挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
片道15分の恋人 作者:桜庭かなめ

逆・恋心編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

42/75

4月14日(月)

 月曜日を迎えてこんなに嬉しかったことはない。
 今日もいつもの午前七時二十七分発、各駅停車八神行きの電車を待つ。もちろん、先頭車両の一番後ろの扉が止まる場所で。
 そして、電車が到着すると、扉のすぐ側に立てるように最後に電車に乗った。
 特に遅延することなく、高津田駅を出発してから三分後に彼が乗ってくる鳴瀬駅へと到着する。ホームに彼が立っているのが見えて、土曜日と日曜日に会えなかった寂しさが一気に吹き飛んだ。
 扉が開くと彼が乗車してきた。今日は私の左隣に立った。彼は左手でつり革を掴んだので右手がフリー。前も隣同士に立ったことがあったけれど、その時は私の方の手でつり革を掴んでいたので距離感があった。
 でも、今回は違う。今、彼の右手には何もない。私も左手がフリーなので、凄く彼の近くにいるように思えた。ここで手を繋げちゃったら最高なんだけれど、まともに話せていない段階でそんなことを彼に変に思われること間違いなし。手を繋ぐのは後にして、まずは彼に話しかけるべきだよね。
 そんなことを考えていると、彼が頬を赤くして私の方をちらちら見ているような感じがした。彼のことが好きな願望がそう見えさせているのか、それとも現実のことなのか。彼の隣に立っていることが嬉しくてその判断がつかなかった。ううん、そんな風に見えていること自体が嬉しいから、どちらでもいいのが本音。
 そして、気付けばもうすぐ鏡原駅の一つ手前である弓部駅に到着しようとしていた。
 減速していくんだけれど、ブレーキをかけるタイミングが遅かったのか、急ブレーキのような形で停車をする。その際に私の左手が彼の右手に触れた。
「あっ」
 彼が小さく声を漏らした。周りはちょっとざわついていたけれど、彼の声はしっかりと聞こえていた。
 手を繋ぎたいなって思っていたから、どんな形であれ、彼と手が触れたことがとても嬉しくて。今までも彼とくっついたりしたことはあったけれど、それは制服越し。それよりも今の方がとってもドキドキした。直接触れるってこんなにもキュン、ってすることだったんだ。
 彼は今、どんな表情をしているんだろう。気になったけれど、怖さもあって彼の方を見ることができなかった。そして、今のことで変な風に思われないように、顔に出さないように必死になった。
 でも、彼とお話しができていれば、こんなことをしなくても良かったのかもしれない。びっくりしたね、って笑い合えたのかもしれない。
 彼と話して、笑いたいな。
 そして、その後は何事もなく、今日も鏡原駅に到着した。私は反対側の扉から電車を降りる。
「びっくり、した……」
 彼の手が触れたとき、彼の温もりがはっきりと伝わってきた。そして、確かな感触があんなにドキドキさせたんだと思う。
 でも、もっとドキドキしたくて。彼と一緒にいられる十五分間をもっと素敵な時間にしたくて。そうなるには彼と話せるようにならないと味わえないような気がして。
 彼と話そう、と電車を降りた直後には強く想うけれど、実際に彼の姿を見るとそんな気持ちよりもずっと緊張感の方が勝ってしまって。そんなことが何度も続いた。
「……決めた」
 今週の目標は彼と話すこと。できれば、自分から話せるようになること。そうすることで彼との距離を縮めていこう。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ