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片道15分の恋人 作者:桜庭かなめ

特別編-End of Summer in 2017-

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9月1日(金)-後編-

 口づけをすると、とても幸せな気持ちになる。
 いずれは口づけよりも先のことをしたとき、同じような気持ちを栞と一緒に味わうことができるのだろうか。そう……なれるといいな。
「ね、ねえ……悠介君」
「うん?」
「……そのときが来てもちゃんとできるように、一つずつ段階を踏んでいこうよ」
「段階、か……」
 そのうちの一つが口づけなのかな。
「手を繋いで、抱きしめて、お風呂に入って、口づけをして……一緒のベッドに寝て。8月の旅行ではそこまですることができた」
「そうだね」
 ダブルベッドで一緒に寝るのは、初日こそはドキドキしたけれど、日にちを重ねるにつれてドキドキよりも安心感の方が強くなっていた。僕と栞は一つずつ段階を踏めていることは確かかな。
「だから、次は……もっと直接的なことをした方がいいと思うの」
「直接的なこと、か……」
 一気に段階を上げようとして、下手にこけないように気を付けないといけないけど。どんな内容か訊いてみよう。
「ちなみに、その直接的なことって何なのかな?」
「……む、む、む、胸をさ、触ることとか?」
「な、なるほど……」
 何度も言葉を詰まらせちゃって。
 胸を触る……か。確かに物理的な意味で直接的なことだろうな。まあ、栞の水着姿の写真を見ていたときに栞の豊満な胸を見ていたからか。
「考えてみれば、付き合っている人の部屋で恋人と2人きり。エ……エロエロしいことをしてもいいんじゃないかなって!」
「エ、エロエロしい……ね」
 振り返れば、付き合い始めてからお互いの家に行き来して、今みたいにお互いの部屋に2人きりになることは幾度となくあったけれど、したここと言えば口づけや同じ部屋で眠ることくらいだった。
「まあ……今までそういうことを意識していなかった、と言えば嘘になるし。でも、栞とこうしてゆっくりと過ごすことができるのが幸せに感じるのも事実で。もちろん、それに不満はないよ」
「悠介君……」
「……でも、栞に今みたいな話をされたら……急にドキドキしてきた」
 顔がとても熱くなってきた。きっと、今、栞には……真っ赤な僕の顔を見られているんだろうな。

「……悠介君、可愛いな。でも、ドキドキしてくれて嬉しい」

 そう言うと、栞は優しい笑みを浮かべて僕の頭を優しく撫でてくれる。あぁ、何だか落ち着くなぁ。
 そして、栞はゆっくりと布団から出て、ベッドから降り、僕の目の前に座る。
「じゃあ、いつでもどうぞ」
「う、うん……」
 何だか、こうして改めて触っていいって言われると逆に緊張してしまうな。こういうのって、口づけをする流れとかで触るようなイメージがある。
「……い、いくよ」
「うん……」
 僕は両手で栞の胸をそっと触る。
「んっ……」
 そういう可愛い声を出されると、興奮もするけれど……それよりも遥かに緊張が勝ってしまい、どうすればいいのか分からなくなる。
「どう……かな?」
「ええと……」
 柔らかいというか、温かいというか、ドキドキしているというか。色々と僕の手から伝わってくるけれど、

「す、素敵な感じです……」
「……うん。そう思ってくれて……嬉しいな」

 栞の可愛い笑顔を見せられたら、胸よりも顔の方が気になっちゃうな。そこにとても温かな気持ちを感じられるからこそ、今までこういったことをしなくても大丈夫だったのかな。
「こうして触られるのは初めてだから、段々と体が熱くなってきちゃった……」
「そ、そっか……」
 多分、そうだなと思ったよ。両胸から伝わる温もりが強くなっていくから。
 そして、この後……どうすればいいんだろうか。
「あっ……」
 ちょっとだけ指が動いたので、栞がそんな声を漏らした。それも凄く可愛らしかった。というか、今……とても柔らかい感触を味わったよ。
「今回はこのくらいにしようか」
「そ、そうだね!」
 僕は栞の両胸からゆっくりと手を離して、彼女の顔を見ると……栞は顔を真っ赤にしながら笑っていた。
「緊張しちゃった。凄くドキドキして。でも、嫌だっていう気持ちは全然なかったよ」
「……そう思ってくれて良かった」
 僕と栞はまた1つ段階を踏むことができたの……かな。
「……ねえ、悠介君」
「うん?」
「……プールもいいけれど、1泊2日くらいで温泉に行くっていうのも良さそうだよね。もちろん、2人きりで。この前は先輩方と一緒に旅行に行って、それも楽しかったけれど……やっぱり、一度は悠介君と2人きりで行きたいな」
「そうだね」
 栞、何を言うかと思ったら旅行のことか。
 これまで、2人でどこかに遊びに行ったり、日帰り旅行をしたりしたことはあったけれど、2人きりで泊まりがけの旅行をしたことは一度もない。大学生だし、もう3年以上も付き合っているし……まだ夏休みも1ヶ月近く残っている。バイトで稼いだお金はまだあるから、1泊2日くらいの旅行なら行けそうだ。
「じゃあ、夏休み中に平日のどこかで行ってみようか。できれば、海やプールがまだ入れるところで」
「……うん!」
 もう行き先が決まったかのように、栞は楽しげな表情を浮かべている。
 どうやら、今年の秋はこれまでとは違う秋になりそうだ。ただ、これまでと同じように楽しい秋になりそうなのは間違いないと思うのであった。



特別編-End of Summer in 2017- 終わり
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