なんかそんな態度で聞かれると急に意地悪したくなる。昔からそうだ、何故かは分からないがそんな気分になる。
「電波の受信状態が悪いんだ。つまり圏外」
彼女は頬を引きつらせ僕は笑みがこぼれる。
よっしゃー、ざまあみろ。
さぞかし悔しがっている彼女を見ようと僕は目を向ける。そして一気に青ざめる……僕が。
彼女はよほど頭に来たのか頬を引きつらせるどころか目が血走っている。
もし僕に怒りのマークが見えるなら十個以上は見えるだろう。というか黒いオーラが見えてる!
「確か電波って叩けば直るよね」
「いや、それはテレビだから!」
「大丈夫、同じ電化製品でしょ」
「根本的に違うから、用途も製造方法も違うから」
「問答……無用」
そして始まる惨劇。
わあ、なんか過去の光景が蘇ってくる。そう彼女にボコボコにされる光景が何度も……って、そんな過去しかないの?
自分の走馬灯にツッコミを入れながら僕は意識を失っていった。
「それで、何でそんなに空が好きなの?」
惨劇の後、奇跡的に一命を取り留めた僕に向かって彼女は改めて聞いてきた。
まあ、再びあの惨劇を繰り返すつもりはないから真面目に答えるか。
「空って結構変わるから」
「はあ?」
「なんつうかな、地球上で変化が激しい物ってあまり無いだろ」
「そう? よくテレビで一気に景色が変わる物があるよ。それが幻想的で綺麗になったりとか、よくあるでしょ?」
「でもそういうのは全部空が関係してると思うんだ。たとえば夕刻とか日の傾きとか、全部空に有る物が関係してるだろ?」
「そう言われると、そうかも?」
「それに夜景だって空が暗くならないと見れないだろ。空って言うのは上にあるだけじゃない、いろいろな物を作り出してると思うんだ。だから見てると空が作り出す変化が結構面白いんだよ」
「ふ〜ん」
うわっ、興味なさそう。けどしょうがないか、僕も自分の事を空ばかり見てて変な奴だと思うときがあるからな。だけどこれだけは他人には分からない自分だけの楽しみだと思っている。だから彼女が分からなくても別に構わないんだけどね。
けどこれだけは言っておかないと
「僕は空を見てるのが好きなんじゃない、空が作り出す物を見てるのが好きなんだ」
「その割にはいつもここにいるじゃない?」
「季節や気温によって結構違うんだ」
「あっそ」
なんだろう、なにか沸々と殺意が……。
まあいいや、僕は青に赤が混じり始める空に目を戻した。
少し濁っている。晴れている割には見通しが悪い、それだけ空気中の不純物が多いのだろう。けどこれはこれで味がある。
ワビサビというのだろうか、そこまで気取るつもりはないがそんな感じがする。だから自分が評論家だとか鑑定士だとかも思わない。
けど空は最高の芸術家だとは思ってる。
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