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片道15分の恋人 作者:桜庭かなめ

恋心編

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4月11日(金)

 彼女の赤い頬を思い出すと、色々なことを考えてしまう。彼女は一昨日のことについて照れているのか。それとも、僕のことが気になっているのか。
 あらゆる可能性を想定しているので、原因が一昨日の出来事に対する羞恥心ということも考えた。もしそうなら、僕にはもう顔を見せられないという理由で、いつもの場所に彼女が乗っていない可能性もありそうだ。
 ああ、やばい。彼女が乗っているかどうか、急に不安になってきた。
『間もなく、1番線に八神行きの列車が参ります』
 絶妙なタイミングで、答えがもうすぐ分かるアナウンスがかかる。今更不安になってもしょうがないか。
 定刻通りに7時30分発の八神行きの列車が到着する。
 扉が開くと、車内に彼女がいた。表情も元通りになっていた。その光景を見て、僕はほっと胸を撫で下ろした。
 今日はいつもより降りる客が多かった。邪魔にならないようにするためか、彼女は一旦電車から降りて僕の後ろに並ぶ。
 降りる客がいなくなるのを確認して、僕と彼女は電車に乗った。気付けば、僕の前に彼女という初めての立ち位置になっていた。
 彼女の後ろ姿をじっくりと見るのは初めてだ。黒光ったさらさらとした髪も魅力的だけれど、それよりも目が行ってしまうのは彼女の太腿だった。白くて柔らかそうな太腿の裏側は無防備な感じがして、見ているだけで興奮する。人差し指で一本線でも描いたらどんな反応をするんだろう。一昨日みたいな声を漏らすのかな。
 そんな妄想をしていると、隣の畑町駅に到着する。畑町駅では鳴瀬駅の時と同じ扉が開く。
 畑町駅は私鉄への乗り換えもあるので、降りる客も多ければ乗ってくる客も多い。なので、いつもなら混み具合はさほど変わらないんだけど、今日は乗ってくる客が多いため、僕と彼女は後ろへ押されてしまう。
 そして、一昨日とは逆で、今度は僕の前に彼女がくっつく形に。まるで枕にしているように、彼女の頭が僕の胸に触れている。
 今のことで、彼女の髪の匂いが広がり、僕の鼻腔を擽る。甘い匂いだ。
 何日か前に、彼女の柔らかい髪に顔を埋めたいと思ったけど、まさかこんなに早くチャンスがくるとは。まあ、やらないけどね。
 こんなに彼女と密着していると、必然的にドキドキしてくる。今度は彼女が前にいるから、もしかしたらばれてしまうかもしれない。
 彼女は今、どんな気分なんだろう。今日は後ろだから僕のことは見えないし、あまり気になっていないのかな。だから、僕の胸に頭をつけられるのかな。彼女の心中を知りたいけれど、こんな状況でそんなことを訊けるほどの度胸はなかった。
 けれど、そんな想いも薄れていった。どんな形でも、彼女と密着していることが凄く嬉しかったから。ハプニングありがとう、という感じだ。
 鏡原駅に到着するまで彼女が離れることはなかった。
 そして、反対側の扉から降りるために、僕の方へ振り返ったときの彼女の頬は、昨日と同じように赤くなっていたのであった。
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